2014年1月に読んだ本 ― 2014年12月03日 05時25分42秒
ふと思い立って、毎月の読書メモをまとめてみることにした。
2014年1月のトピックスは電子書籍チャレンジ。コミックスは見開きの扱いでKindleの方がiBookよりよい(iBookは見開きが1P扱いでiPadを縦にすると横長のまま小さく表示されちゃう)。
■アンナ・カヴァン『愛の渇き』 サンリオSF文庫
自伝的普通小説ではあるが、乖離状態の視点からの描写の迫力と、カヴァン作品に共通するヴィジュアルイメージ喚起力で他にない読書体験。
このエキゾティックなヴィジュアルとサイコホラー的な演出に近い映像作品としては細田守の『明日のナージャ』「フランシスの向こう側」とか『オマツリ男爵〜』あたりかなあ…。
■森薫『乙嫁語り』6巻 ビームコミックス
『ナウシカ』4巻を連想させる集団騎馬戦闘。まさかこういう方向に話が進むとは。萌えポイントは男性の上半身とやっぱりおばばさま。
■桑田乃梨子『放課後よりみち委員会』3巻 バーズコミックス
これまでの伏線をからめつつ、謎ののほほん異世界と現実の接点が生まれるものの、作品世界そのものののほほん感は微動だにしない。そこがいい。
■桑田乃梨子『放課後よりみち委員会』4巻 バーズコミックス
突き詰めればもっと切ない話になりそうな予感をはらみつつ、最後までのほほんとしたモラトリアムを貫き、その象徴とも言えるタイトルの意味が最後に明らかになる構成はお見事。自分の作風、持ち味を知り尽くした先に行き着いた世界観、の観あり。デビュー作から知っているとえもいわれぬ感慨が…。
■クリストファー・プリースト『限りなき夏』 国書刊行会
デビュー作から近作までバランスよく収録された日本オリジナル版プリースト傑作選。個々の短編の質の高さ、全体から浮かんでくるプリースト作品に共通する視点やモチーフが興味深い。前書きには「夢幻諸島」(本書では「夢幻群島」)シリーズに関する重要な設定がさらっと記述されているのもポイント? 収録作中のベストとしてはプリーストらしい騙りと叙述トリックと退廃的なムードがマッチした「奇跡の石塚」をあげておきたい。
■『中谷宇吉郎の森羅万象帖』 LIXIL BOOKLET
中谷宇吉郎の研究業績を写真をメインに、随筆を織り交ぜつつ、時系列に配置したムック。雪の結晶の写真の美しさもさることながら、あまり表に出ていなかった電気火花の写真がなんとも精妙で美しい。科学を志す高校生あたりにはかなりオススメかと思う。
■貞本義行『新世紀エヴァンゲリオン』1〜13巻 角川コミックスエース
Kindle 70%引きでまとめ買い一気読み。
同じキャラクターの性格づけはすべてアニメとは微妙に異なるんだけど、特にカヲルくんは性格だけでなくシンジとの関係性がアニメとはまったく異なるあたり興味深い。
13巻でいよいよ補完計画発動。ストーリーラインはほぼ同じながら、個々の事件やキャラクターの行動のニュアンスが全く異なる作品がどこに落ち着くのか、最終巻を待ちたい。
■『トニーたけざきのガンダム漫画』I〜III 角川コミックスエース
これもKindle 70%引きでまとめ買い一気読み。
笑った(笑)。田中圭一には手塚先生の霊が降りるが、トニーたけざきには安彦良和の生霊ががが…(笑)。
2014年1月のトピックスは電子書籍チャレンジ。コミックスは見開きの扱いでKindleの方がiBookよりよい(iBookは見開きが1P扱いでiPadを縦にすると横長のまま小さく表示されちゃう)。
■アンナ・カヴァン『愛の渇き』 サンリオSF文庫
自伝的普通小説ではあるが、乖離状態の視点からの描写の迫力と、カヴァン作品に共通するヴィジュアルイメージ喚起力で他にない読書体験。
このエキゾティックなヴィジュアルとサイコホラー的な演出に近い映像作品としては細田守の『明日のナージャ』「フランシスの向こう側」とか『オマツリ男爵〜』あたりかなあ…。
■森薫『乙嫁語り』6巻 ビームコミックス
『ナウシカ』4巻を連想させる集団騎馬戦闘。まさかこういう方向に話が進むとは。萌えポイントは男性の上半身とやっぱりおばばさま。
■桑田乃梨子『放課後よりみち委員会』3巻 バーズコミックス
これまでの伏線をからめつつ、謎ののほほん異世界と現実の接点が生まれるものの、作品世界そのものののほほん感は微動だにしない。そこがいい。
■桑田乃梨子『放課後よりみち委員会』4巻 バーズコミックス
突き詰めればもっと切ない話になりそうな予感をはらみつつ、最後までのほほんとしたモラトリアムを貫き、その象徴とも言えるタイトルの意味が最後に明らかになる構成はお見事。自分の作風、持ち味を知り尽くした先に行き着いた世界観、の観あり。デビュー作から知っているとえもいわれぬ感慨が…。
■クリストファー・プリースト『限りなき夏』 国書刊行会
デビュー作から近作までバランスよく収録された日本オリジナル版プリースト傑作選。個々の短編の質の高さ、全体から浮かんでくるプリースト作品に共通する視点やモチーフが興味深い。前書きには「夢幻諸島」(本書では「夢幻群島」)シリーズに関する重要な設定がさらっと記述されているのもポイント? 収録作中のベストとしてはプリーストらしい騙りと叙述トリックと退廃的なムードがマッチした「奇跡の石塚」をあげておきたい。
■『中谷宇吉郎の森羅万象帖』 LIXIL BOOKLET
中谷宇吉郎の研究業績を写真をメインに、随筆を織り交ぜつつ、時系列に配置したムック。雪の結晶の写真の美しさもさることながら、あまり表に出ていなかった電気火花の写真がなんとも精妙で美しい。科学を志す高校生あたりにはかなりオススメかと思う。
