2018年8月に読んだ本 ― 2018年09月02日 22時45分39秒
活字の本はわりと日本人作家、ベストセラーを含む乱読状態。それにつけても、『あ〜る』BOXの続きを買えなかったのは痛恨の極み。
8月の読書メーター
読んだ本の数:18
読んだページ数:3269
ナイス数:130
■銀河鉄道の父の感想
★★★
宮沢賢治の父親を狂言回しに賢治の生涯を臨場感豊かに描く。賢治が盛岡高等農林学校にいたのは鈴木梅太郎よりだいぶ後だが、農芸化学の系譜はこんなところにも?
読了日:08月01日 著者:門井 慶喜
■未来製作所の感想
★★★☆
デンソー肝いりらしいものづくり推奨ショートショートアンソロジー、だと思うのだが、なかなか技ありのショートショートが多く、何度か目頭が熱くなった。
読了日:08月03日 著者:太田 忠司,田丸 雅智,北野 勇作,松崎 有理,小狐 裕介
■魔王の秘書(1) (アース・スターコミックス)の感想
★★★
前から気になっていたのでほとぼりが冷めたくらいのタイミング?で買ってみた。魔王の世界征服に積極的に協力する人間秘書、というワンアイデアっぽいシチュエーションコメディが、回を追うほとにビジネス書のロジックを持ち込んでパワーアップしていくのが楽しい。
読了日:08月05日 著者:鴨鍋かもつ
■大家さんと僕の感想
★★☆
お嬢様学校に通ってらしたっぽい大家さんの「ごきげんよう」が聞いてみたい。
読了日:08月05日 著者:矢部 太郎
■バーナード嬢曰く。 (4) (REXコミックス)の感想
★★★☆
もうお互いの趣味嗜好、性格を把握しきった面々の日常は学生時代のサークル活動の愉悦そのもの。冒頭で引用される『図書室の魔法』の日本版はまさに本作と言っていいだろう。
読了日:08月06日 著者:施川 ユウキ
■どこか遠くの話をしよう 上 (ビームコミックス)の感想
★★★★
オムニバスでない連続の長編で上下巻。南米が舞台だが、ていねいな筆致の絵柄は初期短編集の頃の雰囲気を醸し出しつつ、いかにも須藤真澄的ファンタジー? と思わせておいて実は!?
読了日:08月07日 著者:須藤 真澄
■どこか遠くの話をしよう 下 (ビームコミックス)の感想
★★★★☆
上巻で初期の頃からの画風、作風を感じさせたのは確信犯だったのか。下巻に入るとうって変わって「今まで読んだことのない須藤真澄」だった。いつもの「何が起こっても不思議じゃない」ファンタジーの世界観を敢えて避け、「起こったことは取り返しがつかない、後戻りは出来ないが、人は先に進むことができる」と感じさせる静かな再生の物語。デビューから30数年、須藤真澄成熟の到達点を見た思いがする。須藤真澄を教えてくれた後輩は今はもういないが、これを読んだ感想を語り合ってみたかった。
読了日:08月07日 著者:須藤 真澄
■夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)の感想
★★★★★
NHKの2018年版のドラマを観て再読。ドラマ版の「夕凪の街」パートは原作を驚くほど丁寧に映像化(原作に比べ皆実のちょっととぼけた性格は儚げ寄りになってたけど)、一方、「桜の国」パートはだいぶ省略、アレンジを加え、結末も変えてあるものの、2018年を舞台にするならこうだろうと思わせる。総じて質の高い実写化で原作読者納得の出来だったと思うのだが、二世差別に関する要素を丸ごと省略していた点だけは、原作のテーマを考えるとちょっと残念だった気もする。
読了日:08月07日 著者:こうの 史代
■この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)の感想
★★★★★
呉市立美術館の原画展で久しぶりに全原画を鑑賞(必然的に再読)。映画公開前の原画展では基本、話数順の展示だったが、今回の目玉のひとつは「波のうさぎ」と第1話の同じコマ割り/構成のページを上下に対応させた展示。じっくり精読することで、ふたつのエピソードが、構図までそっくりに描かれてわかりやすい箇所以外でも、共通の要素をあちこちに仕込んで多層的に構成されていることが読み取れた。そして、この2話は、すずさんと哲の淡い恋愛の始まりと終わりの象徴であることが改めて実感されてちょっと切なくなった。
