2024年2月に読んだ本2024年03月11日 05時03分14秒

 すっかり電子書籍読書がメインになって、特に紙だとスペースの関係で手を出しにくかったマンガがするする読めるのはメリット。マンガ以外が少ないのは、洋書であげた本の翻訳校正をしているのと、職場で最終講義っぽいものをやる準備で時間が取りにくかったためでもある。
 ということで、セルフパブリッシングで一冊出します。3月中公開に向けて準備中。よしなに。

2月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:3338
ナイス数:128

作りたい女と食べたい女 1 (it COMICS)◾️作りたい女と食べたい女 1 (it COMICS)感想
★★★
ドラマの影響で読み始めた。一人暮らしで少量だけ作るのはこの主人公ほど料理好きでなくてもむつかしいもの(なので一人暮らし始めたり、量の加減がわかる前の新婚時代は食べ過ぎになりがち(笑))。SNS時代の日常マンガでもあり、あと、作画や諸々の効果、処理はかっちりしていてこの点もデジタルネイティブっぽい。
読了日:02月02日 著者:ゆざき さかおみ


ふゆごもりのネム (世界文化社のワンダー絵本)◾️ふゆごもりのネム (世界文化社のワンダー絵本)感想
★★★
大家さんと部屋四つの下宿屋? 登場人物紹介と最初の数ページで予想していたのと比べだいぶ斜め上の展開でびっくり(笑)。ラストページにちょっと主人公の名前と関係のある仕込があるのも楽しい。
読了日:02月03日 著者:津田 真一


作りたい女と食べたい女 2 (it COMICS)◾️作りたい女と食べたい女 2 (it COMICS)感想
★★★
ふたりの関係は安定してきつつも、適齢期あるある、あるいは同調圧力あるある。最近読むマンガがこういう要素が多いのは、検索履歴などの情報から最適化されている面もあるのかな? ストーリーはこのあたりでテレビドラマ1期あたりまで。このあたりからドラマ版と違う部分がいろいろ出てくる感じ。
読了日:02月03日 著者:ゆざき さかおみ


The New IPA: Scientific Guide to Hop Aroma and Flavor (English Edition)◾️The New IPA: Scientific Guide to Hop Aroma and Flavor (English Edition)感想
★★★★
アメリカでホームブルーイングを趣味にしていた青年が、同好の士のネット会議室では知りたいことがわからない、と、思っていたところで、ビール分野の学術論文に出会う。論文を読むためにたくさんの学会に入会し、読んだ論文1000報以上!? それを自分なりにかみ砕いてblogにしたら大評判! で、それが本になったのが2019年。以来、amazonで分野内の上位をキープし続けているクラフト界隈のベストセラー。通読するとびっくり。ヘイジーIPAの造り方にフォーカスしつつも、新世紀のビールの教科書と言っていい良書。
読了日:02月08日 著者:Scott Janish


作りたい女と食べたい女 3 (it COMICS)◾️作りたい女と食べたい女 3 (it COMICS)感想
★★★☆
この巻だけじゃないけど、登場人物のトラウマが描かれるエピソードの冒頭に注意表示が入るのが今の時代を感じる。新しい隣人と現在らしいSNSきっかけのオンライン鑑賞会からのリアル友だち化なども同様。内容は2024年2月現在放映中のドラマ版2期相当だけど、原作4巻まで読んでから観はじめたドラマ版のオリジナルキャラの位置づけは、原作とドラマの関係が炎上している状況で観るとやや微妙かなあ…
読了日:02月09日 著者:ゆざき さかおみ


青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない (電撃文庫)◾️青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない (電撃文庫)感想
★★★
劇場版に追いついた原作読書。擬似量子力学?全開の劇場版『夢みる少女』と比べると、前巻と今巻は主人公の「よいこ」過ぎるモノローグで読むストーリーが文字でこのボリュームで読むとけっこう重い。ということで、この2作はその要素を映像に置き換えることができるアニメの方が自分的にはよかった。涼宮ハルヒのキョンの一人語りと比べ、主人公の一見ブタ野郎な言動と良識的な思考、それを表す普通の文体のギャップが本シリーズの美点だと思ってきたけど、ブタ野郎要素が引いて良識と善意をひたすらモノローグで読むとこの文体はやや重いかも。
読了日:02月11日 著者:鴨志田 一


作りたい女と食べたい女 4 (it COMICS)◾️作りたい女と食べたい女 4 (it COMICS)感想
★★★☆
それぞれに何らかのトラウマを抱えてきた4人がたまたま隣に住んだり、SNSから繋がったりしてそれぞれに自己肯定感を上げていき、関係性がじんわり変化していくのが心地よく読めつつ、いざ引っ越しや同居を考えると現実世界の壁が立ちふさがったり。このあたりはジョー・ウォルトン『わたしの本当の子どもたち』で提起されていた社会問題にも近い。この先、パートナー制度の問題とかも出てくるのかな。
読了日:02月11日 著者:ゆざき さかおみ


青椒肉絲の絲、麻婆豆腐の麻 ――中国語の口福 (単行本 --)◾️青椒肉絲の絲、麻婆豆腐の麻 ――中国語の口福 (単行本 --)感想
★★★★
タイトルから中華料理漫遊エッセイかと思いきや、料理名の建て付けと中国語の用法をめぐる言語学の要素もあり(著者の本職でもあるので)、歴史や地理に根ざした比較文化論の要素もあり、いろいろな側面で、しかし渾然一体で読める。それは書かれているのがこの著者の人生そのものだからでもあるのだろう。
読了日:02月12日 著者:新井 一二三


いなり、こんこん、恋いろは。 (4) (カドカワコミックス・エース)◾️いなり、こんこん、恋いろは。 (4) (カドカワコミックス・エース)感想
★★★
神無月(神有月)になって友人関係も人間関係も動きが激しくなってきて、主人公は両想い状態なのに自分に自信がなくて空回りしてるし、神様の方は性格が乙女すぎる(笑)。しかし京都といい出雲といい、神様の世界とシームレス過ぎる(笑)。神様も神力の挙動が読めない?と言うことでそのあたりは今後の落とし所がどうなるやら…
読了日:02月16日 著者:よしだ もろへ


作りたい女と食べたい女 5 (it COMICS)◾️作りたい女と食べたい女 5 (it COMICS)感想
★★★☆
ドラマ、原作ザッピング状態で出た最新刊。人が知り合うきっかけはたまたまお隣さんだったり、偶然が重なったり、という古典的な要素から、SNSからリアルへの展開という現代的な要素があったりするけど、友人、パートナーへの関係性が深まっていく基本が「いっしょにいて楽しい」なのは時代によらない正解なんだろうな、と思う。
読了日:02月17日 著者:ゆざき さかおみ


舞妓さんちのまかないさん (1) (少年サンデーコミックススペシャル)◾️舞妓さんちのまかないさん (1) (少年サンデーコミックススペシャル)感想
★★★
サンデーうぇぶりで1巻分が無料だったので試しに。青森から舞妓さんに憧れて上京(京都の京)したものの、芽が出ず帰されそうになっていたところ、まかないのおばさんが腰を痛めて引退した代わりに食事を作り始めて、まかないに。時代は現代だけど、古くからそのまま使っているタイルや石を埋め込んだ流しの質感がいい。作るのも、あくまで家庭料理、ありものでやりくりで、すごいメニューが登場しないあたりがいわゆるグルメマンガっぽくないのがポイントのひとつか? 続刊が多いので、続きはしばらく保留かな。
読了日:02月19日 著者:小山 愛子


いなり、こんこん、恋いろは。 (5) (カドカワコミックス・エース)◾️いなり、こんこん、恋いろは。 (5) (カドカワコミックス・エース)感想
★★★☆
修学旅行、なるほど京都からなら東京か。班分けとかその後の旅行中の無視いじめの発動とか、学生生活の描き方がやややりすぎ感もなくはないけど、納得感のある描写。いじめトラブルの解決のプロセスが今巻の肝という感じで、そこに神力の問題が絡むのも上手い。あとがきでは「折り返し点」とあって、ちゃんと全体の構成・構想がしっかりあって描いているのも伺えて好印象。
読了日:02月20日 著者:よしだ もろへ


魔法のリノベ(1) (ジュールコミックス)◾️魔法のリノベ(1) (ジュールコミックス)感想
★★★☆
初期からの絵柄が、根っこは変わらないものの円熟の境地に達していて、特に表情表現がすばらしい。大手から家族経営の会社に転職した主人公がお客さんの普段表に見せていない気持ちをうまく掘り起こしてリノベーション案を提案して、結果的に夫婦の間のちょっとしたすれ違いまでリノベーションしていくハートウォーミングなコンセプトがいい。
読了日:02月23日 著者:星崎 真紀


超人ロック 鏡の檻(1) (ヤングキングコミックス)◾️超人ロック 鏡の檻(1) (ヤングキングコミックス)感想
★★★☆
『ラフラール』の直接の続編。この年代、旧帝国以前の技術はたまに漏れ出る以外は時間庫に封印され、「超人ロック」の記録、記憶は巧妙に消されている設定だが、このシリーズの主要キャラクターはロックについてよく知っている。ラフノール関係者はむしろよく知っている理由はあるが、他はどうやって調べ上げたのか、やや気になる。とはいえ『コズミック・ゲーム』が歴史上の出来事として出てきたりするのはやっぱりファン心をくすぐる(あとがきにはその執筆秘話も)。
読了日:02月24日 著者:聖悠紀


超人ロック 鏡の檻(2) (ヤングキングコミックス)◾️超人ロック 鏡の檻(2) (ヤングキングコミックス)感想
★★★☆
今シリーズの肝はESPジャマーとその関連技術。数千年の時を超能力者と共存してきた社会ではESPを妨害できる技術が抑止力となることで均衡状態を作り上げている、というのは、そういう変遷の歴史そのものを描き続けてきた作品だからこそ提示できるコンセプトかもしれない(単発の作品でも出せなくはないが、ここまで説得力はないかもしれない)。
読了日:02月25日 著者:聖悠紀


魔法のリノベ(2) (ジュールコミックス)◾️魔法のリノベ(2) (ジュールコミックス)感想
★★★☆
依頼者の家族間の些細なささくれをリノベをきっかけに癒す、というコンセプトは健在。そのあたりはいいバランス感かな、と思う。一方で、主人公の前職からの因縁はちょっとやりすぎ感がなくもないけど、確信犯で人間関係をコントロールする、というのはリアルでもみたことがあるんで、そういう体験のある人はけっこうリアリティ感じるのかも。
読了日:02月27日 著者:星崎 真紀


岩泉舞作品集 ミレンさんの壺 (その他)◾️岩泉舞作品集 ミレンさんの壺 (その他)感想
★★★☆
これはちゃんと紙で買った。伝説だったマンガ家、岩泉舞の完全新作オムニバス長編と短編ひとつ。ある意味、新人マンガ家岩泉舞の再デビュー作と言っていいかもしれない。ご本人の描けなかった時期や、これまでの人生経験が反映されたと思われる、各編のキャラクターのそれぞれの人生が滋味深い。とはいえ、収録作のベストは配信でも読んでいた「ロボットを捨てに行く」かな。これからも応援していきたい。
読了日:02月29日 著者:岩泉 舞


いなり、こんこん、恋いろは。 (6) (カドカワコミックス・エース)◾️いなり、こんこん、恋いろは。 (6) (カドカワコミックス・エース)感想
★★★
すべてが終わったと思ったのに!? なぜか力が戻ってしまったことで、せっかくいい感じだった関係性にヒビが…。逃げ込んだ先は…。待て、次巻?(もう完結してます(笑))
読了日:02月29日 著者:よしだ もろへ


魔法のリノベ(3) (ジュールコミックス)◾️魔法のリノベ(3) (ジュールコミックス)感想
★★★☆
この巻では、提案、計画通りにすんなり進まない展開に。その理由として、前巻までのヒロイン側の因縁に代わり、まるふく工務店一家の方の問題次男が登場。しかし、消費税8%時代の話なのは、今読むとちょっと懐かしいかも。というか、消費税廃止にならんかな(笑)。
読了日:02月29日 著者:星崎 真紀



読書メーター

2023年12月に読んだ本2024年01月17日 13時42分36秒

 なんだかすっかり電子書籍で本を読む人になりつつあり(笑)。そんな中、『本好きの下剋上』完結記念で第一部合本無料、第二部と第三部の合本も数百円という破格サービスにつられて読み始めてしまう(笑)。なんというか、手書き時代からファンジンを作ってきた身からすると人ごとと思えない手作り本造りトライにどっぷりハマる(笑)。

12月の読書メーター
読んだ本の数:23
読んだページ数:4260
ナイス数:112

文学キョーダイ‼◾️文学キョーダイ‼感想
★★★★
普段そんなに接触なく、別々の道に進んでいた姉と弟が同時期にロシア/ソビエトに材をとった本で話題になったというのが家庭内収斂進化?みたいで面白いのだが、対談してみてもお互い丁寧な感じでその不思議な距離感のまま認め合っているのがいい。トルストイ好きのおじいちゃんの話が好きだなあ。一方、今の日本についての歯に衣着せぬ議論は「こういう本がまだちゃんと出版できる」ことのありがたみを感じる(とはいえ対談でも危惧されている通り、現状は悪い方に向かっているが)。
読了日:12月02日 著者:奈倉 有里,逢坂 冬馬


サンタさんは どうやって えんとつを おりるの?◾️サンタさんは どうやって えんとつを おりるの?感想
★★★☆
いつもながら不思議な味のある画風で、サンタをめぐる「あの謎」に迫る!? いろいろな仮説が示されるものの…。因みに今回に訳文は関西弁ではない(笑)。
読了日:12月02日 著者:マック・バーネット,ジョン・クラッセン


リトルレッドのクリスマス (創作絵本シリーズ)◾️リトルレッドのクリスマス (創作絵本シリーズ)感想
★★★☆
友だちのリトルブルーと森にもみの木をとりに行ったリトルレッド。サンタさんとはもともと友だちだったり、魔法っぽいことがナチュラルにできたり、謎が多い。森までの道々、サンタさんのお手伝い、森からの帰り道に起こる出来事が常に想像の斜め上を行くフリーダムな展開で飽きさせない。
読了日:12月02日 著者:セーラ ファーガソン