■貞本義行『新世紀エヴァンゲリオン』1〜13巻 角川コミックスエース
Kindle 70%引きでまとめ買い一気読み。
同じキャラクターの性格づけはすべてアニメとは微妙に異なるんだけど、特にカヲルくんは性格だけでなくシンジとの関係性がアニメとはまったく異なるあたり興味深い。
13巻でいよいよ補完計画発動。ストーリーラインはほぼ同じながら、個々の事件やキャラクターの行動のニュアンスが全く異なる作品がどこに落ち着くのか、最終巻を待ちたい。
■『トニーたけざきのガンダム漫画』I〜III 角川コミックスエース
これもKindle 70%引きでまとめ買い一気読み。
笑った(笑)。田中圭一には手塚先生の霊が降りるが、トニーたけざきには安彦良和の生霊ががが…(笑)。
2014年2月に読んだ本 ― 2014年12月04日 04時54分18秒
2013年10月以降、某資格試験対策の通信教育を受講していたんだけど、これがかなりヘビー。5月の受講期限に向けて追い込みに入り始めたので読書量は激減傾向。
とはいいながら、この月はまだしも余裕があった時期で、名古屋の『夢幻諸島から』読書会に参加したり(自主レジュメファンジン作ったり)してます。
■手塚治虫『火の鳥』1巻 角川文庫
「黎明編」。命日再読キャンペーンにて。けっこう細部は忘れているけど、小学6年生の時、朝日ソノラマから一気に出た総集編で読んだときの衝撃を思い出す。
今にして思えば、あの総集編は「マンガ少年」創刊、「望郷編」新連載に向けた準備だったんだろう。
■手塚治虫『火の鳥』2巻 角川文庫
「未来編」。命日再読キャンペーンにて。今読むといろいろとアラもあったりもするけど、ラストに提示されるビジョンはSFファンになりかかっていた小学生にはあまりにも衝撃的だった。
この時期、小説で読んでいたSFはまだ図書館のジュブナイル(あかね書房少年少女SF文学全集など)が中心だったので、小説よりもマンガでSFの可能性を実感していたかもしれない。そういえば、『ブルーシティ』とか『暗黒神話』を連載で読んだのもこの頃だ。
読んだ本が2冊だけなので、埋め草に小学生の頃読んでいたマンガを備忘録的に。
・小学1年生まで
ほぼ小学館の学習雑誌のみ。手塚治虫、藤子不二雄中心だったけど、考えてみると内山まもるの『帰ってきたウルトラマン』はそれで読んでいた。
・小学2年生
マンガ家になりたい。とか言っていた時期で、マンガ入門と間違えて親に買ってもらったのが藤子不二雄『まんが道』の最初の単行本だった(笑)。
・小学3年生
学習雑誌で横山光輝『セカンドマン』が連載されてけっこう衝撃を受けた。あと、姉が読んでいた小学5年生掲載の内山まもる『ウルトラマンタロウ』がTVと全然違うハードな設定の侵略SFだったので驚いた。学研の科学では石森章太郎『アスガード7』が連載。
学級文庫に同級生がカバーのない読み古しのコミックスをいろいろ持ち込んでいて、それで『デビルマン』を読んで驚く。
・小学4年生
引き続き学級文庫でいろいろ。冒険王の桜多吾作『マジンガーZ』とかてんとう虫コミックスの『ゲッターロボ』とか。
その勢いで毎週末本屋に立ち読みで入り浸るように。生まれて初めて買ったコミックスは『サイボーグ009』4巻。小遣いが限られているので1巻で話が完結していたのが購入の決め手。
楳図かずお『漂流教室』は確かこの頃読んだ。
・小学5年生
冒険王連載の桜多吾作『グレートマジンガー』、永井豪『バイオレンスジャック』あたりを中心に。チャンピオン、マガジン、サンデー、ジャンプは毎週立ち読みしていた。手塚治虫は『ブラックジャック』『三つ目がとおる』あたりを連載中の時期。秋頃からサンデーは毎週買い始めた(連載中の『ゲッターロボ』は恐竜帝国との最終決戦あたり)。
5年生まではいわき市在住だったけど、某ヤ○ニ書房さんには頭があがりません。自分だけじゃなかったとはいえ、フロア一杯の小中学生が好き放題にコミックスを立ち読みしていたおおらかな時代でした。
とはいいながら、この月はまだしも余裕があった時期で、名古屋の『夢幻諸島から』読書会に参加したり(自主レジュメファンジン作ったり)してます。
■手塚治虫『火の鳥』1巻 角川文庫
「黎明編」。命日再読キャンペーンにて。けっこう細部は忘れているけど、小学6年生の時、朝日ソノラマから一気に出た総集編で読んだときの衝撃を思い出す。
今にして思えば、あの総集編は「マンガ少年」創刊、「望郷編」新連載に向けた準備だったんだろう。
■手塚治虫『火の鳥』2巻 角川文庫
「未来編」。命日再読キャンペーンにて。今読むといろいろとアラもあったりもするけど、ラストに提示されるビジョンはSFファンになりかかっていた小学生にはあまりにも衝撃的だった。
この時期、小説で読んでいたSFはまだ図書館のジュブナイル(あかね書房少年少女SF文学全集など)が中心だったので、小説よりもマンガでSFの可能性を実感していたかもしれない。そういえば、『ブルーシティ』とか『暗黒神話』を連載で読んだのもこの頃だ。
読んだ本が2冊だけなので、埋め草に小学生の頃読んでいたマンガを備忘録的に。
・小学1年生まで
ほぼ小学館の学習雑誌のみ。手塚治虫、藤子不二雄中心だったけど、考えてみると内山まもるの『帰ってきたウルトラマン』はそれで読んでいた。
・小学2年生
マンガ家になりたい。とか言っていた時期で、マンガ入門と間違えて親に買ってもらったのが藤子不二雄『まんが道』の最初の単行本だった(笑)。
・小学3年生
学習雑誌で横山光輝『セカンドマン』が連載されてけっこう衝撃を受けた。あと、姉が読んでいた小学5年生掲載の内山まもる『ウルトラマンタロウ』がTVと全然違うハードな設定の侵略SFだったので驚いた。学研の科学では石森章太郎『アスガード7』が連載。
