2014年10月に読んだ本2014年12月15日 05時07分30秒

 某資格試験はなんとか合格。2次試験は過去数年の中では難易度が低かった感じ? 体感的には高校受験時並の労力を約1年間注ぎ込んだ感じだったので、ちょっとほっとした。

■益田ミリ『オレの宇宙はまだまだ遠い』 講談社
 無気力な書店員男性を主人公にした不思議なマンガ。1ページに8コマ配置されているが4コママンガではなく、起承転結らしきものはない。エピソードの区切りもはっきりとはわからない。言葉通りの意味で「ヤマはなく」「オチもなく」「意味」はちょっとだけある、とでも表現しようか。というか、予告?によると続編?あるのか!?
 正直、感想としては微妙。コミックスではない出版形態からいっても、いわゆるマンガ読み向けではないんだろうなあ…(こういう作品の需要があることはなんとなくわかる)

■アーシュラ・K・ル・グィン『闇の左手』 ハヤカワ・SF・シリーズ
 11月の名古屋SF読書会課題図書だったので、実家から回収してきた銀背で再読。
 高校の頃に読んだっきりでなんだか寒いところを延々逃げていた印象だけが残っていたけど、改めて読み返すと異星の文化、風俗をまるごと構築する描写力の中に、ジェンダー的な実験がごく自然に盛り込まれていて、主筋はシンプルながらいくらでも深読みできそう。傑作。

■高野文子『ドミトリーともきんす』 中央公論新社
 これまでの高野文子作品のどれとも似ていない実験的科学随筆読書ガイドマンガ。随筆著者の科学者たちが学生として住む「ドミトリーともきんす」を舞台に、科学者たちが随筆で語った「言葉」が不思議な物語に。個人的には「ドミトリーともきんす」の建物が中谷宇吉郎が雪の観察のために通った十勝の山荘をモデルにしているあたりがうれしい。

■高野文子『黄色い本』 講談社KCデラックスアフタヌーン
 『ドミトリーともきんす』の勢いで再読。表題作は高校卒業、就職を目前にした主人公が図書館で借りた『チボー家の人々』に没入している「読書体験」を描いた秀作。読書好きの娘への理解のあるお父さんがいい味出している。このあたりの「読書」への耽溺が『ともきんす』にもつながっているのかと思う。表題作以外では「マヨネーズ」がわりと好き。

■小野不由美『黄昏の岸 暁の天』 新潮文庫
 新潮文庫の完全版十二国記がこの巻で過去分に追いついた。やはり、この作品は短編集『華胥の幽夢』(講談社版では最後の刊行だった)の後に来てしっくりくる印象。『魔性の子』と表裏一体の物語でありながら、世界のルールの「人工感」に登場人物たちが気付き始めるのがポイント。ルールの運用や解釈は法律やカードゲームのような印象も与える。この世界の「仕組み」について、予定されている新作長編でどのような展開があるか、期待して待ちたい。

■高野文子『絶対安全剃刀』 白泉社
 旧作再読の流れで、そういえば実は持っていなかったので新たに購入。
 今読むと、当時の高野文子作品群からは初期の大友克洋的なニューウェーブの文脈を強く感じた。また、デビュー当初の玖保キリコややまじえびねはこの頃の高野文子を目指していたのかな、というのは再読しての発見(特に『シニカル・ヒステリー・アワー』のルーツは「アネサとオジ」だろう)。かつての白泉社(というかLaLa)がそれらの新人を積極的にデビューさせていたのも流れとしては自然だったとはいえるかも。
 まあ、高野文子ご本人は作風、画風もどんどん変わっていくので、ワン・アンド・オンリーなんだけど。

■まのとのま『東京無敵のビールめぐり』 河出書房新社
 「まの」と「のま」の二人組による、イラスト&エッセイによるビール&酒場紹介。一部マンガになっている部分もあり、ちょっと米沢りかのエッセイコミックを思わせる雰囲気あり。ライオン銀座7丁目店と赤星を猛プッシュしている感じだったので購入。ビール愛にあふれ、クラシックな酒場からクラフトビールまでカバーする力の入りようにちょっと脱帽。蘊蓄に偏りすぎず、著者らが「楽しく飲んだ」ことを追体験できる感じのよいガイドブックでした。

■A・E・コッパード『郵便局と蛇』 ちくま文庫
 初めて読んだコッパード。短編も不思議な味わいだが、解説で紹介された著者の人生そのものもちょっと不思議だ。