いなり、こんこん、恋いろは。(1) (角川コミックス・エース)◾️いなり、こんこん、恋いろは。(1) (角川コミックス・エース)感想
★★★
単純に電子書籍のセール品のリストで絵がかわいかったので。刊行年を見たら1巻出たのが2011年の作品か。タイトルに聞き覚えがあると思ったら、アニメ化もされていたようだ。ひょんなことから神様の力を分けてもらって他人の姿に変身できるようになった主人公いなりを含め、出てくるキャラクターが、高天原の神々含め、みんなどこかしらポンコツ要素ありなのが微笑ましい。
読了日:12月03日 著者:よしだ もろへ


詩歌川百景 (1) (フラワーコミックス)◾️詩歌川百景 (1) (フラワーコミックス)感想
★★★★
3巻が出てちょっと経つけど、複雑な人間関係がなかなか頭に入らないので頭から再読。つくづく閉塞感のきつい話だ。子どもは親を選べないし、育つ土地も選べない。前作の主人公と一時は家族だった男の子のひとりが今では更生不能なまでに堕ちてしまっていること、それが今回の主人公にとっては子どもなりに行なった(行なわざるを得なかった)決断とつながっている,というのはなんともやりきれない。善意の連鎖、という印象だった前作と比べると、今作は些細な悪意の連鎖、それとの対峙が主テーマなのかもしれない。
読了日:12月05日 著者:吉田 秋生


いなり、こんこん、恋いろは。(2) (角川コミックス・エース)◾️いなり、こんこん、恋いろは。(2) (角川コミックス・エース)感想
★★★
2010年代初頭にしてもいろいろ設定、キャラクターが狙いすぎの感は否めないものの、丁寧な画風、表情などの演出、知らなかった相手と仲良くなっていくプロセスなどがわりあい読ませる。神力の扱いがやや不穏っぽく描かれているのは伏線か?
読了日:12月07日 著者:よしだ もろへ


レストランふろ◾️レストランふろ感想
★★☆
「レストランふろ」の暖簾をくぐったさきには、なんだか美味しそうなお風呂が手を替え品を替え…。ちょっと宮沢賢治の某作のような展開を予想していたんだけど…。うん、まあ、これはこれで(笑)。
読了日:12月08日 著者:麻生 知子


かげきしょうじょ!! 14 (花とゆめコミックススペシャル)◾️かげきしょうじょ!! 14 (花とゆめコミックススペシャル)感想
★★★★
まさかの母登場と歌舞伎サイドでの仕組まれた?スキャンダルの波紋がさらさの決断を促す展開。この騒動が後を引きそうな感じのまま、いよいよ文化祭準備へ。101期の後輩の番外編も重めの内容。とはいえ、カタブツっぽい先生の現役時代の必殺技がいい(笑)。
読了日:12月08日 著者:斉木久美子


ペンギンたんけんたい あのひはもうすぐ (講談社の創作絵本)◾️ペンギンたんけんたい あのひはもうすぐ (講談社の創作絵本)感想
★★★
いつものごとくカヌーをこいで北極までやってきたペンギンたんけんたい……なんだけど、今回の任務は探検?じゃないような? コンセプトは表紙でわかる通り(笑)。
読了日:12月09日 著者:斉藤 洋,高畠 純


しあわせなモミの木◾️しあわせなモミの木感想
★★★☆
都会化してやや裕福寄りの住民(窓掃除も自分ではやらない)の街になった中、一軒だけ空き家だった住宅に越してきたおじさんは、荒れていた家を自分で掃除して、捨てられそうになっていたもみの木を引き取ってくる。それから、子どもたちが大きくなるくらいの時間が経ってみると…。ほっこりする絵本で、こんなクリスマスツリーがあるといいな、と思うけど、本当にやろうとすると大変なことになっちゃうかも?
読了日:12月09日 著者:シャーロット ゾロトウ


【小説1巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘1」◾️【小説1巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘1」感想
★★★☆
シリーズ完結記念らしい電子書籍セールでまず合本版第一部を。地震で本の下敷きで…というのは、自分の住んでいる県で確か実例あったような…。一般にはチートなしの異世界転生もの、と分類されるんだろうけど、古いSFファン的には、現代の知識を使ってサバイバルするこのタイプは『大江戸神仙伝』フォーマットとでも呼びたいところか? とはいえ、衛生状態の悪い文明レベル世界の病弱な子どもに、というのはなかなかハードル高い設定ではある。
読了日:12月12日 著者:香月美夜


愛してるゲームを終わらせたい (5) (サンデーうぇぶり)◾️愛してるゲームを終わらせたい (5) (サンデーうぇぶり)感想
★★★☆
ついに3日間限定の恋人トライアル…なんだけど、ふたりともやることがバグってていろいろ斜め上の展開に(笑)。なんというか、本当に付き合いはじめてもおんなじようにお互いに妄想して脱線していきそう(笑)?
読了日:12月13日 著者:堂本 裕貴


【小説2巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘2」◾️【小説2巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘2」感想
★★★☆
前回、古代文明の記録媒体?再現にことごとく失敗して、ようやく紙の製造にトライ。使う道具から自分たちで作らなくてはいけないのが大変。「紙」の商品価値と引き換えに出資を取り付け、試作品から量産化への道をつけつつ、前世の「おかんアート」のクラフト技術で将来への預金も。今のところ魔術が商人のための用途でしか出てこないのが面白い。主人公の唯一のチートが前世の「技術」に関する「知識」なので、商人とのやりとりも知的財産の交渉そのもの。そのあたりはジャンルは違うけど高田郁『銀ニ貫』『みをつくし料理帖』あたりに通じるかも。
読了日:12月16日 著者:香月美夜


ファイブスター物語 6 (ニュータイプ100%コミックス)◾️ファイブスター物語 6 (ニュータイプ100%コミックス)感想
★★★☆
この巻あたりから絵が細密になり、キャラクターも安定感が出てきて読んでいてそういう意味での違和感というか引っ掛かりがなくなって来た。何度目の再読か数えていないが、今の視点で読み直すと、本筋のストーリーはトラフィックスのパートも含めて割と時系列も流れも一本道だったんだな、という印象。後にならないと意味がわからないセリフや設定、カットバックで挟まる未来や過去の断片にシャッフル感を感じた過去に読んだ時とはけっこう印象が変わってきた。あと、キャラクターのモラルもへったくれもないアナーキーぶりもいい。
読了日:12月16日 著者:永野 護


ファイブスター物語 第7巻 (ニュータイプ100%コミックス)◾️ファイブスター物語 第7巻 (ニュータイプ100%コミックス)感想
★★★★
MH戦ではブラフォード・京vsアトロポス戦の緊張感、一方、MHを出すタイミングを探り合う中、歩兵を含む地上戦で悪役的なメイユ・スカが戦闘指揮官としてはかなり有能だったり、部下にも慕われていたり、劣勢のAKD側の新兵たちの群像劇などが入り乱れて読み応えあり。このあたりで物語としてのグレードが一気に上がった感がある。ついでながら、各地で戦争が続く今読むと、退却する兵士を憲兵隊が監視する描写などは複雑だ。
読了日:12月17日 著者:永野 護


ファイブスター物語 第8巻 (ニュータイプ100%コミックス)◾️ファイブスター物語 第8巻 (ニュータイプ100%コミックス)感想
★★★★
第4話放浪のアトロポス編、超絶変態的な新型から旧型まで続々登場する派手なMH群以外に、現場の兵士たちを双方ともじっくり描くかと思えば、ジョーカーの正体をめぐる挿話もあり、天照の誕生秘話あり、どれだけ詰め込んでるのか。しかも命の水をめぐる攻防戦と考えると完全に敗北で後の魔導大戦のきっかけにもなっていて、今回の大規模戦闘の無意味さが強調される。
読了日:12月17日 著者:永野 護


【小説3巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘3」◾️【小説3巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘3」感想
★★★★
民間企業の開発の仕事をしていると、会社側としては技術を囲い込んで競合を排除したい、一方で、囲い込みすぎた技術は普及しない。ベンノやギルド長とマインの両方の言い分がまあまあよくわかる。しかし身食いについて伏線はあったとはいえ、そういう展開で来るか!? 第一部完!
読了日:12月22日 著者:香月美夜


みどりいろのつりがね◾️みどりいろのつりがね感想
★★★☆
イワンのかね、というかイワンの畑から掘り出されたかねはよい音を響かせて人々に好かれていたが、尊大な皇帝がかねを我が物にしようとやってきて…。色と形がなんだか銅鐸っぽいかも。まあ、ともあれ、ロシアで皇帝というとこういう人が多いんだろうか…?
読了日:12月22日 著者:オトフリート・プロイスラー


パーマさんは パーマやさん クネクネさんのえほん (日本傑作絵本シリーズ)◾️パーマさんは パーマやさん クネクネさんのえほん (日本傑作絵本シリーズ)感想
★★★☆
クネクネさんのお友だちのパーマさんはタイトル通りのパーマ屋さん。道具を自転車に移動パーマ屋(!)をしている!? のせちゃうパーマがあるから、髪が短くても生えてなくても大丈夫!? それにしてもスイカはどこに!? まさか次の巻?まで持ち越しだったりするのか!?
読了日:12月22日 著者:樋勝 朋巳


【小説4巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い1」◾️【小説4巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い1」感想
★★★☆
虚弱で幼い兵士の娘から商人見習い、竣工予定の工房の工房長というルートでレベルアップしていたマインが、図書室があるというだけの理由で巫女見習いにルート変更。関わる人が比較的好意的だった平民の環境から、しきたりや人間関係的に悪意が先に立つ神殿の状況が厳しい。ここでもこの世界の常識に穴をあけていく感じで改善活動を進め、仲間を増やし、できることを増やしていく。しかし電子書籍だからボリュームを気にせず読み進めてるけど、一巻一巻が長いな。
読了日:12月26日 著者:香月美夜


【小説5巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い2」◾️【小説5巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い2」感想
★★★★
古代文明の再現に次々と失敗し、材料探しや道具造りから始まった紙製造が軌道に乗り、インク製造から印刷方法までお手盛りでついに児童書絵本が完成。あと、神殿の図書室が荒らされたことがきっかけで司書っぽい仕事もできたり。ここまでのところ、いい感じにお仕事小説になっているな、と思ったら、いきなりの魔法世界が展開されて一気に転生ものっぽくなった(笑)。やっぱり主人公はチート!? 絵本完成の瞬間とエピローグに二回目頭が…。ここまでで第二部前半。後半の展開が読めないけど、まあ、印刷方法は進展していくんだろうな(笑)。
読了日:12月27日 著者:香月美夜


【小説6巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い3」◾️【小説6巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い3」感想
★★★★
現代日本で本の下敷きになって、虚弱な女児として衛生状態も悪い平民の家庭に転生した主人公が、現代の知識を元に生活改善と知識の切り売りから製紙産業を興し、印刷産業版『大江戸神仙伝』になるのかと思っていたところで、実は虚弱の原因でもあった魔力がもとで神殿の巫女見習いにジョブチェンジして、身の危険も感じる不穏な展開に。とはいえ、前巻での版画印刷での絵本に続き、今巻ではついに金属活字が…。異世界版プロジェクト・グーテンベルク(この世界では別の意味だが(笑))!? とはいえ、エピローグ最後の一行がいかにも不穏だ。
読了日:12月30日 著者:香月美夜


【小説7巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い4」◾️【小説7巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い4」感想
★★★★
色インクの開発で女性研究者?ハイディ登場。基礎理論は不明でも使えればいい商業視点と原理を解明したい科学者視点がきちんと描かれているのがいい。基礎研究に理解にあるパトロン、うちにも欲しい(笑)。そんなこんなで印刷業は進展しつつも、前巻の仄めかし通り…というかそれ以上にシビアでハードな展開に。とはいえ、キャラクターの関係性を丹念に描くこの作品で、次のジョブチェンジへの説得力を持たせるには、確かにこのくらいの展開は必要だろう。しかし、部ごとのサブタイトル(読了前に第3部の書名を見ちゃった)がプチネタバレ(笑)?
読了日:12月31日 著者:香月美夜

読書メーター

2023年11月に読んだ本2023年12月24日 05時57分30秒

 徐々に電子書籍読書が自分の中で定着しつつある。特に買って読むと本棚を圧迫するので躊躇していたマンガにその傾向が顕著だが、できれば紙で手元に置きたい『ドードー鳥と孤独鳥』のような新刊も読みたい時期にタイミングが合えば電子書籍で買うようになった。
 とはいえ、そうなると始めた頃はなかった「デジタル積読」が発生し始めるのはお約束か(笑)?