学級文庫に同級生がカバーのない読み古しのコミックスをいろいろ持ち込んでいて、それで『デビルマン』を読んで驚く。
・小学4年生
引き続き学級文庫でいろいろ。冒険王の桜多吾作『マジンガーZ』とかてんとう虫コミックスの『ゲッターロボ』とか。
その勢いで毎週末本屋に立ち読みで入り浸るように。生まれて初めて買ったコミックスは『サイボーグ009』4巻。小遣いが限られているので1巻で話が完結していたのが購入の決め手。
楳図かずお『漂流教室』は確かこの頃読んだ。
・小学5年生
冒険王連載の桜多吾作『グレートマジンガー』、永井豪『バイオレンスジャック』あたりを中心に。チャンピオン、マガジン、サンデー、ジャンプは毎週立ち読みしていた。手塚治虫は『ブラックジャック』『三つ目がとおる』あたりを連載中の時期。秋頃からサンデーは毎週買い始めた(連載中の『ゲッターロボ』は恐竜帝国との最終決戦あたり)。
5年生まではいわき市在住だったけど、某ヤ○ニ書房さんには頭があがりません。自分だけじゃなかったとはいえ、フロア一杯の小中学生が好き放題にコミックスを立ち読みしていたおおらかな時代でした。
2014年3月に読んだ本 ― 2014年12月05日 06時17分19秒
引き続き読書量少なめ。
■冲方丁『はなとゆめ』 角川書店
清少納言がなぜ枕草子を書いたのか、についてのビジョンを提示する作品。貴族社会の教養は「今、○○がうまいこと言った!」の応酬で成り立っていた、ということで、現代であればtwitter上で大喜利を応酬するのと同じような感覚だろうな、と思うとちょっと楽しい。漢籍の教養は今で言えば小説、映画、マンガの原典をどれだけ読んでいるか、和歌集は一種の名セリフ集のようなものだったのかな、と、思った。
■菊池誠・小峰公子・おかざき真里『いちから聞きたい放射線のほんとう』 筑摩書房
むつかしい話にならない、放射線に関する解説本。
この本に込められた「想い」「願い」「祈り」がなるべく多くの人たちに届きますように。
■石川雅之『もやしもん』13巻 講談社モーニングKC
最終巻。予想以上に主人公とその「菌が目に見える」能力が大活躍していてびっくり。日本酒と醸造アルコールの関係についても中立的なディベートが展開されていて好感。
個人的にはまるごと1冊ビールの話の8巻がベストで、9〜12巻はいささか迷走気味とも思われたのだが、まずは大団円。おそらく、全国の小中高校生に農学部志望者を増加させた功績は大きいと思う。
■冲方丁『はなとゆめ』 角川書店
清少納言がなぜ枕草子を書いたのか、についてのビジョンを提示する作品。貴族社会の教養は「今、○○がうまいこと言った!」の応酬で成り立っていた、ということで、現代であればtwitter上で大喜利を応酬するのと同じような感覚だろうな、と思うとちょっと楽しい。漢籍の教養は今で言えば小説、映画、マンガの原典をどれだけ読んでいるか、和歌集は一種の名セリフ集のようなものだったのかな、と、思った。
■菊池誠・小峰公子・おかざき真里『いちから聞きたい放射線のほんとう』 筑摩書房
むつかしい話にならない、放射線に関する解説本。
この本に込められた「想い」「願い」「祈り」がなるべく多くの人たちに届きますように。
■石川雅之『もやしもん』13巻 講談社モーニングKC
最終巻。予想以上に主人公とその「菌が目に見える」能力が大活躍していてびっくり。日本酒と醸造アルコールの関係についても中立的なディベートが展開されていて好感。
個人的にはまるごと1冊ビールの話の8巻がベストで、9〜12巻はいささか迷走気味とも思われたのだが、まずは大団円。おそらく、全国の小中高校生に農学部志望者を増加させた功績は大きいと思う。
2014年4月に読んだ本 ― 2014年12月06日 13時28分17秒
某通信教育追い込みで引き続き少なめ。
因みに、アニメミライ2014は静岡では磐田でしか公開されておらず、JRとバスの移動時間だけで往復4時間以上かかってます(笑)。観客一人で貸切状態。
■古田足日『大きい1年生と小さな2年生』 偕成社
アニメミライ2014の中の一作として公開されたアニメ版を観てきた勢いで再読。おおよそ40年ぶりくらいの再読だと思うが、子供の頃によく読んだ本の内容はわりあいよく覚えているものだ。
もともとは、確か2年生の頃に課題図書で読んだんだったと思う。実家の本棚にはまだ置いてあるはず。ちょっと沈んだ画風のイラストが主人公の心細さとベストマッチ。気弱な小学生だったので大いに感情移入して読んだ。長く読み継がれる不朽の名作。
そういえば、ホタルブクロの実物を見たことなかった、と言ったら妻が鑑賞用に売っていたのを買ってきてくれた。
■桜庭一樹『GOSICK RED』 角川書店
『無花果とムーン』を読んで以来、桜庭一樹=新井素子説を提唱しているのだが、これは新井素子でいえば「ブラック・キャット」に相当する作品、と思うと非常にしっくり来る感じ?(作品への評価はこの比喩で察してください(笑))
■桑田乃梨子『箱庭コスモス』 新書館 ひらり、コミックス
主人公の性格の歪み方から、かの名作『おそろしくて言えない』の百合版ともいえる連作。ピュア百合アンソロジー『ひらり、』で単発で読んでいたときより、1冊まとめて読んだ印象の方がぐっとよい。
■ピュア百合アンソロジー『ひらり、』Vol.13 新書館
今回はどきどき感のある作品が多くていい感じ。橋本みつるは『ひらり、』初登場時の「星ちゃん」の続編だが、切なくていい掌編。
■高田郁『美雪晴れ』 角川春樹事務所 時代小説文庫
最後から二番目の「みをつくし料理帖」シリーズ。いろいろとまとめに入った感じ?