読了日:08月11日 著者:こうの 史代
■この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)の感想
★★★★★
同じく原画展で再読。読書メーターで表示される書影は発色が淡いが、表紙のコミックスでの印刷は原画より発色を濃くしてあるようで、実際の原画にはこの書影がむしろ近い。白い紙に絵の具を淡くのせていく「失敗の許されない」彩色は原画で観ると驚くべきテクニックだと思う。
読了日:08月11日 著者:こうの 史代
■この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)の感想
★★★★★
同じく原画展で再読。公開前の原画展では気づいていなかったのだが、その後2回、原画を鑑賞する機会があって気がついたのは、カラー、モノクロページとも、光源を強く意識した画面構成。光が当たって白く抜けるところと影になるところは下描きの段階で青鉛筆であたりを取ってあり、太陽が昇っているところは青鉛筆で位置と光線の方向を強く指定して、それをもとに全体の風景を描いたりしている。本巻の表紙原画も、日向の光を意識したごくごく淡い配色で、かつ水彩と色鉛筆で色調を合わせてある。「光と影の魔術師」と呼びたくなる超絶技巧。
読了日:08月11日 著者:こうの 史代
■きれいな色とことば (講談社文庫)の感想
★★★★
いろいろな色で彩られた絵と文。ささやかなたからもののような本。
読了日:08月12日 著者:おーなり 由子
■先生の隠しごと―僕僕先生の感想
★★★☆
秘め事っぽい?タイトルからは想像もつかない、理想国家の頓挫をめぐる物語。前作は銀河鉄道999?っぽかったが、今回はカムイ伝!?
読了日:08月19日 著者:仁木 英之
■私が死んでもレシピは残る 小林カツ代伝の感想
★★★☆
テレビで見るか、今日の料理のテキストでレシピを見るか、だったので、ここまで波瀾万丈な人だとは思っっていなかった。手塚治虫にファンレターを送ったら「マンガ家になりなさい」と言われたってすごい。
読了日:08月24日 著者:中原 一歩
■バイオレンスジャック (5) (KCスペシャル)の感想
★★★★★
黄金都市編まるごと一冊。幻の作品となりかけていた黄金都市編が初めてコミックス化された版。鬼気迫り過ぎで、今読んでも(ノスタルジーだけでなく)作品そのものの迫力に圧倒される。今回再読して、石川賢とか風忍あたりのタッチも随所に確認できたので、当時のダイナミックプロの総力戦でもあったのかもしれない。
読了日:08月26日 著者:永井 豪
■鋼の魂―僕僕先生の感想
★★★☆
世界の成り立ちに関する重めのエピソードの後、久しぶりに主人公たちが一歩引いた印象のエピソード。とはいえ、人間界はやはりちょっと血なまぐさい。
読了日:08月28日 著者:仁木 英之
■鬼桐さんの洗濯 1 (バンブーコミックス)の感想
★★★☆
人ならぬ者たちが通いつめるクリーニング屋に、住み込みのアルバイトとして暮らし始めた女子大生。ふかさくえみの持ち味が満載で、なおかつ洗濯のノウハウはけっこう実用的。意外なところに参考文献があるのもいい。
読了日:08月30日 著者:ふかさくえみ
■ミステリと言う勿れ 1 (フラワーコミックスアルファ)の感想
★★★☆
ちょっと虚無的な主人公が場違いなまでにロジカルに喋っているうちに様々なことがパズルを解くようにハマって事件が解決していく。割り切れないものも敢えて提示して割り切れないまま残すのもいい。続きが気になる。
読了日:08月31日 著者:田村 由美
読書メーター
日曜劇場『この世界の片隅に』 ― 2018年09月19日 06時55分57秒
映画版をクラウドファンディングから応援してきたファンの目からするといろいろ言いたいこともある訳だが、まあそれはそれ。
最終回まで観て、原作マンガの映像化として、民放制作のテレビドラマとしては、まずまずよい出来だろうと思った。
そのあたりは、原作にないキャラクターの配置やそれに伴うドラマ独自のアレンジも含め、手慣れた岡田惠和脚本の手堅さと言えるだろうし、セットや衣装を含め撮影面でもだいぶ頑張っていたと思う。