11月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:2184
ナイス数:101

ドードー鳥と孤独鳥◾️ドードー鳥と孤独鳥感想
★★★★
子どもの頃、母の実家にいた折、山形市内で背の高い緑色の植物を見て「あれはホップだよ」と教えてもらったというおぼろげな記憶がある。そんな自分が気がつけばホップの香りの論文をたくさん書いたホップ研究者になっている。そんなこともあり、子どもの頃にドードー鳥と孤独鳥に魅せられた二人の少女が長じてその研究や科学記事を書きつつ、新しい発見をしていくこの物語は人ごとと思えずドキドキハラハラしながら読了。このテーマについては著者のノンフィクション版もあるがフィクションを楽しむ上ではこちらを先に読んで正解だったろう。
読了日:11月02日 著者:川端裕人


ハロウィーン (リブロの絵本)◾️ハロウィーン (リブロの絵本)感想
★★★☆
ハロウィンの由来、成り立ちを主人公の男の子が体験して、今のハロウィンにつながる、手のひらサイズのキュートな絵本。カボチャからジャック・オ・ランタンを作るやり方までおまけについている親切設計。
読了日:11月04日 著者:みうら ますこ


日本のブロードウェイ・ミュージカル60年: プロデューサーたちはいかにしてミュージカルを輸入したのか◾️日本のブロードウェイ・ミュージカル60年: プロデューサーたちはいかにしてミュージカルを輸入したのか感想
★★★★
海外のミュージカルの日本における受容のために、初期には舞台まで日本にする翻案から、日本人観客向けのアレンジを施すノンレプリカ、言語以外忠実なレプリカの形式が、輸入しようとするプロデューサーの流儀によってどう変遷してきたのか、膨大な引用と参考文献で解き明かす。明治大学の博士論文が元になっていると言うが、著者独自の検証、考察のプロセスにそれも納得。ノンレプリカで始まりレプリカを指向したはずの劇団四季が『ライオン・キング』のオリジナルの持つ人種的表象のために結果的にレプリカを逸脱している、という指摘が鋭い。
読了日:11月05日 著者:武田寿恵


クリスマスマーケット ちいさなクロのおはなし (日本傑作絵本シリーズ)◾️クリスマスマーケット ちいさなクロのおはなし (日本傑作絵本シリーズ)感想
★★★☆
今年の新作クリスマス絵本。クリスマスマーケットに拾われて、飼い主募集中だった仔犬のクロと、おかあさんと買い物に来た女の子の出会いから、微笑ましいラストまで、ほっこり読める。
読了日:11月11日 著者:降矢 なな


墨のゆらめき◾️墨のゆらめき感想
★★★
なんというか、近年のエッセイ活動と趣味活動が何かに結実したかのような奇想天外な一作。タイトルにある通り書家の物語ではあるのだが、展開のひとつひとつがどこかずれている。けだし怪作?
読了日:11月14日 著者:三浦 しをん


あの頃の青い星1◾️あの頃の青い星1感想
★★★★
海のそばにある高校の寮生活と学校での日常。主人公構本海が偶然の出会いから一目惚れした相手、瀬川晶が、同室の生徒とのトラブルからの部屋替えで海の部屋に越してきたところから始まるソフト百合物語。正確に違う女生徒たちの諍いとかありつつも普通に共同生活をしている関係性の描き方が好感持てる。Kindleの1巻目は54ページと短め。
読了日:11月17日 著者:


あの頃の青い星2◾️あの頃の青い星2感想
★★★★
瀬川晶の近寄りがたい雰囲気の背景、海で人魚に会ったという子どもの頃の記憶から始まり、海で人魚ならぬ海と(子どもの頃と裏返しのように)会い、二人の関係がちょっと深まる。今回も64ページと控えめなページ数だけど、これはこの構成の効果を最大限出すにはいいのでは。
読了日:11月18日 著者:


あの頃の青い星3◾️あの頃の青い星3感想
★★★★
水族館デートの雰囲気がすごくいい。人物も背景もクルマとかも魚たちもシンプルな線だけどマンガで、でもリアルといういいバランスの画風。コマ割りなど演出もいい。水族館で仲を深めてちょっと前進、と思ったら、なんとハプニングからいきなりの告白劇に! 今回はややボリュームアップして98ページだけど、2巻までは2019年でこの巻が2021年なのは、時節柄コロナ禍の影響が何かあったりしたのだろうか?
読了日:11月17日 著者:


あの頃の青い星4◾️あの頃の青い星4感想
★★★★
夏休み、スマホのやり取りに飽き足らなくなって晶のバイト先に行った勢いでお家にもお邪魔するイベントから、逆に晶が海の方を訪ねて夏祭りイベントまで。お互い下の名前呼びになってよきかな。この巻も94ページほど。刊行年の件は、電子書籍化のタイミングが固まってるだけで、コツコツ描き続けていたのかな。3-4あたりは固め打ちで出てる。あと、この巻からの「これまでのあらすじ」がいい味出してる。
読了日:11月18日 著者:


あの頃の青い星5◾️あの頃の青い星5感想
★★★★
季節は秋、文化祭。我が身を振り返ると、自分たちのやることに精一杯で他の人の展示をちゃんと見れなかったり、突然の忌引を知らない先輩に批判されたり、同級生の意外な特技を見て感銘を受けたこととか懐かしく思い出す。友人に押し切られたり、下級生のフォローで晶と約束した海洋研の展示を見に行けなかった海の姿にそんなことを想った。晶は小学生時代のいじめっ子連から隠れたり、上級生の送別会を企画して一人一人の想いは理解しつつも空回りで落ち込んだり、頑張っても報われないあたりがいろいろ「あるある」感。そしてふたりはついに…
読了日:11月18日 著者:


あの頃の青い星6◾️あの頃の青い星6感想
★★★★
表紙の通りの沖縄。今なら修学旅行としてはむしろ定番か。孤立している晶とグループの同級生の温度差とか、この学年のちょっとした諍いありつつも共同生活している不思議な行儀の良さのバランスの理由がさらっと語られてるけど、同じ学校でも海洋研の上級生たちのように関係が決定的に壊れるケースも描かれているので、今の作中のこの学年の空気感も微妙なバランスの上にいるのかな、と思ったり。二人の関係はまたちょっと深まって、晶もいろいろ意識し始めたり…。ここ数巻は年一冊ペースみたいなので、続きは来年くらいには読めるんだろうか。
読了日:11月18日 著者:


薬屋のひとりごと 14 (ヒーロー文庫)◾️薬屋のひとりごと 14 (ヒーロー文庫)感想
★★★☆
ちょっとした謎解きがいくつか。それが前巻のちょっとした謎解きと意外なところでつながって、宮廷内の勢力図にも影響する。蝗害のような長編エピソードのような派手さはないが、後に火種を残して物語が続いていく。妓楼をめぐるエピソードに世代交代を感じてちょっとしんみり。
読了日:11月24日 著者:日向夏


きょうはマラカスのひ (日本傑作絵本シリーズ)◾️きょうはマラカスのひ (日本傑作絵本シリーズ)感想
★★★☆
クネクネさんとおともだちのパーマさん、フワフワさん、というネーミングと絵面がなんとも言えないが、みんなでマラカスを披露しあうという友人関係、その集まりの顛末がまたなんとも言えない(笑)。なんとも言えない味わいの絵本だ(笑)。
読了日:11月24日 著者:樋勝 朋巳


フワフワさんは けいとやさん (日本傑作絵本シリーズ)◾️フワフワさんは けいとやさん (日本傑作絵本シリーズ)感想
★★★☆
今度の主人公はフワフワさん、頭のフワフワの意外な正体?が明らかに!? フワフワさんは毛糸を売ったり、毛糸で編んだものを売ったり、編み物教室をしたり、大忙し。そんなある日…。ちょっとした失敗もあるけど、持つべきものは友だち? じんわりいいお話。
読了日:11月25日 著者:樋勝 朋巳


きょうはパーティーのひ (日本傑作絵本シリーズ)◾️きょうはパーティーのひ (日本傑作絵本シリーズ)感想
★★★☆
今度はクネクネさんに主人公を戻して、お仕事のお話。クネクネさんのパン屋は大繁盛。前巻にも出てきたブティックシマさんの7周年パーティに呼ばれたクネクネさんはとびきりのパンを作って会場に向かおうとするが、風の強い日は危険がいっぱい!? パーティに集まった面々の余興の見開きが楽しくもシュール(笑)。
読了日:11月25日 著者:樋勝 朋巳


超人ロック ガイアの牙 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ガイアの牙 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★★
冒頭は帝国時代。人類の発祥の地とされる辺境の星のD弾による処理をひっそり回避させるロック。本編の時代背景は『ホリーサークル』同様の年代不明ながらかなりの後代。危険な感覚キューブの製造者が潜むらしい同じ辺境の星で、その作者ドリームウィーバーとそれを追うロック、さらに帝国時代から鏡の中で時を止めていたエスパーのエピソードが交絡する。
読了日:11月25日 著者:聖 悠紀


超人ロック ガイアの牙 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ガイアの牙 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★★
物語の背後にあったのは帝国の時間庫から持ち出されたエスパー・コントローラーと闇でそれを売買する科学者。この年代のロックはとにかく帝国の傍迷惑な時間庫からたまに出てくる遺物の脅威を取り除くことに専念している。それでも、この地に降り立つのは特別な想いも…。タイトルの「ガイアの牙」は現在の住人たちの信仰の対象でもあるが、黎明期の物語に描かれたあるものの遺跡でもあることが明かされる(ただし,物語そのものには絡まない)。
読了日:11月25日 著者:聖 悠紀

超人ロック ガイアの牙 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ガイアの牙 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★★☆
最終章は「ホリーサークル」とも同時並行なのだろう。ミラと活動した時代がおそらく表舞台にいた最後、その後は、普段は農家などに隠遁しつつ、これまでに身につけた能力と退役将校の身分を時折使って、自分の存在や帝国のオーバーテクノロジーの存在を消して、連邦全体の興亡になりそうな事態を回避して回っているのだろう。この巻の出版が2020年なので、最終章のラストがタイトルの「ガイアの牙」で終わるのは、長い長い年表を埋めてきたエピソードの実質的なおしまいといっていい、それにふさわしい光景かもしれない。
読了日:11月25日 著者:聖 悠紀


本の栞にぶら下がる◾️本の栞にぶら下がる感想
★★★★
『黄色い本』すなわち『チボー家の人々』を皮切りに、著者の読んできた本の話が語られるのだが、プロレタリアート文学から朝鮮戦争の前後を挟む朝鮮文学など、書いた人々の意外なつながりが一編ごとに反射しあって共鳴するような一種凄絶な読書録。また、朝鮮の言葉を発音やニュアンス込みで味わう言語と本に耽溺する姿勢は、奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』のロシア語への対峙の仕方にも通じるように思う。なんか、すごいものを読んでしまった。しかし憧れのマンガ家に装丁してもらう、っていいな。
読了日:11月30日 著者:斎藤 真理子

読書メーター

2023年10月に読んだ本2023年11月18日 03時36分28秒

 すごく久しぶりに読む村上春樹。『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の再話らしい、ということで、自分がリアルタイムで読んだ最後の村上作品との違いを確認したくなって。と、のっけからあの短編を思わせる雰囲気に懐かしさと作家の中の変化を実感しながら読んだ。
 他は引き続き電子書籍比率高し。

10月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:3084
ナイス数:95

じゃむパンの日◾️じゃむパンの日感想
★★★☆
これまで岸本佐知子エッセイが危険物であるとこの場でも力説してきたが、これもまた危険物か劇物か(笑)。と、思ってラストに収録されていた岸本佐知子との交換日記を読んでみたら、やっぱりあっちの方がさらに危険物だった(笑)。そんな要素だけでなく、そこはかとない昭和のにおいがよい味わいになっているエッセイ集。とはいえ、2017年に亡くなられているとは。とはいえ、下手な悼みの言葉はこの著者には無用であろう。いかにも交換日記っぽいノートな装丁もよい。
読了日:10月14日 著者:赤染晶子


検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? (岩波ブックレット 1080)◾️検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? (岩波ブックレット 1080)感想
★★★☆
いわゆる陰謀論にハマりやすい人たち(教科書的なことを否定する言説に飛びつく、反ポリコレそのものが目的化しているので正論は受け付けない、など)との対峙の仕方は911以降繰り返し議論となってきているが、そこにアカデミズムからどう向き合うべきかを考えさせられる一冊。また、同様の言説が自国の歴史修正主義にもあり、それを推進する側は、ここに取り上げられたようなことを意図してやっているようにも思えることを考えると、暗澹たる気持ちにもなる。
読了日:10月14日 著者:小野寺 拓也,田野 大輔


街とその不確かな壁◾️街とその不確かな壁感想
★★★☆
あとがきでも言われる通り作家が自分のモチーフを手を変え品を変え語り続けるものだとすると、村上春樹のそれはやはり初期3部作と短編「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子と出会うことについて」なのだろう。大学時代はその四つが自分にとっての村上春樹そのものだった。だから『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は3部作の語り直しと読めて、自分にとっての村上春樹は一度そこで区切りがついていた。今回はそのすべてが語り直されている。第一部の後を書き続けざるを得なかったのはかの短編のラストとの対応ではあろう。
読了日:10月18日 著者:村上 春樹


おいしいアンソロジー ビール 今日もゴクゴク、喉がなる (だいわ文庫)◾️おいしいアンソロジー ビール 今日もゴクゴク、喉がなる (だいわ文庫)感想
★★★
PARCO出版から出ていたテーマエッセイアンソロジーの文庫化。文庫化で数編追加されている。青空文庫で読んでいた夢野久作「ビール会社征伐」が追加されているのが愉しい。アレはサクラビールの工場とかかな?
読了日:10月19日 著者:阿川佐和子,その他


へんしん すがたをかえるイモムシ (福音館の科学シリーズ)◾️へんしん すがたをかえるイモムシ (福音館の科学シリーズ)感想
★★★☆
点描と彩色で3種の蝶がイモムシから成虫になるまでの変態の過程をつぶさに描いた科学絵本。リアルと絵本らしさが両立した好著。
読了日:10月20日 著者:桃山 鈴子


PIHOTEK 北極を風と歩く (講談社の創作絵本)◾️PIHOTEK 北極を風と歩く (講談社の創作絵本)感想
★★★★
タイトルはピヒュッティと読み、カナダのイヌイットにつけてもらった著者のイヌイットネーム、雪の中を歩いて旅する男の意味、とのこと。20年以上北極を旅する著者の見る風景や感じたことを絵本で表現。なかなか味わいがある。あとがきで著者の語るイヌイットの生命循環の考え形と科学の見方での物質循環が溶け合うような死生観が印象的。
読了日:10月21日 著者:荻田 泰永,井上 奈奈


あふれた まち◾️あふれた まち感想
★★★☆
どうぶつたちの暮らすまちの様子がある朝から変わった。あふれる水の水位は始めこそ長靴レベルだったものが、どんどん上がっていって…。この世界では解決策がちゃんとあって、みんなが力を合わせれば解決したが、現実世界では解決策も力を合わせることすらむつかしい。そして、このどうぶつたちの世界でも、おそらく取り返しのつかなかった被害は出ていた(そして誰もそれを気にしていない)。絵本らしいかあいらしさ、楽しい仕掛けもありつつ、読後感橋本みつるなかなか苦い。
読了日:10月22日 著者:マリアホ・イルストゥラホ


博物館の少女 騒がしい幽霊◾️博物館の少女 騒がしい幽霊感想
★★★☆
シリーズ2冊目。実在の人物をからめつつ、ちょっとした怪異と事件をミステリ手法とプチ伝奇風味で解決していく。一見ひと続きに思える怪異が実は…という構造がなかなかうまい。あと、ヒロイン含め子どもたちの描き方がよくて、ラストはちょっとジンときた。続刊にも期待しよう。
読了日:10月27日 著者:富安陽子