因みに、アニメミライ2014は静岡では磐田でしか公開されておらず、JRとバスの移動時間だけで往復4時間以上かかってます(笑)。観客一人で貸切状態。
■古田足日『大きい1年生と小さな2年生』 偕成社
アニメミライ2014の中の一作として公開されたアニメ版を観てきた勢いで再読。おおよそ40年ぶりくらいの再読だと思うが、子供の頃によく読んだ本の内容はわりあいよく覚えているものだ。
もともとは、確か2年生の頃に課題図書で読んだんだったと思う。実家の本棚にはまだ置いてあるはず。ちょっと沈んだ画風のイラストが主人公の心細さとベストマッチ。気弱な小学生だったので大いに感情移入して読んだ。長く読み継がれる不朽の名作。
そういえば、ホタルブクロの実物を見たことなかった、と言ったら妻が鑑賞用に売っていたのを買ってきてくれた。
■桜庭一樹『GOSICK RED』 角川書店
『無花果とムーン』を読んで以来、桜庭一樹=新井素子説を提唱しているのだが、これは新井素子でいえば「ブラック・キャット」に相当する作品、と思うと非常にしっくり来る感じ?(作品への評価はこの比喩で察してください(笑))
■桑田乃梨子『箱庭コスモス』 新書館 ひらり、コミックス
主人公の性格の歪み方から、かの名作『おそろしくて言えない』の百合版ともいえる連作。ピュア百合アンソロジー『ひらり、』で単発で読んでいたときより、1冊まとめて読んだ印象の方がぐっとよい。
■ピュア百合アンソロジー『ひらり、』Vol.13 新書館
今回はどきどき感のある作品が多くていい感じ。橋本みつるは『ひらり、』初登場時の「星ちゃん」の続編だが、切なくていい掌編。
■高田郁『美雪晴れ』 角川春樹事務所 時代小説文庫
最後から二番目の「みをつくし料理帖」シリーズ。いろいろとまとめに入った感じ?
2014年5月に読んだ本 ― 2014年12月07日 07時00分49秒
某資格試験対策の通信教育の添削課題をぎりぎりですべて提出。就職してから受講した通信教育でここまで力を入れたのは初めてかも(笑)。ということで、あまり活字の本読んでませんが、麻生みことはオススメ。
■麻生みこと『海月と私』1巻 講談社アフタヌーンKC
同じアフタヌーンKCから出ている傑作オムニバス『路地恋花』(全4巻)の職人かたぎのキャラクターとさまざまな恋愛の形の描写を引き継いだ感じの新シリーズ。これまたよし!
■麻生みこと『海月と私』2巻 講談社アフタヌーンKC
謎の仲居さんの謎がさらに深まる2巻。ミステリ風味は「そこをなんとか」で培った要素かも? 続きが気になる。
■三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』5巻 メディアワークス文庫
ブラックジャックのエピソードに図らずも落涙。全般に書物ミステリとしての安定感が感じられてマル。
■小野不由美『華胥の幽夢』 新潮文庫
講談社での出版時と異なり、この巻数でこのエピソード群が挟まることで、『魔性の子』を起点とする物語としての再構成の意図がより明確になっている感じがする。その意味では、今回の完全版は新作短編集の内容と巻数も含め、実に周到にエピソードを配置してあると思う。
個々の作品では、やはり表題作が秀作だが、今回、「乗月」を読んで目頭が熱くなったのは自分でも意外だった。ある程度の人生経験、自分と周囲の立場の変遷等を体験している方が味わいの増す短編かもしれない。
■当摩節夫『いすゞ乗用車1922-2002』 三樹書房
ヒルマンミンクスからジェミニまで、RV系を除くいすゞの乗用車のカタログをフルカラー高解像度で再録しまくったとんでもなく貴重な資料。テキスト部分はいすゞ自動車の歴史=日本の乗用車開発の歴史に関する概括もあり。資料は著者のコレクションとのことだが、かつていすゞを受けたら兄が三菱にいるという理由で不採用となりプリンス自動車に就職したというすごい経歴の方なので、文章から構成までいすゞ愛に満ちあふれまくっている。永久保存版。(限定函装の豪華版もあり)
因みに、会社でも「まだあのクルマ乗ってんのか?」とか半ばネタになりながら、「街の遊撃手」JT190(ハンドリング・バイ・ロータス)まだ健在(笑)。
■麻生みこと『海月と私』1巻 講談社アフタヌーンKC
同じアフタヌーンKCから出ている傑作オムニバス『路地恋花』(全4巻)の職人かたぎのキャラクターとさまざまな恋愛の形の描写を引き継いだ感じの新シリーズ。これまたよし!
■麻生みこと『海月と私』2巻 講談社アフタヌーンKC
謎の仲居さんの謎がさらに深まる2巻。ミステリ風味は「そこをなんとか」で培った要素かも? 続きが気になる。
■三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』5巻 メディアワークス文庫
ブラックジャックのエピソードに図らずも落涙。全般に書物ミステリとしての安定感が感じられてマル。
■小野不由美『華胥の幽夢』 新潮文庫
講談社での出版時と異なり、この巻数でこのエピソード群が挟まることで、『魔性の子』を起点とする物語としての再構成の意図がより明確になっている感じがする。その意味では、今回の完全版は新作短編集の内容と巻数も含め、実に周到にエピソードを配置してあると思う。
個々の作品では、やはり表題作が秀作だが、今回、「乗月」を読んで目頭が熱くなったのは自分でも意外だった。ある程度の人生経験、自分と周囲の立場の変遷等を体験している方が味わいの増す短編かもしれない。
■当摩節夫『いすゞ乗用車1922-2002』 三樹書房
ヒルマンミンクスからジェミニまで、RV系を除くいすゞの乗用車のカタログをフルカラー高解像度で再録しまくったとんでもなく貴重な資料。テキスト部分はいすゞ自動車の歴史=日本の乗用車開発の歴史に関する概括もあり。資料は著者のコレクションとのことだが、かつていすゞを受けたら兄が三菱にいるという理由で不採用となりプリンス自動車に就職したというすごい経歴の方なので、文章から構成までいすゞ愛に満ちあふれまくっている。永久保存版。(限定函装の豪華版もあり)
因みに、会社でも「まだあのクルマ乗ってんのか?」とか半ばネタになりながら、「街の遊撃手」JT190(ハンドリング・バイ・ロータス)まだ健在(笑)。
2014年6月に読んだ本 ― 2014年12月08日 05時29分48秒
引き続き読書量は少なめながら、『図書室の魔法』は読み出したら止まらず。ワールドワイド中二病?