(特にラストの孤児のくだりは、演じていた子役の女の子のトラウマにならないか心配なくらいで、むしろ「ここまでやったのか」と驚いた)
読書メーターその他のネットの評判でも、ドラマをきっかけに原作を読んだ、という人が多く、実際、ドラマタイアップでの書店の展開も積極的で、原作の普及の面でもよかったと言えるだろう。
とはいえ、逆に気になったのが、映画版製作委員会への謝辞をめぐるあれこれだったりして。
それでなくとも「アニメである」というだけで劇場まで観に行く選択肢から外している人たちもいるであろう中で、「なんかドラマにアンチなことをいうめんどくさいファンがいる」ものとして、映画版を敬遠されてしまってもそれはそれで不幸な気がする。
(実際、そういうツイートも目にしたりしたのだ)
※自分を振り返ってみても、最初の二話くらいまでは、家で観ながら「あ〜、ここは本当はこうなのに…」みたいな、片渕監督による考証との「間違い探し」をしてしまっていたりしたので、まったく他人事でない(笑)。
まずは物議をかもしたっぽい「謝辞」という慣習について。
分野によって違うと思うが、例えば学術論文などで、テクニシャンやアドバイザー的なメンバーへの謝辞を入れるのに、事前の断りまではしていないと思う。「感謝の気持ち」という曖昧なものでもあるので、どのレベルまで入れる、入れないなども、明確なルールはないと思う。
これは、分野が違っても近い運用をされていると推察される。
映画版の製作委員会からのリアクションからすると、今回のドラマの謝辞もこれに近いパターンだったのではないかと思う。
一方で、テレビドラマを観る人の大多数は(劇場版のコアなファンの方も含め)、字幕のテロップは制作に関わったスタッフを順番に表示している、と捉えるだろう。
そうなると、劇場版の製作委員会がタッチしていたのに、様々な考証がおざなりにされていることについて、本来関係のない製作委員会(というより、片渕監督をはじめとする劇場版のスタッフ)に、質問、コメントが殺到したりするかもしれない。
そのくらいまでは容易に想定できると思うので、「関与していません」という正式コメントを早期に出しておくのは予防線としては当たり前のリアクションだったんじゃないかと思う。
まあ、そうなったらそうなったで、「せっかく感謝してもらったのにその対応は大人気ないのでは」とか、「原作でなく劇場版を連想させる描写があるのに、何の連絡もなしに謝辞だけですませたのか」みたいな両方の立場からのツッコミも当然ある訳だけど、そのあたりも、そう思う人がいるのは止められない、ということで。
要は、(建前として?)これはマンガ『この世界の片隅に』を原作としたドラマ化であって、片渕監督の劇場版が原作な訳ではない。
そうであるなら、「マンガになくて、劇場版にしかない要素」は、「入れる訳にはいかない」というのがむしろ筋というものかもしれない(もちろんグレーゾーンっぽいところはあって、それもまた物議の一因ではあったかも)。
また、テレビドラマの制作現場に、こうの先生や片渕監督と同レベルの時代・風俗考証を求めるのも(特に片渕監督の調査の実態を知っているだけに(笑))ちょっと酷なんじゃないか、とも思ったりもする。
一方で、(何らかの大人の事情?で)ドラマ版のプロモーションに劇場版に関する言及を入れることができなかったにしても、今回のドラマ化の企画そのものが、「劇場版のヒット」という現象と無関係な訳はないし、ドラマ版のスタッフだって劇場版の監督やスタッフのことはリスペクトしていただろう。
表立っては何かできないにせよ、せめて謝辞くらいは入れたかった、という気持ちの表れだった、という解釈もできなくはない?かもしれない。
そういえば、「『六身合体ゴッドマーズ』よりは原作に近い」という言説もあったんだけど、これもまあ、最終回まで通しての印象として、『ゴッドマーズ』はさすがに例えが極端で(笑)、『バビル2世』の原作とアニメくらいの違いじゃないかと思った。
ドラマから入った人が原作を読んだ感想は、普通にストーリーを追って感動しているものが多いが、中にはこうの先生の仕込んだ様々な「仕掛け」に気づいてくれる人もいると思う。
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