瓜を破る 1 (芳文社コミックス)◾️瓜を破る 1 (芳文社コミックス)感想
★★★☆
チャレンジングな表紙で気になっていたけど、電子書籍のセールになっていたのを機会に。なるほど、これは性別問わずあるある。いろいろ無難にこなしているけど、これだけは、というこの三十代心理はいつか通った道だ…。因みに、自分はこのワードは中学の頃に読んだ筒井康隆の七瀬シリーズで知ったけど、他であまり目にしたことがない。今の若い読者にはどのくらい知られていたのだろうか?
読了日:10月29日 著者:板倉梓


瓜を破る 2 (芳文社コミックス)◾️瓜を破る 2 (芳文社コミックス)感想
★★★☆
器用な登場人物は一人もいないし、本人の抱えているものは本人にしかわからない。それでも、意外なきっかけが意外な人間関係の変化を生むこともある。友人的な関係にしてもそれ以上の関係にしても、ひょんなことで変わることもある。そういうあたりがナチュラルに描かれていて、好感が持てる。
読了日:10月29日 著者:板倉梓


瓜を破る 3 (芳文社コミックス)◾️瓜を破る 3 (芳文社コミックス)感想
★★★☆
普通に会社生活をしている人たちが私生活で感じるあれこれ。この登場人物たちのようなきっかけの有無にかかわらず、「あの時ああしておいてよかった」/「あの時ああしていれば、もしや…」というような共感を読者がそれぞれに感じるのではないか? 前巻でのゲーマー青年の逃亡の理由が(ここ数年旬の話題にも絡んで)また切ない。
読了日:10月30日 著者:板倉梓


瓜を破る 4 (芳文社コミックス)◾️瓜を破る 4 (芳文社コミックス)感想
★★★★
無難に社会生活をこなし、個人の生活をこなしていると、変化はない。人間関係に変化が起こる時、得てして予期もしなかったようなことが起こったり、自分でも予期しなかったような行動を起こしたり、そういうことがきっかけになることがある。そういうのがうまく織り込まれているなあ、と感じる。続きが気になりすぎる(笑)。
読了日:10月31日 著者:板倉梓


超人ロック ラフラール 1巻 (ヤングキングコミックス)◾️超人ロック ラフラール 1巻 (ヤングキングコミックス)感想
★★★☆
銀河帝国が伝説となっている時代にネオ・ラフノール改めフレンダールを舞台に細々と受け継がれる行者の修行、ラフノールの生態系の遺伝資源の維持、複雑なカットバックで汎銀河戦争時のラフノール滅亡や銀河帝国時代に司祭長として赴任したロックの歴史が語られる。
読了日:10月31日 著者:聖悠紀


超人ロック ラフラール  2巻 (ヤングキングコミックス)◾️超人ロック ラフラール  2巻 (ヤングキングコミックス)感想
★★★☆
引き続き、年代を跨いで語られる物語。改めて、銀河帝国時代はロックが政治の表舞台/裏舞台含めもっとも東奔西走していたのが、このところロックの存在が忘れられた年代の話ばかり読んでいたので懐かしくもあり新鮮でもある。あと、幼なじみの成長物語でもあるところが本作の特徴か。微笑ましく読める。しかしコマーシャルソングを敢えてオーケストラで勇壮に歌わせて話題を取る、って、『ファイアーエムブレム』か(笑)!?
読了日:10月31日 著者:聖悠紀


超人ロック ラフラール 3巻 (コミック(YKコミックス))◾️超人ロック ラフラール 3巻 (コミック(YKコミックス))感想
★★★★
ラフノールの乱の後始末で司祭長として送り込まれたロックとド・ラージュの約束が皇帝の暗躍で反故に…。まあ、こういう権謀術数を帝国時代やってきたら、その後は農家で隠遁したくなるのもむべなるかな…。とはいえ、行者の試練の会話劇とかが味わい深い。『超人ロック』の面白さは超能力描写の要素とは別に、設定した世界の有り様、そこで生きるキャラクターたち、その関係性、作中でも言われる「普通の人々」の営みを描くところにある、と言えるかもしれない。
読了日:10月31日 著者:聖 悠紀


超人ロック ラフラール 4巻 (ヤングキングコミックス)◾️超人ロック ラフラール 4巻 (ヤングキングコミックス)感想
★★★★
物語の収束に向かって、それなりに凝った帝国の超科学vs超能力者の頭脳戦。このあたりもよくアイデアの引き出しがまだあるな、と思わせる。カットバックで描かれる時代よりはるか昔のラフノール創成期から、銀河帝国興亡を経て、次世代へ。歴史の流れを感じさせつつ、物語は幼なじみの微笑ましい関係で収まるのが心地よい。とはいえ、ご先祖様たちの時代とはだいぶ役割が流転しているのも面白い。まさかアレの子孫が…ねえ…(笑)。
読了日:10月31日 著者:聖 悠紀

読書メーター

2023年9月に読んだ本2023年10月19日 03時49分04秒

 引き続き回顧モードがメイン。とはいえ電子書籍比率はマンガ、小説とも上がりつつあり。超人ロックは最近聖悠紀ご本人と主人公への共感度が上がっている。同世代どころか下の世代でも、一緒に経験したことを「覚えていない」「経験値に加算されていない」ケースがあって、『風の抱擁』でロックの記録を研究した論文が「強さの秘密は(超能力そのものではなく)経験だ」というメタ解析?をしていたのを思い出すようになった。あれは聖悠紀というマンガ家の自己解析、実感でもあったのかもしれない。

9月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:2922
ナイス数:162

超人ロック ひとりぼっちのプリンセス Locke The Superman LONELY PRINCESS (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ひとりぼっちのプリンセス Locke The Superman LONELY PRINCESS (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
リュウ・ハント第3作。今回はハントの不老不死そのものが事件の中核でもあるが、「電子使い」のサイバースペースでの戦いが肝でもある。複数勢力が入り乱れる展開は前作同様本編の一冊にしてもいいくらいの面白さではある。とはいえ、伝説のエスパーは伝説の電子使いでもあったか(笑)。
読了日:09月01日 著者:聖 悠紀


ペンギンたんけんたい みなみのしま (講談社の創作絵本)◾️ペンギンたんけんたい みなみのしま (講談社の創作絵本)感想
★★★☆
ペンギンたんけんたいがカヌーでもなみのしまに上陸。ライオンにもニシキヘビにもワニにもひるまず、島の頂上まで探検を続ける。浜に戻ってやったことは…。ちょうど読んだばかりの某賞受賞作大長編を思わせる余韻の残るラスト!? なるほど、ちゃんとまじめにたんけんしてるのね(笑)。
読了日:09月02日 著者:斉藤 洋,高畠 純


たびにでよう (単行本絵本)◾️たびにでよう (単行本絵本)感想
★★★★
プロフィールにセンダックの絵本と出会い絵本作家を志した、とあるけど、なるほどこれは『かいじゅうたちのいるところ』へのオマージュが感じられる。印刷の仕様をうまく活用してモノクロ見開きと着色のある見開きが交互になるのをうまくアクセントになるように構成してある。目線の通り左から右へのつづき絵になってたびがどんどん進んでいくのも楽しい。
読了日:09月02日 著者:降矢 なな


世界で最後の花 (一般書)◾️世界で最後の花 (一般書)感想
★★★★
ヒトによる文明の興亡をシンプルな絵と文章で淡々と描いていくクロニクル絵本。2023年6月刊の村上春樹の最新訳書だけど、原著は1939年11月刊、とのこと。ちょっと『火の鳥・未来編』も連想させる味わい。
読了日:09月02日 著者:ジェームズ・サーバー


青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない (電撃文庫)◾️青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない (電撃文庫)感想
★★★★
前巻の引きは「翔子さん」だったけど、今巻はタイトルと表紙の通り妹メイン。作中不思議な出来事を総称する思春期症候群の中でもこの兄妹の症状は量子論アナロジーっぽくはなく心理ストレスの影響の延長っぽい。なので、ついに姿を現した「翔子さん」以外はSF要素なしの思春期お悩み(けっこう深刻)小説として読める。しかも、これがまた、これまでのシリーズでいちばん切なかった…。なるほど、これで劇場版の「おでかけシスター」にストレートにつながった。
読了日:09月02日 著者:鴨志田一


超人ロック 荒野の騎士 Locke The Superman The Wild Knight (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック 荒野の騎士 Locke The Superman The Wild Knight (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★
リュウ・ハント第4作…というか、第3作とセットで二部作的かな。ハントと電子使いプリンセスのその後のお話。今回の抗争の舞台は主にサイバースペース。電子使いを能力ごとコピーしたり、首謀者に無数の替玉がいたり、というあたりは『ホリー・サークル』を連想させるところもあるけどあそこまでのスケール感はない。
読了日:09月03日 著者:聖 悠紀


青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない (電撃文庫)◾️青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない (電撃文庫)感想
★★★★
これまでに描かれてきたシュレディンガーの猫とラプラスの悪魔のアナロジーにもうひと足し! 観測者の視点のズレで現在と過去と未来が実は混在している、というのは、自分がクリストファー・プリーストの作品群を読んで考察してきたSF観に近いので、予備知識なしで(なぜか)劇場版を初見で観て、そんなことをラノベ〜アニメでやって、しかも人気作品でもある、ということにひっくり返った。プリーストはそういうロジックを一切説明しないけど、この作者は理央という理系キャラを使って作中でわかりやすく説明しているのがミソ。
読了日:09月04日 著者:鴨志田一


青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない (電撃文庫)◾️青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない (電撃文庫)感想
★★★★☆
自分は劇場版でまとめて観たストーリーなのでまあいいけど、前巻のラストで次巻を待たされたリアルタイム読者は大変だったのではないか!? 絶望の現実から始まって、これまでに体験してきた量子論的思春期症候群の症状?を活用しまくってハッピーエンドをもぎ取っていく展開がSF的力技。一方で、主人公の行動自体は特殊能力や便利なガジェットがあるわけでもなく、地道に身体を動かすほかないあたりはコニー・ウィリスの時間もののような味わいもある。ここまでは1巻目から伏線を張ってきた全設定、全キャラクターによるひと続きの物語。見事。
読了日:09月04日 著者:鴨志田 一


ミステリと言う勿れ (12) (フラワーコミックスα)◾️ミステリと言う勿れ (12) (フラワーコミックスα)感想
★★★☆
最近、小説もマンガも最新刊が出ると展開を思い出すために遡ることが増えた。とはいえ、この作品の場合はなおさらだ(笑)。さいわい、今回のエピソードは一巻遡ればちょうど頭から始まっている親切設計。そうそう、旅情ミステリ風の始まり方だっけ(笑)。それにしても以前の事件の金持ちの別荘、便利だな(笑)。
読了日:09月09日 著者:田村 由美


ミステリと言う勿れ (13) (フラワーコミックスα)◾️ミステリと言う勿れ (13) (フラワーコミックスα)感想
★★★★
ということで前半を再読した上で一気読み。富山旅情編というか風呂光刑事成長編がひと段落。一見ふつうのキャラクター配置ならこうだろう、と思わせてそれを利用する意外な真相は今回も健在。とはいえ、こういう心の闇の描き方が自分のような昭和の育ちからすると今の時代ならでは、という感じもする。フィクションではあるが、そういう心理が若い世代にはむしろリアルなのではないか。
読了日:09月09日 著者:田村 由美


エンパイア・スター (1980年) (サンリオSF文庫)◾️エンパイア・スター (1980年) (サンリオSF文庫)感想
★★★★☆
ジョー・ウォルトン『図書室の魔法』冒頭の父娘SF談義でも「反対側は読まなくていい」とすすめられていた(笑)エースダブルの短い方の長さで書かれたジュブナイルスペースオペラの皮をかぶった傑作。シンプレックス、コンプレックス、マルチプレックス。ちゃんと作中の描写に忠実な表紙もいい。サンリオSF文庫の功績の中でも装丁含めて上質の部類。
読了日:09月12日 著者:サミュエル・R・ディレーニ,米村 秀雄


しょうこうじょ (オールカラー版世界の童話 13)◾️しょうこうじょ (オールカラー版世界の童話 13)感想
★★★★
これも初めて読む。「しょうこうじょ」「おうじとこじき」「しょうこうし」の3編で、単に有名どころを集めた、として読んでもいいけど、解説でも書かれているようにアメリカ在住もしくはアメリカ生まれの作家が英国を舞台に書いた作品を集める、というコンセプト性が強い一冊。この全集を読んでいるとイギリスとインドとかアメリカとかの関係がさりげなく頭に入るようになっていたんだなあ、と思った。子供の頃にこの全集をまとめて読んでなかったのが今更ながら残念。
読了日:09月18日 著者:奈街 三郎


何かが道をやってくる【新訳版】 (創元SF文庫)◾️何かが道をやってくる【新訳版】 (創元SF文庫)感想
★★★★
独特の比喩、言い回し、文学蘊蓄などなどをなるべく忠実に日本語に訳したというとすごく読みにくそう(実際、ブラッドベリの英語は母国人からしても読みやすいものではないとか…)に聞こえるが、一読、リズム感のある訳文にハマるとするする読めて、原文のひねくれ具合もしっかり伝わる名訳。小学館J文学館も持っているので、そっちでも読んでみよう(しかしなぜこのタイミングで新訳が立て続けに…?)。内容はなるほどホラーの古典と言える名著なので、新訳で読者が増えるのはよいことだろう。舞台が同じの『たんぽぽのお酒』も新訳出ないかな。
読了日:09月18日 著者:レイ・ブラッドベリ


超人ロック ドラゴンズブラッド 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ドラゴンズブラッド 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
もう時代がどのあたりかまるでわからない(笑)。が、あの「パンダりん」のだいぶ後、ということだけさらっと触れられている。相変わらず普段は農家をしていて、記録はいじられているらしく「超人ロック」という存在はほぼ知られていない、という背景で、古のラフノールの末裔と失われた生態系を背景とする物語。入り組んだ設定とキャラクター、その行動原理を物語とともにするりと語っていくもはや熟達のストーリーテリングが光る。
読了日:09月26日 著者:聖 悠紀