■ジョー・ウォルトン『図書室の魔法』上 創元SF文庫
自称?魔女の娘の主人公の愛読書はなぜかSF!? とは言いながら、主人公視点での「魔法のある世界」とSFに描かれる世界の対比、みたいな話にはならず、主人公のSF読者としてのスタンスはいかにもありふれたSFマニア。魔女であることと、SF趣味の両方の面で周囲から「浮いていた」主人公が、SFファングループの存在を知り、読書会の楽しさにハマっていくという一種のファンダム小説。登場するSF小説とその作中人物たちの評価が気になる、というのはマニアの受難か(笑)?
とはいったものの、単なるファンダム小説と言う訳でもなく、SF、ファンタジーその他、雑多な要素がこれでもかと投入されていて、本作を読んで連想したものを以下にリストアップ。
萩尾望都「半神」、ZELDA『カルナヴァル』『空色帽子の日』、キース・ロバーツ『パヴァーヌ』、ハリーポッター、那州雪絵『魔法使いの娘』、粕谷知世『終わり続ける世界のなかで』、信頼できない語り手、などなど。
■ジョー・ウォルトン『図書室の魔法』下 創元SF文庫
最後の一行がいい。しかし終盤の展開は想像以上に英国版『魔法使いの娘』だった。那州雪絵好きでZELDA好きの本読みにはこたえられない一品。
まあ、中二病のラノベとしても読めてしまうあたりはご愛敬? ミステリでも『二流小説家』はどう考えてもラノベだったし、世界的にラノベ的な作品は増えているのかも?
■高田郁『銀二貫』 幻冬舎時代小説文庫
ちょうどTVドラマ版が放映されていたタイミングで読んだ。
TVドラマでは根拠らしいものが描写されなかった(ので主人公の行動が行き当たりばったりで説得力に欠けた)新しい寒天の開発過程が、この原作小説では、きちんと仮説と検証、再現性確認から、量産化のプロセスまでをロジカルに説明してあって、なんでこの通りにドラマ化しないのか、と思った。
原作からTVドラマで変えていて「無理な展開」になってしまっていた箇所は他にもいろいろあるので、ドラマを観て興味の出た人は原作を読むが吉。
■ピュア百合アンソロジー『ひらり、別冊 部活アンソロジーほうかご!』2 新書館
元魔法少女がバトンに挑むふかさくえみの新作がよかった。
■ジョー・ウォルトン『図書室の魔法』上 創元SF文庫
自称?魔女の娘の主人公の愛読書はなぜかSF!? とは言いながら、主人公視点での「魔法のある世界」とSFに描かれる世界の対比、みたいな話にはならず、主人公のSF読者としてのスタンスはいかにもありふれたSFマニア。魔女であることと、SF趣味の両方の面で周囲から「浮いていた」主人公が、SFファングループの存在を知り、読書会の楽しさにハマっていくという一種のファンダム小説。登場するSF小説とその作中人物たちの評価が気になる、というのはマニアの受難か(笑)?
とはいったものの、単なるファンダム小説と言う訳でもなく、SF、ファンタジーその他、雑多な要素がこれでもかと投入されていて、本作を読んで連想したものを以下にリストアップ。
萩尾望都「半神」、ZELDA『カルナヴァル』『空色帽子の日』、キース・ロバーツ『パヴァーヌ』、ハリーポッター、那州雪絵『魔法使いの娘』、粕谷知世『終わり続ける世界のなかで』、信頼できない語り手、などなど。
■ジョー・ウォルトン『図書室の魔法』下 創元SF文庫
最後の一行がいい。しかし終盤の展開は想像以上に英国版『魔法使いの娘』だった。那州雪絵好きでZELDA好きの本読みにはこたえられない一品。
まあ、中二病のラノベとしても読めてしまうあたりはご愛敬? ミステリでも『二流小説家』はどう考えてもラノベだったし、世界的にラノベ的な作品は増えているのかも?
■高田郁『銀二貫』 幻冬舎時代小説文庫
ちょうどTVドラマ版が放映されていたタイミングで読んだ。
TVドラマでは根拠らしいものが描写されなかった(ので主人公の行動が行き当たりばったりで説得力に欠けた)新しい寒天の開発過程が、この原作小説では、きちんと仮説と検証、再現性確認から、量産化のプロセスまでをロジカルに説明してあって、なんでこの通りにドラマ化しないのか、と思った。
原作からTVドラマで変えていて「無理な展開」になってしまっていた箇所は他にもいろいろあるので、ドラマを観て興味の出た人は原作を読むが吉。
■ピュア百合アンソロジー『ひらり、別冊 部活アンソロジーほうかご!』2 新書館
元魔法少女がバトンに挑むふかさくえみの新作がよかった。
2014年7月に読んだ本 ― 2014年12月09日 03時22分58秒
通信教育は終えたものの、某資格試験本番の8月に向けてさらに追い込み中。
■吉住渉『ママレード・ボーイlittle』2巻 集英社マーガレットコミックス
吉住渉もなんだかんだでデビューから細く長くフォローしているマンガ家の一人。本作はマーガレット、りぼん系のマンガ家をフィーチャーした雑誌『Cocohana』に連載中の『ママレード・ボーイ』続編。
吉住渉は『ママレード・ボーイ』でかわいいファッションイラストレーターとして開眼したと思っていて、そのイラストと、画風に見合った他愛のない恋愛譚が楽しくてフォローしている感じ。今回もカラーイラスト、本編とも安定のかあいらしさ。服の質感、細かいストライプやボーダーの表現は職人芸の域。
■NATROM『「ニセ医学」に騙されないために』 メタモル出版
日本で蔓延している怪しげな話をおおよそ網羅してなにがどうあやしいかをわかりやすく解説した良書。この手の本は既にハマっている人の説得までは出来ないと思うが、将来ハマるかもしれない人をくいとめる効果はあると思うので、ある意味ワクチンとして機能するような本といっていいかも。
■吉住渉『ママレード・ボーイlittle』2巻 集英社マーガレットコミックス
吉住渉もなんだかんだでデビューから細く長くフォローしているマンガ家の一人。本作はマーガレット、りぼん系のマンガ家をフィーチャーした雑誌『Cocohana』に連載中の『ママレード・ボーイ』続編。