超人ロック ドラゴンズブラッド 2 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ドラゴンズブラッド 2 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
複数勢力が入り乱れつつ、封印を解かれたドラゴンズブラッドの力によって物語は意外な方向へ。超能力者のいる巨大ステーションを一人で持ち上げようとするあたりには『魔女の世紀』を懐かしく思い出す。それにしても本作のヒロインの繊細な描線や表情が太刀掛秀子みたいだ。
読了日:09月26日 著者:聖 悠紀


超人ロック ドラゴンズブラッド 3 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ドラゴンズブラッド 3 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
やはり封印されていただけあっていわくつきの「ドラゴンズブラッド」の力と、複数勢力間の権謀術数。そんな中、作画グループ版『ライザ』のごくごく短い併録作品の設定がさらっと使われるあたりは(知らなくても読める程度のほのめかしではあるが)長年のファンへのサービスもあるか?(まあ、アレもラフノールがらみの設定だし…)
読了日:09月27日 著者:聖 悠紀


超人ロック ドラゴンズブラッド 4 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ドラゴンズブラッド 4 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
組織間の乗っ取りを画策する敵の行動がさまざまなことのきっかけであったとはいえ、複数の思惑の交錯する物語はドラゴンズブラッドの力とひと組のカップルの純愛物語に収束。ロックの超人ぶりもただの背景となって作劇の自由度が増した印象もある。もはや年表でここだからこうなる、みたいなことは気にならない!?
読了日:09月27日 著者:聖 悠紀


星をつるよる◾️星をつるよる感想
★★★☆
眠れない子どもが家の外に出てみると釣り糸?が落ちてきて、釣られてみると…。眠れない仲間が増えていくうちにエスカレーションしていく意外な展開!? ちまちまと描かれた眠っているものたちを探すのも楽しい、絵本の楽しみに満ちた一冊。
読了日:09月29日 著者:キム・サングン


ぎょうれつのできるアイスクリームかきごおりやさん (ぎょうれつのできるおいしいえほんセット)◾️ぎょうれつのできるアイスクリームかきごおりやさん (ぎょうれつのできるおいしいえほんセット)感想
★★★☆
テンさんのところにほっきょくとなんきょくから届いた絵葉書をきっかけに、アイスクリームをつくるシロクマさんとかき氷をつくるペンギンさんがデザート対決!? 一緒にした方が美味しいね、ということで一件落着。モブでゾロゾロでてくる動物たちもみんなかわいい。一方でアイスクリームの作り方とかもしっかり描き込んであって巻末にはレシピも載っている親切設計。シリーズの他の絵本も見てみたい。
読了日:09月30日 著者:ふくざわゆみこ

読書メーター

2023年8月に読んだ本2023年09月08日 02時42分58秒

 小説、マンガとも電子書籍比率が上がりつつあり。『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』はその意図で既刊を古本に出して買い直した。
 プラットフォームは以前のKindleからhontoにほぼシフト。密林のサイトが購入時にギフト券から支払えない上にポイントは強制的に使われる謎仕様…。もう滅多に買い物してないのでポイントはたまらないしセールも少ない。サブスクユーザー以外はいなくていいですよ、という感じか?
 hontoは連携サイトのポイントがいろいろ使えるのと、いつでも何かの割引セールがあって、期間限定割引とそのセールを掛け合わせることができるケースもあって使いやすい。

8月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3144
ナイス数:98

ステンレス・スチール・ラット諸君を求む◾️ステンレス・スチール・ラット諸君を求む感想
★★★☆
シリーズ第4作はまたしても人類文明の危機! しかも敵は吾妻ひでおのマンガにでも出てきそうなぬるぬるぐちょぐちょのBEMの群れ!? 加えて、双子の息子たちも成長してメンバーに加わり、過去3作の設定やガジェットも意外な形で生きて、ラストはSF大道具で一気に解決か!? と思わせて意外なダメ出しが連発されるあたりがこのシリーズらしい。色々な意味でシリーズここまでで最高傑作、という解説に同意。しかしこのパルプ雑誌まがいの意図的な展開は大学時代に読んでいたら「けっ」と思ったかも(笑)。今は楽しく読めます。
読了日:08月08日 著者:ハリイ・ハリスン


ペンギンたんけんたい あやしいゆうれいせん (講談社の創作絵本)◾️ペンギンたんけんたい あやしいゆうれいせん (講談社の創作絵本)感想
★★★
カヌーみたいな船で海を探検するペンギンたんけんたい。出会うカモメ、ウミガメ、イルカがみんな怪しい(笑)。そして「行くな」と言われるとつい行きたくなるよね(笑)。最後まで怪しかった(笑)。
読了日:08月12日 著者:斉藤 洋,高畠 純


マルスさんとマダムマルス◾️マルスさんとマダムマルス感想
★★★☆
作者が1972-1973年ごろに滞在してというノルマンディーあたりでの寸景を25年後に絵本としてまとめたという原著を、さらに25年の時を経て復刻したという不思議な因縁を感じる一冊。現地での大家さん夫妻とおとなしい飼い犬、出会った人たちの思い出が抑制された短い文章で語られる。味わい深い。
読了日:08月12日 著者:ささめや ゆき


ツインスター・サイクロン・ランナウェイ (ハヤカワ文庫JA)◾️ツインスター・サイクロン・ランナウェイ (ハヤカワ文庫JA)感想
★★★☆
新刊が出るたびに再読。けっこう入り組んだこの世界の設定がなかなか頭に定着しない(笑)。そうだったそうだった、そういう話でそういう展開でそう次に引いてるんだった。最近、小説もマンガも続刊が出る時には既刊の内容が頭に残ってないことが多いのは老化現象なんだろうなあ…(そうそう、長くなりそうなので紙の本は手放して電子書籍で買い直した)
読了日:08月14日 著者:小川 一水


ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-35)◾️ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-35)感想
★★★☆
まったく記憶力の減退ぶりに眩暈がするほどだけど、各巻、昏魚の特性を原理から考え直して、経験的に行なわれていた漁を超える漁法を編み出す、という点は共通している。観察の重要性、という点では「科学の方法」を描くハードSFになっているあたりが上手い。さあ、内容忘れないうちに3巻へ(笑)。
読了日:08月17日 著者:小川 一水


超人ロック ブレインシュリンカー/不死者たち (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ブレインシュリンカー/不死者たち (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
今では正規の年表外の番外編?扱いとなっているらしい探偵リュウ・ハントのシリーズ。最初に読んだのは『コズミック・ゲーム』目当てに買ったビブロス文庫版で同じ巻に併録されていたもの。やっぱり単独で読んだ方がしっくりくる。不死であることの意味をロック以外の不死者の立場から光を当てるラストがけっこう味わい深い。
読了日:08月19日 著者:聖 悠紀


ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 3 (ハヤカワ文庫JA)◾️ツインスター・サイクロン・ランナウェイ 3 (ハヤカワ文庫JA)感想
★★★☆
片道で逃げて行った先の世界で初めて見る/触れる多様な社会(2作目までからの予想以上に多様)を描きつつ、二人が「漁師」のスキルを活かす道を見つけていく…という中盤あたりの設定だけでも何冊も巻を重ねられそうなところ、終盤でまたいろいろ明かされてジェットコースターのような展開。この詰め込み過ぎなあたりが新刊が出ると前巻までの内容が抜けていた理由でもあるかもしれない。とはいえ、今回の種明かしはだいぶ頭に残りそうだ。あと「百合」要素がこれまでのような私的なものから本シリーズのSFテーマそのものに。なるほど百合SF?
読了日:08月21日 著者:小川 一水


ステンレス・スチール・ラット大統領に (1984年) (サンリオSF文庫)◾️ステンレス・スチール・ラット大統領に (1984年) (サンリオSF文庫)感想
★★★
主人公一家が独裁者の支配するリゾート惑星からの救助要請に応えようと乗り込むが、今度の題材は民主主義的選挙!? 大統領選とそれをめぐる不正が題材の本作は今読んだ方がいろいろ感じるところあるかも。事実は小説より奇なり、というより、小説より陳腐だ。本作でジム一行が救うのは惑星ひとつで、まさに世界を救ってきたこれまでの作品と比べると小粒感はあるものの二転三転の展開はいつも通り楽しめる。とはいえシリーズ一貫してリアル翻訳出版時の年齢で読んだら「時間の無駄」と思ったかも。SFファンとして枯れてからの方が楽しく読める。
読了日:08月22日 著者:ハリイ・ハリスン


超人ロック 猫の散歩引き受けます Locke The Superman Take Care of Cat Walking (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック 猫の散歩引き受けます Locke The Superman Take Care of Cat Walking (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
リュウ・ハントシリーズ2冊目。一惑星を舞台に超人ロックらしい適度なスケール感の権謀術数をハントとロックを狂言まわしに軽妙に語る。ロック本編だけだと読めない「ペアペアライサンダー」的な作風でよい。とはいえ、コンビ組んで数百年一緒にいるという設定だと、確かに年表外に位置付けるほかないか…?
読了日:08月26日 著者:聖 悠紀


青春ブタ野郎はロジカルウィッチの夢を見ない (電撃文庫)◾️青春ブタ野郎はロジカルウィッチの夢を見ない (電撃文庫)感想
★★★☆
今回は表紙の通り実験室の白衣ヒロインの巻。一貫して、思春期らしい身近な心の(やや重めの)問題と、それに付随して起こる不思議現象を観測者問題の援用でつなげるアイデアが特徴の本作だが、今回はそう来たか!? という感じ。とはいえ、自傷的な行為の描かれ方がけっこう生々しいのは今の時代故か。大学時代に「なぜこの面子?」という関係性が不思議と出来上がって、あちこち行って朝までファミレス、みたいな遊び歩きをしていた時期がほんの一時期あったのを懐かしく思い出した。
読了日:08月28日 著者:鴨志田一


地図と拳◾️地図と拳感想
★★★★
読み始めは上田早夕里の上海三部作みたいな虚実取り混ぜたポリティカルフィクションかと思って、そういう要素も皆無ではないけど、まずは第2章でひっくり返る(笑)。「名人伝」的仰天エピソードを経て、「地図と拳」というタイトルに込められた意味が徐々に浮かび上がってくる。前半過ぎたあたりでマジックリアリズムな予感が強まり、まさにそのように幕を閉じた。一つの街とそこに暮らす人々が興り、消え去るまでの物語。
読了日:08月31日 著者:小川 哲


青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない (電撃文庫)◾️青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない (電撃文庫)感想
★★★
今回は思春期症候群で起こった現象の量子論的解釈がちょっと苦しいように思ったけど、まあ、もともと作中起こる不思議な現象を量子論とのアナロジーで理屈づけて納得しよう、というコンセプトではあるので、このくらいは許容、ということで(笑)。…と、言いたくなるくらい、今回は不思議な現象というより思春期らしいココロの問題そのものにウェイトを置かれた展開。まさにその部分に対して、今の世代の読者の共感度が高く、納得感もあるのがこのシリーズの人気のもとでもあるのだろう。
読了日:08月31日 著者:鴨志田一

読書メーター

2023年7月に読んだ本2023年08月15日 09時51分17秒

 たまたまではあるが百合グルメマンガと百合グルメ小説を同じ月に読んだことに(笑)。あとは気になっていた某ラノベを電子書籍の値引きセールを組み合わせてまとめ買いしたのでちょこちょこ読み進めているけど、これはSFとしても小説としてもなかなか上手いな(主人公のブタ野郎ぶりや友人関係のご都合っぽさがラノベっぽいけど)。某ハルヒと比べると文体、作風の独特のクセがなく、一方でSFとしてのスペキュラティブぶりはドラえもんとクリストファー・プリーストくらい違う(笑)。ちょこちょこ読み進めよう。

7月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:3383
ナイス数:132

カモ少年と謎のペンフレンド◾️カモ少年と謎のペンフレンド感想
★★★☆
母との約束で3ヶ月で英語を覚えなくちゃいけなくなったフランスの少年カモ。その手段はイギリスのペンフレンドとの文通……なのだが、そこに書かれた英語はちょっと古風で……? 読み始める前、読みながら読者が予想しそうな展開を外して外して、その果てには!? なかなかひねりの効いた一作。一本取られた(笑)!
読了日:07月01日 著者:ダニエル ペナック


へそまがりの魔女◾️へそまがりの魔女感想
★★★☆
なぜ「へそまがり」なのか? 魔女の本来のあり方を考えると、なるほど!? 想定も含め佇まいのよい絵本。
読了日:07月02日 著者:安東みきえ,牧野千穂


青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない (電撃文庫)◾️青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない (電撃文庫)感想
★★★☆
劇場アニメ(とテレビ版数話)だけ観て、観測者ネタの量子論SFを思春期症候群というワードでオブラートに包んでわかりやすく楽しませるあたりに技を感じていたので、劇場第2作公開記念特価にプラス割引まで効いたので、電子書籍で一気買い(笑)。キャラクターの設定や言動がみんなエキセントリックなのはライトノベルの宿命だろうが、後半に行くに従って不安がエスカレートして、極限に達したところからの逆転劇が某V6の番組みたいでちょっとほっこり。
読了日:07月06日 著者:鴨志田 一


新米姉妹のふたりごはん5 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん5 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★☆
ふたりが高二に進学して交友関係がちょっと広がっていく巻。友人視点で見るとファッションに奥手な美少女の着せ替えショッピングとか、とっつきにくいと思ってた同級生と仲よくなって家に招待されたら義姉さんが憧れの写真家の娘さんだったとか、けっこう萌える展開? そういえば父の写真をいつも観ていたせいか実は写真に才能ありそう、という設定はいろいろ伏線にもなっていきそうでもある。
読了日:07月06日 著者:柊 ゆたか


青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない (電撃文庫)◾️青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない (電撃文庫)感想
★★★★
一気買い二冊目。このエピソードは偶然テレビアニメ版で1回分だけ観て「タイトルからは予想つかない時間SF!?」と思って、タイトルを覚えるきっかけになったエピソードなんだけど、通して読むと切ない……! あと、この時の思春期症候群の種明かし?が後のエピソードの展開にも効いているんだな、と納得。しかしまあ、空気読めないんじゃなくて、空気を全部読んであえて読んでない行動をする、というのはこのシリーズに共通のいちばん大事なメッセージかもしれない。
読了日:07月08日 著者:鴨志田 一


海がきこえるⅡ アイがあるから 〈新装版〉 (徳間文庫)◾️海がきこえるⅡ アイがあるから 〈新装版〉 (徳間文庫)感想
★★★★☆
このバージョンも出ると思いつつ、前の版で再読はしていた。表紙にどのイラストを持ってくるかと思ったら、前巻同様、「これだ!」という本作にぴったりの一枚。今回の再刊二冊は歴代のハードカバー、文庫と比べてもマストバイだ。で、内容的には読むタイミングごとに刺さる箇所が違って、何度でも読み返す意義が(個人的には)ある。しかし、登場する東京の場所がみんなありありと頭に浮かぶのは30年分の経験の成せる技ではある。ラストシーン後、年が明けたら二人で銀座のビアホールにも行ってみてください(笑)。
読了日:07月09日 著者:氷室冴子


新米姉妹のふたりごはん 6 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん 6 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★☆
鹿肉再登場だけど、ちゃんと害獣駆除の狩猟のお仕事を取材して、前回登場時は言葉だけの説明だった屠畜処理の過程をけっこう生々しく描写しているのが地味にすごいと思った。作者の本気感が伝わってくる。一方ストーリーでは、謎に包まれていた両親がついに……!?
読了日:07月09日 著者:柊 ゆたか


ぼくのサビンカ◾️ぼくのサビンカ感想
★★★☆
ぼくとサビンカはいろいろなことを同じように体験する同輩のようなもの。でも、人間と猫ではいろいろと違いがあって……。ちょっと宝探し感覚も味わえる絵本。楽しい。
読了日:07月10日 著者:ラデック・マリー


新米姉妹のふたりごはん 7 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん 7 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★
前巻のような猟師はやり過ぎにしても、高校生が自分たちでもできる潮干狩り、管理釣り場(ほぼ釣り堀)での食材獲り体験から、看病イベント、料理以外のオシャレイベント、カレー持ち寄りイベントなど盛りだくさん。それにしても、テレ東で実写ドラマになってたのか!? 地方民なので知らなかった…
読了日:07月13日 著者:柊 ゆたか


超人ロック メヌエット Locke The Superman Menuet (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック メヌエット Locke The Superman Menuet (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
ロックが姿を変えて銀河帝国の中核にいた時期、皇帝がトレスからカールに代替わりするタイミングで起きた内紛の陰謀劇を連作短編で描いた一冊。表題作含め音楽をサブタイトルにしているのは古風な劇を意識してのことか。このところ帝国崩壊後の新連邦のエピソードを中心に読んでいたので、設定や名前に懐かしい感慨をもって読んだ。この世界の銀河帝国興亡史の流れをちゃんと覚えてない(笑)ものの、そのあたりを棚上げに、古典的な陰謀劇として一冊で読める。
読了日:07月15日 著者:聖 悠紀


新米姉妹のふたりごはん 8 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん 8 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★
文化祭のガレット屋であやりの交友関係が広がっていく巻。とはいえ、文化祭とは関係ないけど、自宅でコンソメ自作は普通ハードル高過ぎると思う。あと、りんご飴って包丁できれいに切れるものなのか!? 確かに、縁日で丸ごとかぶりつくよりは美味しそうだ(苦手なのでほとんどりんご飴買わない人なので)。
読了日:07月16日 著者:柊 ゆたか


台湾漫遊鉄道のふたり (単行本)◾️台湾漫遊鉄道のふたり (単行本)感想
★★★★
台湾統治時代の昭和13年春からの1年間、人気女流作家が現地に招かれ講演会をこなしながらいく先々で美味しそうな料理を食べまくる(景観、鉄道の描写も今は見れないものを盛りだくさんに入れ込んである)。相方は現地通訳の少女。おきらくごくらくな百合グルメ小説のように始まりながら、立場の異なる二人の関係が苦い読後感を残す。本編が終わった後のあとがきが多層的な感動をもたらす多重構造。ある意味では推理小説的でもあり、またある意味百合グルメ版『鉄の夢』、という観点ではオルタナティブなSFとも捉えられるかもしれない。
読了日:07月17日 著者:楊 双子


超人ロック クランベールの月 Locke The Superman The Moon in Crumbel (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック クランベールの月 Locke The Superman The Moon in Crumbel (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★
植民惑星を時間をかけて探索、開発していた時代を背景に、惑星の調査が進まないまま放置されている惑星には、人類の母星である地球とそっくりの月が…。そこで起こっている停滞の原因にロックが挑む。これもまた、少年キング時代の初期の雰囲気を感じさせる一冊。謎解きは1980年代の日本SFのとある作品を連想させるが、まあ言わぬが花か?
読了日:07月18日 著者:聖 悠紀


新米姉妹のふたりごはん 9 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん 9 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★☆
ぎこちないふたりの元に届いた生ハム原木から始まった物語も季節は冬に。料理がふたりをつなげ、友人も増えたけど、やっぱりふたりがいい、というお話。両親手作りのアドベントカレンダーがいい。あと、新家族顔合わせの番外編も。
読了日:07月22日 著者:柊 ゆたか


空想の海◾️空想の海感想
★★★★
ちょっとふしぎからちょっとこわいまで、いろいろ詰め合わせアンソロジー。アイデアストーリーとしてはいずれも水準以上と思った。冒頭とラストをポスト・アポカリプスな掌編で挟みつつ、戦争をモチーフにしたホラーが複数配置されるあたりに、今の時期に編まれたアンソロジーとしてのテーマ性も感じる。某長編の前日譚もメタ構造で面白い。同長編と関連あるマイクロノベル集の初出が某SNSというのも今っぽい。庄野ナホコさんの表紙も含め、装丁もよい。
読了日:07月22日 著者:深緑 野分


超人ロック 天空の魔法士 Locke The Superman The Wizard from The sky (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック 天空の魔法士 Locke The Superman The Wizard from The sky (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★
帝国時代末期に、ロンジット鉱を産出する星を統べてきた大公家、エスパーを「魔法士」として支配してきたその体制下での陰謀劇を描く連作短編+α。読み味はわりとあっさり。帝国のクローン技術とその限界を復習するにはいいかも。
読了日:07月22日 著者:聖 悠紀


ワンス・アホな・タイム◾️ワンス・アホな・タイム感想
★★★☆
むかし話のスタイルで、でもちょっとどこかにアホなポイントのある物語集。クスッと笑えるだけでなく、どこかビターで苦い、大人のための童話集の趣き。
読了日:07月23日 著者:安東 みきえ


新米姉妹のふたりごはん 10 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん 10 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★☆
前巻までは交友関係が広がっていく中でふたりの姉妹関係が逆照射されるような展開だったけど、そのあたりはひと段落して、それぞれに将来の道を定めて準備を始めた感じの展開。まあ、こういう不幸な展開のない幸せなだけのマンガを料理とキャラクターの関係性で読ませるというのもなかなか技ありという気はする。
読了日:07月23日 著者:柊 ゆたか


八百夜(5) (WINGS COMICS)◾️八百夜(5) (WINGS COMICS)感想
★★★☆
ポスト・アポカリプスの世界の姿が小出しにされる中、小さな集落でも、子供も大人も諍いを繰り返す…。一方、ヤオの物語を楽しむことがそんな集落の人々の憩いになりつつあった。『魔法使いの娘』シリーズまではぎりぎりかぶっていた少女マンガの薄皮も本作には感じられない。ただ、スリリングなSFマンガとしてある。那州雪絵はどこまで行くのだろうか?
読了日:07月29日 著者:那州 雪絵


ステンレス・スチール・ラット世界を救う (1979年) (サンリオSF文庫)◾️ステンレス・スチール・ラット世界を救う (1979年) (サンリオSF文庫)感想
★★★☆
シリーズ3冊目はなんと時間戦争!? 1975年、1807年、20000年代をひとり飛び回るジム、歴史改変の要素もあり。今の作家に書かせると個々のシークエンスを膨らませて1000ページくらいの大長編にしそうなプロットが200ページでサクサク読めるのが心地よい。
読了日:07月31日 著者:ハリイ・ハリソン

読書メーター

2023年6月に読んだ本2023年07月10日 05時55分55秒

 電子書籍読書化がだいぶ進んでマンガの読む数が増えた感じ。元は『超人ロック』の追いきれていなかった膨大な作品群をちゃんと読もう、というのが始まりだったんだけど、hontoのクーポンや値引きのタイミング、合わせてプロモーション入れてくるタイミングなどが自分の感覚に合っているのが要因のひとつかも。
 毎月古めの本を発掘読書していたプライベートの用事はひと段落できたので、そのあたりの傾向は今後はちょっと減るかも?

6月の読書メーター
読んだ本の数:21
読んだページ数:2138
ナイス数:81

はじめての梅しごと 梅シロップをつくろう◾️はじめての梅しごと 梅シロップをつくろう感想
★★★
絵本形式のちょっと珍しい梅しごと本。梅酒でも梅干しでもなく梅シロップがメインというのも珍しい?(まあ、絵本形式だし…)。とはいえ、基本はしっかりおさえられてるので、入門書としてはよいのでは。絵はなかなかかあいらしい。
読了日:06月02日 著者:髙野紀子


寓話に生きた人イソップ ―その人生と13の物語◾️寓話に生きた人イソップ ―その人生と13の物語感想
★★★☆
イソップがその知恵と語り手の才覚で自分の立ち位置を確立していく物語の中に、よく知られる寓話から13を選んで絵本に仕立ててある。それぞれの寓話は数行にまとめられているけど、イラストの中には文章に描ききれなかった要素や、さらに思わせぶりな描写があって細部まで楽しめる。
読了日:06月04日 著者:イアン・レンドラー


ごきげんなすてご (BOOKS FOR CHILDREN)◾️ごきげんなすてご (BOOKS FOR CHILDREN)感想
★★★☆
あることがきっかけで家出した女の子が、理想の生活を夢見て捨て子になる。同じように理想の生活を夢見る犬や猫や亀が仲間になってごきげんに拾われるのを待つのだが…。とぼけた絵柄と展開が楽しい絵本。つづきも気になる。
読了日:06月06日 著者:伊東 寛


りすとかえるとかぜのうた◾️りすとかえるとかぜのうた感想
★★★☆
旅の話をするのが好きなりすとかえる。でもどちらも森を出て旅をしたことはないし、一緒に旅をしたこともない。そこで、一緒に旅しようと船を手に入れたりすだったが…。仲がいいのは、いいことだ(笑)。あと、地味に風さんたちが優しいな(笑)。背景の白を生かして最小限筆を入れてる感じの画風がまたいい。
読了日:06月09日 著者:うえだ まこと


りすとかえるのあめのたび◾️りすとかえるのあめのたび感想
★★★☆
いよいよ船で旅に出たりすとかえる。でも、出発の日は雨降りで、おまけに霧も深くてたどり着いた岸は一体どこかわからない。今回も風さんたちが全部話を持ってった(笑)!?
読了日:06月09日 著者:うえだまこと


魔法を捨てたい女の子 1 (集英社ホームコミックス)◾️魔法を捨てたい女の子 1 (集英社ホームコミックス)感想
★★☆
一歩足を踏み入れると謎の「魔法」(選べない)がかかってしまう全寮制の女子校。本音を大声で口に出してしまう魔法がかかってしまった主人公本音坂あるみの運命やいかに(笑)!? 合作の分、袴田めら単独だと濃密すぎるかもしれない毒っぽい要素がうまく希釈されてるかもしれない? まあ、油断はできないけど。とはいえ、この学園の設定にいろいろ仕込まれていそうな予感も…
読了日:06月09日 著者:袴田 めら,新島 あん


新米姉妹のふたりごはん1 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん1 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★
出張が世界一周という謎のハイスペック夫婦の再婚で同学年だけど姉妹になった表紙の二人。しかも親の出張でいきなり二人暮らしという気まずいシチュエーションをほぐしたのは、出張先だというスペインからいきなり送りつけられてきた生ハム原木!? とにかく料理の絵がリアルで美味しそうで、材料さえ揃えれば読者もなんとか作れそうな親切設計。ただ、高そうな食材や調理器具ばかりだけど。作り方コラムで「通販で買えます」って言われてもそうおいそれとは…。ともあれ、百合風味のグルメコミックとしていいところ突いてるな、という感じ。
読了日:06月10日 著者:柊 ゆたか


超人ロック 刻の子供達 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック 刻の子供達 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
表紙の通り、5人の5歳児とパンダ…の遺伝子から復活を試みた「ぱんだリン」(笑)。絵柄は可愛らしいけど、若返り処置へのハッキングで5歳児になった面々の元の姿はいずれも一癖も二癖もあり(笑)!? ロックは小麦研究者として生物化学の世界では著名な学者の設定…というと『ソード・オブ・ネメシス』に近い年代なのか? ともあれ、いろいろ不穏さをはらみつつ次巻へ。小ネタとして、パンダの漢字表記をちゃんと知っているロック、伊達に長く生きてるわけじゃない(笑)?
読了日:06月11日 著者:聖 悠紀


超人ロック 刻の子供達 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック 刻の子供達 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
少年キング連載時代ならヤマキ長官の双子の番外編のノリに近いコミカル編。それでもけっこう物騒でスケール感もある展開。5歳児(笑)とぱんだリンの数が同じだったのはこの展開のためか(笑)!? しかしいきなり現れたロックの正体と現れた経緯を一瞬で見破って便利に使いこなす5歳児…(中味は天才武器開発者)。その他の要素も含め、本作のテーマはかわいいは正義というよりかわいいは迷惑(笑)? 細部では、電子使いのポッドが骨董品扱いなのが年代のヒントになるかならないか…
読了日:06月11日 著者:聖 悠紀


超人ロック 刻の子供達 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ)★★★☆
超人ロック 刻の子供達 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
感想
大人の身体と心での恩讐を若返りでリセットして新たな人生をそれぞれに歩み出す五者五様の有様が心地よく感じる。そして、最後のオチまでオヤジギャグ系(笑)? 同じように子どもになってやり直したはずだったのに同じような人生を繰り返したロードレオンの頃からすると、作者の作風、心境の変化もちょっと感じさせる一作かもしれない。それにしても、どんなに超人でもロックが普通の人であり続けることを看破するカレはやっぱりいい味出している。
読了日:06月11日 著者:聖 悠紀