吉住渉は『ママレード・ボーイ』でかわいいファッションイラストレーターとして開眼したと思っていて、そのイラストと、画風に見合った他愛のない恋愛譚が楽しくてフォローしている感じ。今回もカラーイラスト、本編とも安定のかあいらしさ。服の質感、細かいストライプやボーダーの表現は職人芸の域。
■NATROM『「ニセ医学」に騙されないために』 メタモル出版
日本で蔓延している怪しげな話をおおよそ網羅してなにがどうあやしいかをわかりやすく解説した良書。この手の本は既にハマっている人の説得までは出来ないと思うが、将来ハマるかもしれない人をくいとめる効果はあると思うので、ある意味ワクチンとして機能するような本といっていいかも。
2014年8月に読んだ本 ― 2014年12月12日 22時17分16秒
某資格試験(一次)をなんとか受験。試験時間は変わらず、設問が昨年の110問から130問に増えていたのはやや反則気味のようにも思うが、なんとか一次突破。本を読んでいる時間なし(笑)。
■吉田秋生『海街diary』6巻 小学館フラワーコミックス
基本的に重たい設定の中、基本的には前向きな登場人物たちに好感を抱かせる連作。年長者の言葉の重みがそれぞれに感じられる。
■高田郁『天の梯』 角川春樹事務所時代小説文庫
『みをつくし料理帖』シリーズ最終巻。駆け足だけど伏線は一通り回収していい味わいにまとめた感。最後は知財戦略でどんでん返し、というのは『銀二貫』とも共通しているが、アイデアとしての納得感はある。登場する料理を自分で作ってみるという創作姿勢と合わせ、わりあい理系的な感性と相性がいい作風かもしれない。
■吉田秋生『海街diary』6巻 小学館フラワーコミックス
基本的に重たい設定の中、基本的には前向きな登場人物たちに好感を抱かせる連作。年長者の言葉の重みがそれぞれに感じられる。
■高田郁『天の梯』 角川春樹事務所時代小説文庫
『みをつくし料理帖』シリーズ最終巻。駆け足だけど伏線は一通り回収していい味わいにまとめた感。最後は知財戦略でどんでん返し、というのは『銀二貫』とも共通しているが、アイデアとしての納得感はある。登場する料理を自分で作ってみるという創作姿勢と合わせ、わりあい理系的な感性と相性がいい作風かもしれない。
2014年9月に読んだ本 ― 2014年12月13日 05時08分50秒
某資格試験の2次がありながらも、試験対策は座学から官能検査に移行したので多少は本が読めるように。と、いってもマンガ率高いですが(笑)。
それにつけても、ひかわきょうこと成田美名子の健在ぶりがうれしい。しかも吾妻ひでおの新作に森薫『シャーリー』まで!
■武田一義『さよならタマちゃん』 講談社イブニングKC
病棟ものとして吾妻ひでお『アル中病棟』と比べてしまうと、三歩くらい引いた視点から客観的に語る吾妻ひでおとは対照的にこちらの方が読者の感情移入度が高く、「泣いて笑える」人情ものの仕上がり。
■ひかわきょうこ『お伽もよう綾にしきふたたび』4巻 白泉社花とゆめコミックス
過去編はなんというかほとんど同著者の旧作『荒野の天使ども』のダグラスの子供時代のエピソードっぽいんだけど、ダグラスは拾われるまではワルだったところ、今回はその部分は天狗の現八郎が担っている感じ。パターンはわかっているんだけどじんわりくる。
■成田美名子『花よりも花の如く』13巻 白泉社花とゆめコミックス
大人の静かな恋愛でも、進展する時は意外な偶然が続いて我知らぬところで何かの流れに後押しされるようなことがあるもので、今回はそのあたりの偶然をうまく描いているような感じ。
■吾妻ひでお『カオスノート』 イーストプレス
SF色、パロディ色の薄い『不条理日記』現代版といった風情(ほんのりと、SF、パロディもあり)。まさかこの年になって吾妻ひでおの不条理ギャグの新作が、しかも『アル中病棟』からさほど間をおかずに読めるとは。
絵のタッチも今回はあまり描き込まず空間をうまく見せるような感じ。これでもかと言うほど小さなコマの中に登場人物をちまちま配置した『アル中病棟』、全体に黒っぽくなるまで描き込んだ『夜の魚』と比べると、作品の内容に合わせてタッチをコントロールしていることが再確認できる。職人芸。
■『日本ソムリエ協会教本<2014>』 日本ソムリエ協会
一応通読。この教本を称して「電話帳」とよく言われるが、今の電話帳ってもっと薄くなっちゃったので、電話帳より分厚いんじゃないか(笑)。
■「ワイナート」編集部『ワイン基本ブック』 美術出版社
カラー写真でいろいろ図説された入門書、としても読めるが、ソムリエ協会の教本を教科書とした場合の副読本という位置づけとも考えられる。良書。(化学的に数カ所誤記もあるが)
高校の頃、生物の教科書よりもフルカラーの副読本を楽しく読んでいたのをちょっと思い出した。
■森薫『シャーリー』2巻 ビームコミックス
森薫が同人時代から続いている13歳少女メイド萌えマンガ(笑)。
短編はぽつぽつ描き継がれていたのでそのうち出るかと思っていた2巻。内容もいいが、森薫の絵柄の変遷がわかるのも楽しい。次はまた10数年後かな(笑)?
■石井好子『パリ仕込みお料理ノート』 文春文庫
前半は料理エッセイ、後半はシャンソンの歌い手たちの人物スケッチ、という構成なので、これは文庫になる前のタイトル『ふたりの恋人 シャンソンと料理』の方が内容に合っていると思った。
■YOUCHAN『TURQUOISE』 書苑新社
名古屋SFシンポジウムのディーラーズで入手。
個人的には松尾たいこさんに続くSF、奇想小説系の表紙イラストのヒット。
■田口久美子『書店不屈宣言:わたしたちはへこたれない』 筑摩書房
著者は池袋のリブロとジュンク堂の両方に勤務したベテラン書店員。バブル期前からの書店員経験の視点から現在の書籍をめぐる状況をつづったエッセイ。
2014年7月刊行の本を今回はたまたま2ヶ月遅れで読んだが、出版と書店の現状をリアルタイムでレポートしようというこの本は今年の年内に読むか、来年読むかでも感想が随分変わりそうな予感がする。このタイミングで読めてよかった。関係ないけどなんだかかっこいいぞ、田○香○嬢!