旅するわたしたち On the Move◾️旅するわたしたち On the Move感想
★★★★
実際の描き方はどうやってるのか、という感じだけど、日本人にわかりやすそうな言い方では、スクリーントーンやカラートーンで切り絵をして白い紙に重ね貼りしていった……ような不思議なタッチの絵本。ヒトや動物が移動すること、その目的、その有様を淡々と描いていく。ちまちましたモノを探す絵本らしい楽しみもあり、また、いろいろ考えさせられもする。
読了日:06月13日 著者:ロマナ・ロマニーシン,アンドリー・レシヴ


ステンレス・スチール・ラットの復讐 (1979年) (サンリオSF文庫)◾️ステンレス・スチール・ラットの復讐 (1979年) (サンリオSF文庫)感想
★★★
前作のヒロイン?アンジェリナとの結婚逃避行!?から始まる第二作。解説によると海外のハリスンファンの評価は第一作よりだいぶ落ちるとか…。まあ、恒星間侵略を進める謎の集団の行動を止めるための潜入捜査が前作と比べると地味で一本調子に感じた読者は多かったかもしれない。とはいえ、ストレートなドンパチではなく、敵の謎を探りつつの頭脳戦という方向性は共通していて、特にラストに小技が効いているので個人的にはそこまで低評価でもない。あと、男女の役割とか医療モラルとかの描写は今読んでも(今の方が)面白く読めるようにも思う。
読了日:06月21日 著者:ハリイ・ハリスン


そんごくう (オールカラー版世界の童話 10)◾️そんごくう (オールカラー版世界の童話 10)感想
★★★☆
9巻に続き、特定表題作をタイトルに立てたアンソロジー的構成でセレクトが「そんごくう」「ライオンのめがね」「ジャックとまめのき」……となると、統一感はあまり感じないかも。そんごくうの絵柄がかあいらしくてよい。しかし、「ジャックとまめのき」は大英帝国の植民地主義を反映した、と思うと、今読んでみるといろいろ微妙なおはなしではある。
読了日:06月24日 著者:藤原 一生


ガリバーのぼうけん (オールカラー版世界の童話 11)◾️ガリバーのぼうけん (オールカラー版世界の童話 11)感想
★★★★
アンソロジー化してからのシリーズの中では、「ガリバーのぼうけん」「うかれバイオリン」「たからじま」と、全部イギリスで、また、リアルよりの挿絵のタッチも統一感のある一冊。これは幼少期から読んでいたので何度読み返したかわからない。でも、何度読んでもいい。解説では、子ども向けの翻案の重要性と、年代を踏んで最後は原典を読むことを推奨している。
読了日:06月24日 著者:後藤 楢根


新米姉妹のふたりごはん2 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん2 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★
冷静に考えると父子家庭と母子家庭の再婚で、それぞれ親が相応の地位にあって生活には不安なく親子仲も悪くなかったとはいえ、天真爛漫で家事しないで(父親がやってた?)成長した娘と、家庭料理系から高級食材の扱いまで完璧に身につけている(母親がみっちり仕込んだ?)娘、という両極端。その設定が本作の妙味とはいえ、そこは冷静に考えてはいけないのだろう。プリンからたこ焼き、ローストビーフまで。今回もごちそうさまでした。
読了日:06月25日 著者:柊 ゆたか


MOE (モエ) 2023年6月号 [雑誌] (牧野富太郎 I LOVE 植物|特別ふろく 牧野富太郎の植物図クリアファイル)◾️MOE (モエ) 2023年6月号 [雑誌] (牧野富太郎 I LOVE 植物|特別ふろく 牧野富太郎の植物図クリアファイル)感想
★★★
朝ドラもいいけど、本人もね! というわけで、牧野富太郎の年譜、標本、植物画がたっぷり楽しめる。あの時代にこんな生き方を90代までまっとうした学者さんがいた、というのは今後の指針ともしたい想いがする。
読了日:06月27日 著者:


わたしだけのものがたり◾️わたしだけのものがたり感想
★★★☆
絵本好きのエミリーが学校の先生から借りた本。家に帰って開いてみると絵はあるけど言葉がない。そこに聞こえてきた声に導かれるまま、言葉のない絵に自分で物語を見つけ始める…。エミリーだけの物語を読者がさらに広げることもできそうなメタ構造。なおかつ、もうひとつのメタ構造が…。絵とエミリーの遍歴を素直に楽しむもよし。アクロバティックな構成についていろいろ考えるもよし。ざっくりしたベースの絵に細密画をコラージュした遊びごごろたっぷりの絵を細部まで宝探しのように眺めるもよし。いろいろな楽しみ方ができそうな絵本。
読了日:06月27日 著者:パメラ ザガレンスキー


リジーと雲◾️リジーと雲感想
★★★☆
リジーが両親に、公園に来ている雲売りから雲を買ってもらって、それを大事に育てる、というお話し。子どもの頃にひよこを買ってもらったけどすぐに死なせちゃったのをちょっと思い出した。
読了日:06月27日 著者:テリー・ファン,エリック・ファン


新米姉妹のふたりごはん3 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん3 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★
海外出張中の母の妹はまさかの猟師!? 獲物を美味しく食するために鹿や猪を持ちこんでくるという夢のジビエ展開!? クリスマスのローストチキンも含め、ややワイルド系の巻だったかも。いやまあ、クリームブリュレにラムレーズンアイス、マカロンまで自作するスイーツ系も大充実だけど(笑)。
読了日:06月28日 著者:柊 ゆたか


新米姉妹のふたりごはん4 (電撃コミックスNEXT)◾️新米姉妹のふたりごはん4 (電撃コミックスNEXT)感想
★★★
今回もフォアグラ筆頭に親の送ってくる高級食材とバレンタイン絡めてのスイーツまで盛りだくさん。百合っぽさもぐんぐんアップ(笑)!? とはいえ、天然っぽい姉のサチがお勉強はめっちゃできるので、既存のマンガのこの手の設定でよくある「料理だけはダメ」というステロタイプにならず、自分で調べて初めての料理も身につけていける、というのがなかなか読んでいて好感。とはいえ、こいついつ勉強してるんだ、とも思うので、天然の天才?
読了日:06月30日 著者:柊 ゆたか


だれもしらない小さな家◾️だれもしらない小さな家感想
★★★☆
『小さなおうち』アナザー・ストーリー的な発端から、大都会の高層マンションに挟まれた古い民家をめぐるささやかな物語。原著は1964年に書かれたものを翻訳、挿画を加えて2022年に。とはいえ、1960年代より今読まれた方が味わいが増すかもしれない。
読了日:06月30日 著者:エリナー・クライマー,佐竹 美保

読書メーター

2023年5月に読んだ本2023年06月18日 19時37分48秒

 新刊っぽいものもいくつかはありつつ、主にマンガ、古いもの中心にぽつぽつ。
 新作が出てクローズアップされた『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を初刊当時以来の再読。完璧に筋を忘れ切っていて、また、そこまでの作品への思い入れありすぎで読んだ当時と比べ、一歩引いた視点から読めて、なかなか新鮮な読書体験だった。初読の時より評価上がったかも。

5月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:2942
ナイス数:80

辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿◾️辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿感想
★★★★
これはすごい! 正典と同時代を背景に舞台を香港に、史実や実在の人物の要素も盛り込みつつ、正典のいくつかの短編の要素を巧みにアレンジしてある。訳文も読みにくくなりすぎない程度にこの時代を感じさせる雰囲気で絶妙。原著では複数の中国語を話者によって書き分けてもあるという(そのあたりは原著を再現しきれないのは致し方なし)。全4冊の予定とのことで、続きも楽しみ。これがこんなに楽しめるなら、ちょっと前の正典マラソン読書も無駄じゃなかった(笑)!?
読了日:05月05日 著者:莫理斯 (トレヴァー モリス)


名探偵コナン (1) (少年サンデーコミックス)◾️名探偵コナン (1) (少年サンデーコミックス)感想
★★★
サンデーうぇぶりの試読キャンペーンにて。実は読んでなかったので(笑)。この作者らしい軽妙なタッチにキャラクターにテンポの良いストーリー。ここで現在まで続く黄金のパターンはほぼすべて確立されているんだけど、この物語を成立させている最大の立役者は小さくなったコナンをあっさり受け入れた上に、いきなり蝶ネクタイ型万能変声機を作って渡しちゃう阿笠博士だな(笑)。しかもあの容貌で52歳の設定か(笑)!?
読了日:05月07日 著者:青山 剛昌


名探偵コナン (2) (少年サンデーコミックス)◾️名探偵コナン (2) (少年サンデーコミックス)感想
★★★
主人公の仮名、そういえば本棚から適当に思いついたわけだけど、名探偵その人じゃなくて探偵小説の作者名をくっつけてるんだった。この巻で定番小道具の強化シューズ、追跡メガネ、サスペンダーが続々追加。阿笠先生、いろいろオーバーテクノロジー(笑)。あと、その後少年探偵団となる同級生の面々の初事件も。回ごとに引きがある展開が週刊連載の王道っぽい。とはいえ、殺人続きで老いも若いもトラウマにならないのか(笑)? このあたりの連載が平成6年(!)。達者な絵に独特の愛嬌のある画風、話のケレン味がサンデー版鳥山明っぽい?
読了日:05月08日 著者:青山 剛昌


宝塚の座付き作家を推す!: スターを支える立役者たち◾️宝塚の座付き作家を推す!: スターを支える立役者たち感想
★★☆
アニメージュ世代のアニメファンはアニメーター、演出、監督で作品を楽しむところからファン歴をスタートしているので、観劇が趣味に加わっても近いスタンスで正塚晴彦作品などを楽しんできた。ということである程度興味を持って読めたものの、純粋な脚本、演出論というより、サブタイトルにあるようにスターをどう支えているか、宝塚というシステムをどう支えているか、に力点がありすぎて、タイトルから期待したのとだいぶ違った。とはいえ微に入り細を穿つ私論の熱量は伝わってくる。
読了日:05月10日 著者:七島 周子


ファイブスター物語 4 (ニュータイプ100%コミックス)◾️ファイブスター物語 4 (ニュータイプ100%コミックス)感想
★★★☆
今再読すると、描かれている内容がマンガ本編から冒頭のキャラクター紹介、巻末のドラゴンの設定まで全部わかる。1-3巻は今ひとつ乗り切れなかったのが、これ以降は何度再読しても再読のたびに深みにハマっていく。この時期に描いていた内容がちゃんとパズルのピースとして30年後の作品にもカチリカチリ嵌り続けているのが改めてすごい。あと、巻末設定資料でジョーカー星団の恐竜の姿が現在の最新知見に近く羽毛があるのが地味にすごい。当時の諸説をちゃんと把握した上で、主に骨格デザインの観点から結果的に正解を予想していた!?
読了日:05月13日 著者:永野 護


ファイブスター物語 5 (ニュータイプ100%コミックス)◾️ファイブスター物語 5 (ニュータイプ100%コミックス)感想
★★★☆
この4、5巻は上下巻的でカイエン、バランシェを中心に後にああなったりこうなったりするキャラクターがガンガン出てきて、ある意味シリーズ全体の本来の出発点という印象も。それにしてもこの巻冒頭でファティマと連れションのハイアラキ師匠はヒラヒラくんかい(笑)!? ともあれ、MH狩りが決着した後に付け足しのように語られるトラフィックス。デコやん、1巻と同じ人とは思えない(笑)。前巻の付属設定がボリュームあった分、この巻は控えめ。あとストーリーサーキットで本編とトラフィックスの関係がわかるはず、って、わかんねえよ!
読了日:05月16日 著者:永野 護


世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド◾️世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド感想
★★★★
1985年初刊時に読んで以来の再読。パラフィン紙は真っ茶色だった。当時は初期三部作にファンタジーの装いを施した、くらいに読んでしまっていたけど、今読むと『ドリーム・マシン』あたりとも通底しそうなSFヴィジョンが心地よい。あと、現実世界を象徴するガジェットの用語や東京の地理が、初読時地方の大学生だった身には呪文のようだったけど、今は全部わかるのが38年という歳月か。そして、これを読んだ4年後に、作中に登場するビアホールと関係ある会社に就職することになるなどと、予想もしていなかったことではある(笑)。
読了日:05月18日 著者:村上 春樹


きみだけの夜のともだち (ポプラせかいの絵本 69)◾️きみだけの夜のともだち (ポプラせかいの絵本 69)感想
★★★☆
夜がこわい子どもに寄り添ってくれるともだち。たたずまいのいい絵本。
読了日:05月19日 著者:セング・ソウン・ラタナヴァン


シルクハットぞくは よなかのいちじにやってくる (絵本・こどものひろば)◾️シルクハットぞくは よなかのいちじにやってくる (絵本・こどものひろば)感想
★★★☆
タイトルと表紙がすべてを表しているちょっとナンセンスな絵本。よなかのいちじにやってきて、やることはちょっとしたこと。それにしても著者略歴でおひさま絵本大賞の前が辻学園日本調理師専門学校卒業。なのが、そういう意図はないんだろうけど、あまりの唐突感にちょっとナンセンスっぽい。
読了日:05月19日 著者:おくはら ゆめ


おおかみのおなかのなかで (児童書)◾️おおかみのおなかのなかで (児童書)感想
★★★☆
おおかみに丸飲みされるというと七匹のこやぎっぽいけど、おなかのなかで、というところが別の童話っぽい。でも、そういうオリジナルの骨格をとことん外すのが楽しい。ちょっと意外だったのは平面っぽいのジョン・ラッセンの絵柄で、すごく立体を感じさせる表現をしているページがあったこと。そういうのをみると、この絵のままアニメにして動かしてみてほしくなるかも。
読了日:05月19日 著者:マック バーネット

愛してるゲームを終わらせたい (4) (サンデーうぇぶり)◾️愛してるゲームを終わらせたい (4) (サンデーうぇぶり)感想
★★★★
それまでもうぇぶりのプッシュで無料公開分をぽつぽつ読んでいたものの、思わず電子書籍既刊をまとめ買いする衝撃度だったのがこの表紙にもなっているポ……ゲーム部分の先が気になりすぎる猛プッシュ。はい(笑)。完全に編集部の思惑に乗せられました(笑)。とはいえ、通しで読むとゲーム後の展開含め、チラ見せ部分以上のとんでもない破壊力(笑)。しかし、その状態でも妹挟んで3人で少女マンガ談義(笑)。そういえば、体験談を聞かされた生徒会長の方はあの後…?
読了日:05月20日 著者:堂本 裕貴