それにつけても、ひかわきょうこと成田美名子の健在ぶりがうれしい。しかも吾妻ひでおの新作に森薫『シャーリー』まで!
■武田一義『さよならタマちゃん』 講談社イブニングKC
病棟ものとして吾妻ひでお『アル中病棟』と比べてしまうと、三歩くらい引いた視点から客観的に語る吾妻ひでおとは対照的にこちらの方が読者の感情移入度が高く、「泣いて笑える」人情ものの仕上がり。
■ひかわきょうこ『お伽もよう綾にしきふたたび』4巻 白泉社花とゆめコミックス
過去編はなんというかほとんど同著者の旧作『荒野の天使ども』のダグラスの子供時代のエピソードっぽいんだけど、ダグラスは拾われるまではワルだったところ、今回はその部分は天狗の現八郎が担っている感じ。パターンはわかっているんだけどじんわりくる。
■成田美名子『花よりも花の如く』13巻 白泉社花とゆめコミックス
大人の静かな恋愛でも、進展する時は意外な偶然が続いて我知らぬところで何かの流れに後押しされるようなことがあるもので、今回はそのあたりの偶然をうまく描いているような感じ。
■吾妻ひでお『カオスノート』 イーストプレス
SF色、パロディ色の薄い『不条理日記』現代版といった風情(ほんのりと、SF、パロディもあり)。まさかこの年になって吾妻ひでおの不条理ギャグの新作が、しかも『アル中病棟』からさほど間をおかずに読めるとは。
絵のタッチも今回はあまり描き込まず空間をうまく見せるような感じ。これでもかと言うほど小さなコマの中に登場人物をちまちま配置した『アル中病棟』、全体に黒っぽくなるまで描き込んだ『夜の魚』と比べると、作品の内容に合わせてタッチをコントロールしていることが再確認できる。職人芸。
■『日本ソムリエ協会教本<2014>』 日本ソムリエ協会
一応通読。この教本を称して「電話帳」とよく言われるが、今の電話帳ってもっと薄くなっちゃったので、電話帳より分厚いんじゃないか(笑)。
■「ワイナート」編集部『ワイン基本ブック』 美術出版社
カラー写真でいろいろ図説された入門書、としても読めるが、ソムリエ協会の教本を教科書とした場合の副読本という位置づけとも考えられる。良書。(化学的に数カ所誤記もあるが)
高校の頃、生物の教科書よりもフルカラーの副読本を楽しく読んでいたのをちょっと思い出した。
■森薫『シャーリー』2巻 ビームコミックス
森薫が同人時代から続いている13歳少女メイド萌えマンガ(笑)。
短編はぽつぽつ描き継がれていたのでそのうち出るかと思っていた2巻。内容もいいが、森薫の絵柄の変遷がわかるのも楽しい。次はまた10数年後かな(笑)?
■石井好子『パリ仕込みお料理ノート』 文春文庫
前半は料理エッセイ、後半はシャンソンの歌い手たちの人物スケッチ、という構成なので、これは文庫になる前のタイトル『ふたりの恋人 シャンソンと料理』の方が内容に合っていると思った。
■YOUCHAN『TURQUOISE』 書苑新社
名古屋SFシンポジウムのディーラーズで入手。
個人的には松尾たいこさんに続くSF、奇想小説系の表紙イラストのヒット。
■田口久美子『書店不屈宣言:わたしたちはへこたれない』 筑摩書房
著者は池袋のリブロとジュンク堂の両方に勤務したベテラン書店員。バブル期前からの書店員経験の視点から現在の書籍をめぐる状況をつづったエッセイ。
2014年7月刊行の本を今回はたまたま2ヶ月遅れで読んだが、出版と書店の現状をリアルタイムでレポートしようというこの本は今年の年内に読むか、来年読むかでも感想が随分変わりそうな予感がする。このタイミングで読めてよかった。関係ないけどなんだかかっこいいぞ、田○香○嬢!
2014年10月に読んだ本 ― 2014年12月15日 05時07分30秒
某資格試験はなんとか合格。2次試験は過去数年の中では難易度が低かった感じ? 体感的には高校受験時並の労力を約1年間注ぎ込んだ感じだったので、ちょっとほっとした。
■益田ミリ『オレの宇宙はまだまだ遠い』 講談社
無気力な書店員男性を主人公にした不思議なマンガ。1ページに8コマ配置されているが4コママンガではなく、起承転結らしきものはない。エピソードの区切りもはっきりとはわからない。言葉通りの意味で「ヤマはなく」「オチもなく」「意味」はちょっとだけある、とでも表現しようか。というか、予告?によると続編?あるのか!?
正直、感想としては微妙。コミックスではない出版形態からいっても、いわゆるマンガ読み向けではないんだろうなあ…(こういう作品の需要があることはなんとなくわかる)
■アーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』 ハヤカワ・SF・シリーズ
11月の名古屋SF読書会課題図書だったので、実家から回収してきた銀背で再読。
高校の頃に読んだっきりでなんだか寒いところを延々逃げていた印象だけが残っていたけど、改めて読み返すと異星の文化、風俗をまるごと構築する描写力の中に、ジェンダー的な実験がごく自然に盛り込まれていて、主筋はシンプルながらいくらでも深読みできそう。傑作。
■高野文子『ドミトリーともきんす』 中央公論新社
これまでの高野文子作品のどれとも似ていない実験的科学随筆読書ガイドマンガ。随筆著者の科学者たちが学生として住む「ドミトリーともきんす」を舞台に、科学者たちが随筆で語った「言葉」が不思議な物語に。個人的には「ドミトリーともきんす」の建物が中谷宇吉郎が雪の観察のために通った十勝の山荘をモデルにしているあたりがうれしい。
■高野文子『黄色い本』 講談社KCデラックスアフタヌーン
『ドミトリーともきんす』の勢いで再読。表題作は高校卒業、就職を目前にした主人公が図書館で借りた『チボー家の人々』に没入している「読書体験」を描いた秀作。読書好きの娘への理解のあるお父さんがいい味出している。このあたりの「読書」への耽溺が『ともきんす』にもつながっているのかと思う。表題作以外では「マヨネーズ」がわりと好き。
■小野不由美『黄昏の岸 暁の天』 新潮文庫
新潮文庫の完全版十二国記がこの巻で過去分に追いついた。やはり、この作品は短編集『華胥の幽夢』(講談社版では最後の刊行だった)の後に来てしっくりくる印象。『魔性の子』と表裏一体の物語でありながら、世界のルールの「人工感」に登場人物たちが気付き始めるのがポイント。ルールの運用や解釈は法律やカードゲームのような印象も与える。この世界の「仕組み」について、予定されている新作長編でどのような展開があるか、期待して待ちたい。
■高野文子『絶対安全剃刀』 白泉社
旧作再読の流れで、そういえば実は持っていなかったので新たに購入。
今読むと、当時の高野文子作品群からは初期の大友克洋的なニューウェーブの文脈を強く感じた。また、デビュー当初の玖保キリコややまじえびねはこの頃の高野文子を目指していたのかな、というのは再読しての発見(特に『シニカル・ヒステリー・アワー』のルーツは「アネサとオジ」だろう)。かつての白泉社(というかLaLa)がそれらの新人を積極的にデビューさせていたのも流れとしては自然だったとはいえるかも。
まあ、高野文子ご本人は作風、画風もどんどん変わっていくので、ワン・アンド・オンリーなんだけど。
■まのとのま『東京無敵のビールめぐり』 河出書房新社
「まの」と「のま」の二人組による、イラスト&エッセイによるビール&酒場紹介。一部マンガになっている部分もあり、ちょっと米沢りかのエッセイコミックを思わせる雰囲気あり。ライオン銀座7丁目店と赤星を猛プッシュしている感じだったので購入。ビール愛にあふれ、クラシックな酒場からクラフトビールまでカバーする力の入りようにちょっと脱帽。蘊蓄に偏りすぎず、著者らが「楽しく飲んだ」ことを追体験できる感じのよいガイドブックでした。
■A・E・コッパード『郵便局と蛇』 ちくま文庫
初めて読んだコッパード。短編も不思議な味わいだが、解説で紹介された著者の人生そのものもちょっと不思議だ。
■益田ミリ『オレの宇宙はまだまだ遠い』 講談社
無気力な書店員男性を主人公にした不思議なマンガ。1ページに8コマ配置されているが4コママンガではなく、起承転結らしきものはない。エピソードの区切りもはっきりとはわからない。言葉通りの意味で「ヤマはなく」「オチもなく」「意味」はちょっとだけある、とでも表現しようか。というか、予告?によると続編?あるのか!?
正直、感想としては微妙。コミックスではない出版形態からいっても、いわゆるマンガ読み向けではないんだろうなあ…(こういう作品の需要があることはなんとなくわかる)
■アーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』 ハヤカワ・SF・シリーズ
11月の名古屋SF読書会課題図書だったので、実家から回収してきた銀背で再読。
高校の頃に読んだっきりでなんだか寒いところを延々逃げていた印象だけが残っていたけど、改めて読み返すと異星の文化、風俗をまるごと構築する描写力の中に、ジェンダー的な実験がごく自然に盛り込まれていて、主筋はシンプルながらいくらでも深読みできそう。傑作。
■高野文子『ドミトリーともきんす』 中央公論新社
これまでの高野文子作品のどれとも似ていない実験的科学随筆読書ガイドマンガ。随筆著者の科学者たちが学生として住む「ドミトリーともきんす」を舞台に、科学者たちが随筆で語った「言葉」が不思議な物語に。個人的には「ドミトリーともきんす」の建物が中谷宇吉郎が雪の観察のために通った十勝の山荘をモデルにしているあたりがうれしい。
■高野文子『黄色い本』 講談社KCデラックスアフタヌーン
『ドミトリーともきんす』の勢いで再読。表題作は高校卒業、就職を目前にした主人公が図書館で借りた『チボー家の人々』に没入している「読書体験」を描いた秀作。読書好きの娘への理解のあるお父さんがいい味出している。このあたりの「読書」への耽溺が『ともきんす』にもつながっているのかと思う。表題作以外では「マヨネーズ」がわりと好き。
■小野不由美『黄昏の岸 暁の天』 新潮文庫
新潮文庫の完全版十二国記がこの巻で過去分に追いついた。やはり、この作品は短編集『華胥の幽夢』(講談社版では最後の刊行だった)の後に来てしっくりくる印象。『魔性の子』と表裏一体の物語でありながら、世界のルールの「人工感」に登場人物たちが気付き始めるのがポイント。ルールの運用や解釈は法律やカードゲームのような印象も与える。この世界の「仕組み」について、予定されている新作長編でどのような展開があるか、期待して待ちたい。
■高野文子『絶対安全剃刀』 白泉社
旧作再読の流れで、そういえば実は持っていなかったので新たに購入。
今読むと、当時の高野文子作品群からは初期の大友克洋的なニューウェーブの文脈を強く感じた。また、デビュー当初の玖保キリコややまじえびねはこの頃の高野文子を目指していたのかな、というのは再読しての発見(特に『シニカル・ヒステリー・アワー』のルーツは「アネサとオジ」だろう)。かつての白泉社(というかLaLa)がそれらの新人を積極的にデビューさせていたのも流れとしては自然だったとはいえるかも。
まあ、高野文子ご本人は作風、画風もどんどん変わっていくので、ワン・アンド・オンリーなんだけど。
■まのとのま『東京無敵のビールめぐり』 河出書房新社
「まの」と「のま」の二人組による、イラスト&エッセイによるビール&酒場紹介。一部マンガになっている部分もあり、ちょっと米沢りかのエッセイコミックを思わせる雰囲気あり。ライオン銀座7丁目店と赤星を猛プッシュしている感じだったので購入。ビール愛にあふれ、クラシックな酒場からクラフトビールまでカバーする力の入りようにちょっと脱帽。蘊蓄に偏りすぎず、著者らが「楽しく飲んだ」ことを追体験できる感じのよいガイドブックでした。
■A・E・コッパード『郵便局と蛇』 ちくま文庫
初めて読んだコッパード。短編も不思議な味わいだが、解説で紹介された著者の人生そのものもちょっと不思議だ。
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