ぼくはアフリカにすむキリンといいます (偕成社おはなしポケット)◾️ぼくはアフリカにすむキリンといいます (偕成社おはなしポケット)感想
★★★☆
アフリカに住む退屈なキリンがやはり退屈していたゆうびんやのペリカンに「地平線の向こうに手紙を届けて」と依頼したところから始まるペンギンとの手紙やりとりが楽しい。ちょっと長新太っぽい雰囲気のある絵がまた味があっていい。
読了日:05月20日 著者:岩佐 めぐみ


黄金の戦士(ANIMAGE COMICS)◾️黄金の戦士(ANIMAGE COMICS)感想
★★★★☆
少年画報社の電子書籍版ですごく久しぶりに再読したけど、この書誌で登録しておきたい。まだ『超人ロック』の商業連載の始まる前、アニメージュ創刊号から連載されていた作品。本筋以外ではカル・ダームという名前が地味に出てきたり。ファンタジー異世界ものでもあるが、後のラフノールの源流でもあるかもしれない。しかも、ラストはけっこう壮大なスケール感のSFともなっている。連載で読んだ時もこのラストには驚いたが、今読み返すと、この年代にこの長さの長編でこれだけのスケール感を惜しげなく放り込んでいたことに驚愕。さすがの聖悠紀。
読了日:05月26日 著者:


上海灯蛾◾️上海灯蛾感想
★★★★
オーシャン・クロニクルにおける『深紅の碑文』に相当する暴力の連鎖渦巻くピカレスク。ただ欲望や大望を抱いただけの人物たちが時代や環境、状況の連鎖で抜け出せないところに陥っていく有様。ただし驚くほどリーダビリティは高い。一方、同じ植物の起源の異なる株を交配することで圧倒的な新品種が生まれたり、その栽培の農業、経済的な側面まで描く設定面でも説得力が高い。
読了日:05月29日 著者:上田 早夕里

読書メーター

2023年4月に読んだ本2023年05月12日 09時16分15秒

 『シン・仮面ライダー』の勢いで原作を電子書籍で。これは実は大学以降に通して読んだのでやや思い入れ薄かったところもあったんだけど、ちゃんと読むと『虎よ、虎よ!』からのイメージの引用はあるものの、マンガ表現が『ファンタジーワールド・ジュン』を思わせて、1号編と2号編の物語の変化も含め完成度高いと感じた。やっぱり脂の乗り切った時期の作品だ。あとは新旧取り混ぜて。

4月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:2472
ナイス数:63

アルド・わたしだけのひみつのともだち◾️アルド・わたしだけのひみつのともだち感想
★★★★
ひとりの少女と、少女にしか見えない友だちの物語。下描きの線をあえて残したようなざっくりした絵柄が谷川俊太郎の訳文とベストマッチ。アルドと過ごす情景の美しさと、ぼんやりしたタッチで描かれる現実の出来事の対比が痛切だ。
読了日:04月01日 著者:ジョン バーニンガム


拡散 下 大消滅2043 (文春文庫)◾️拡散 下 大消滅2043 (文春文庫)感想
★★☆
SFファン向けに一言で言えば「秘密に鰐について」ならぬ「秘密のワインについて」だった(笑)。一般読者向けには、ソムリエレベルのワイン知識をバックグラウンドにした『神の雫』+『ダヴィンチコード』という方がわかりやすいかもしれない。とはいえ、ワインを愛するあまりビールをディスるのは、ビール屋的には、ちょっとなんだかなあ…(笑)。あと、著者も解説者も分析化学と感性科学的にはやや楽観的だ。その点は香気研究者としてちょっともやっとした。いろいろあるけど、ワイン蘊蓄のディティールを楽しむ近未来小説として楽しく読めた。
読了日:04月05日 著者:邱挺峰


仮面ライダー(1) (石ノ森章太郎デジタル大全)◾️仮面ライダー(1) (石ノ森章太郎デジタル大全)感想
★★★★
画風は1971年当時の石森章太郎らしい劇画に寄せたキャラクターに、『ファンタジーワールド・ジュン』を思わせる緻密な描き込みや実験的なコマ割り、手法、アングルなどなど。すごく久しぶりに読み返したけど、記憶にあった以上に読み応えがある。あと、浮かび上がる顔の傷には『虎よ、虎よ!』の影響は間違いなくあるだろう。
読了日:04月05日 著者:石ノ森章太郎


仮面ライダー(2) (石ノ森章太郎デジタル大全)◾️仮面ライダー(2) (石ノ森章太郎デジタル大全)感想
★★★★
映画のあのラストシーンは原作のここから。とはいえ、今回読み返して、エヴァの『シト新生』のラストシーンで量産型が円を描いて弍号機の周囲をめぐるのは、この「13人の仮面ライダー」がモチーフだったんだろうな、ということに改めて気づいた。一方の『シン・仮面ライダー』はエヴァ完結に至る思索のその先が作品テーマにつながってもいたので、ウルトラマンになぞらえられることの多いエヴァにもけっこう仮面ライダー要素はもともと含まれていたのかもしれない。その観点でテレビのエヴァをもう一度見返すと発見があったりしないか?
読了日:04月05日 著者:石ノ森章太郎


みんなのいちねん◾️みんなのいちねん感想
★★★
ある一家が集合住宅から近隣の一軒家に引っ越してからの一年。四季折々の、あるいは人生のイベントが細かい切り絵でちまちまと描かれていて、宝探しの気分が味わえる。楽しい絵本。
読了日:04月06日 著者:たけうちちひろ


ねこのかぞくのおはなし (ナナカラやまものがたり2)◾️ねこのかぞくのおはなし (ナナカラやまものがたり2)感想
★★★
シリーズ2冊目。表題の猫の家族のお話はほのぼのしていたけど、その猫の家族の新居のそばにある泉をめぐる物語がちょっとこわい…
読了日:04月06日 著者:どい かや


くまおばあちゃんのジャム (ナナカラやまものがたり1)◾️くまおばあちゃんのジャム (ナナカラやまものがたり1)感想
★★★
2作目を登録していて気がついたけど、1作目を登録していなかった(笑)。こちらも表題作はほんわかしてるけど、虫がわんさかわいてくるお話は子どもあるあるでちょっと(生理的に)こわい…。もしかしてそういうどっきりを狙ったシリーズなのか!?
読了日:04月06日 著者:どい かや


コジュケイふうふのちいさないえ (ナナカラやまものがたり3)◾️コジュケイふうふのちいさないえ (ナナカラやまものがたり3)感想
★★★☆
3作目も前巻の猫の家族同様、コジュケイのご夫婦の家にまつわる心温まるお話。と、思ったら、村のお祭りで長老の語るナナカラ村の創世神話?が驚天動地!? まさかナナカラという村の名前にそんな由来が!?
読了日:04月06日 著者:どい かや


仮面ライダー(3) (石ノ森章太郎デジタル大全)◾️仮面ライダー(3) (石ノ森章太郎デジタル大全)感想
★★★★☆
全体に画面構成、描き込みがアクロバティックで緻密。石ノ森ヒーローの原作マンガの中でも近い時期に集中して描かれて画風の統一感もあるし、今読むと特撮、アニメ化された原作マンガの中でもいちばん好みかもしれない。時折「ガロ」っぽい空気感も感じるけど、そのあたりは「神々との闘い」とも共通の空気感かもしれない。
読了日:04月06日 著者:石ノ森章太郎


妖精物語からSFへ (1978年) (サンリオSF文庫)◾️妖精物語からSFへ (1978年) (サンリオSF文庫)感想
★★★★
サンリオ積読消化。表題の通り、妖精物語が幻想文学を経てSFに至る道筋を考察した第一部、夢をめぐる諸相を考察した第二部、天然石に模様のイメージと人間の行なう類推を考察した第三部。一見飛躍があるように見えて、この思考の流れがカイヨワの著作の変遷ともリンクしているという荒俣宏解説も含め、評論というより詩を読んでいるような不思議な読後感。これもまあ、読むのは大学時代より今の方が楽しめたと思う。積読結果オーライ。
読了日:04月08日 著者:ロジェ・カイヨワ


大西洋横断トンネル、万歳! (1979年) (サンリオSF文庫)◾️大西洋横断トンネル、万歳! (1979年) (サンリオSF文庫)感想
★★★☆
英国がカトリックの支配下で20世紀を迎えたキース・ロバーツ『パヴァーヌ』とは、ある意味正反対の改変歴史SF。分岐点は1212年。キリスト教徒と回教との闘いにキリスト教徒が敗れたため、スペインもポルトガルもなく、大航海時代そのものが英国支配下となった世界で、アメリカ独立に失敗したジョージ・ワシントンの子孫が土木技師として大西洋横断トンネルの建設を指揮する。大時代的でハッピーエンドな物語はもともと意図的に古さを付与されているためか、今読んでも逆に古びていない。分岐した我々の世界への扱いは『月の子』っぽいかも。
読了日:04月09日 著者:ハリイ・ハリスン


◾️マキオのひとり旅 (創作子どもの本)マキオのひとり旅 (創作子どもの本)感想
★★★☆
小学3年生の時の課題図書。お母さんの盲腸の手術の間、名古屋から東京の親戚の家に預けられることになったマキオだったが、行った先でそのお宅の赤ちゃんが急に入院、そこのお母さんも付き添うことになって、5歳の従妹ちあきと二人だけでお留守番することに…。今読むと幼女連れ去りと思われる不審者、障がい者の立場の弱さ、戦前の家政婦という職業の存在なども垣間見える。話そのものも都会の核家族化で頼る親戚知人の少ない今でいうワンオペ育児のはしりの頃の物語とも言えるかも。大人側の想いもいろいろ感じ取れて、別の視点でも楽しめた。
読了日:04月09日 著者:生源寺 美子


超人ロック ホリーサークル 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ホリーサークル 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★☆
ISCと連邦の共存する年代不明の宇宙世紀。ロックは麦の研究者でもなく、若いけど腕のいい農家の青年として登場。近隣の農家の孫が事故救援の現場の惑星で体験した出来事を接触テレパスで読み取ったロックはその惑星を調べ始め、遭難者を閉じ込めて謎の実験?をしている「ホリーサークル」への侵入を試みるが…。同じ目的を持った女性とのタッグで、「ホリーサークル」を作った主を封印できるのか? 連載が2012-2013年とのことだが、本作の基本設定はいわばケン・リュウの神々シリーズ!? 超人の最後の?敵は人間だった!?
読了日:04月11日 著者:聖 悠紀


超人ロック ホリーサークル 2 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ホリーサークル 2 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★★
人格を丸ごとデータ化して不死と化したマスター・ユウジ。一度はその人格をダウンロードした肉体を電子機器から遮断してデータも消滅させたものの、いくつあるかわからないバックアップが全ネットに存在し、ネット内では無敵。現実世界ではクローンの肉体を乗り換え「死んでも3日で蘇る」神の如きカリスマとなって不死を望む人間の欲望をエサに大衆を扇動して連邦の体制崩壊を画策する。超能力者としての電子使いではネットネイティブなデータ人格には勝てない!? それにしても、前巻からは予測できない意外な展開だった。
読了日:04月11日 著者:聖 悠紀


超人ロック ホリーサークル 3 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ホリーサークル 3 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★★☆
ネット中の情報にアクセスし始めたマスター・ユウジの(本来は)バックアップ人格は、通常秘されたネットの情報にアクセスして「書を守る者」の正体に気がつき、それを利用することに。で、表紙のような「量産型」が連邦崩壊に拍車をかける。ニムバスのような宇宙そのものを破壊する力まではなかったものの、巧緻な悪辣さと目的の虚無感で、ある意味シリーズ中でも最強の敵ではあったかもしれない。後始末もいつまで続くのか… 。そんな敵が自らの性格等がもとで自滅するのはニムバスやオメガにも通じる展開かもしれない。作品の力に圧倒された。
読了日:04月11日 著者:聖 悠紀


山の人魚と虚ろの王◾️山の人魚と虚ろの王感想
★★★★
歳の離れた新婚の妻との鉄道旅行の断片的な記憶、という体裁で語られる不思議な物語。昔から知っている山尾悠子の作風の深化とも読めつつ、今の視点で読むと「死」を連想させるイメージの奔流がジーン・ウルフ『ピース』あたりを連想させる。これもまた「信頼できない語り手」の語る/騙る物語かもしれない。物語の枠を再定義するような短文がそれにさらに拍車をかける。
読了日:04月23日 著者:山尾悠子


裏世界ピクニック8 共犯者の終り (ハヤカワ文庫JA)◾️裏世界ピクニック8 共犯者の終り (ハヤカワ文庫JA)感想
★★★☆
まさかその相手に相談するのか!? という恋バナ?で脱力系っぽく始まりつつ、ムジナネタは考えようによってはかなり怖い展開に。そんなこんなありつつも、裏世界はインターフェース、という設定がこういう形で活かされるとは!? まあなんというか、ごちそうさまでした(笑)。
読了日:04月27日 著者:宮澤 伊織


だんごむしの おうち (幼児絵本ふしぎなたねシリーズ)◾️だんごむしの おうち (幼児絵本ふしぎなたねシリーズ)感想
★★★☆
つつくと丸まるだんごむし。どこにでもいるので世代を超えて子どもの頃の記憶にあるだろう。けっこうリアルで、丸まらないわらじむしとの違いなども描きこんで、科学絵本としても良質。
読了日:04月29日 著者:澤口 たまみ
薬屋のひとりごと 13 (ヒーロー文庫)◾️薬屋のひとりごと 13 (ヒーロー文庫)感想
★★★
いろいろ殺伐とし過ぎていた西都からやっと戻って小休止で、ちょっとだけ初期の後宮日常ミステリの風味もありつつ、某兄の帰還やら、メインの2人のわりと身も蓋もない進展やら。今後への伏線も張ってまだまだ続く…
読了日:04月29日 著者:日向夏

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