2015年11月に読んだ本2015年12月05日 13時21分18秒

 今月はやや少なめだけど、謎の温泉読書会のためにプリースト『双生児』の読解も並行していたので、こんなものかな。あと、今年のチャレンジだった上橋菜穂子マラソンを概ね完走。

■ジーン・ウルフ『ピース』 国書刊行会
 既に死んでいるらしい主人公が、やはり死者と思われる旧知の人物たちと対話する中から、入れ子的に語られる謎めいた物語。主人公が過去に暮らした全ての部屋に通じる回廊から、生涯における様々なエピソードが語られるが、語られない部分で何があったのか、そもそも語られている内容が事実なのか、あるいは、断片的に挿入される医者の心理テストから誘導された「物語」なのか、あらゆることが判然としない。
 読後にいろいろ連想していて、この物語世界が一種の「地獄巡り」と解釈するならば、ティプトリー「煙は永遠に」、ベスター「地獄は永遠に」などに連なる作品なのかも、と、ちょっと思った。

■上橋菜穂子『獣の奏者III 探求編』 講談社
■上橋菜穂子『獣の奏者IV 完結編』 講談社
 前二部作の後の時代、過去のカタストロフの後、封印されていた王獣と闘蛇の交配、育成技術が徐々に(再)開発されていく。
 物語の前半で純粋な知識欲、知ることの喜びを描写することができた前二部作と比べると、最初から「技術」の負の側面を意識せざるを得ない点で、やや物語のトーンが単調に感じるのは致し方なしか。
 自分がこれまで読んできたもろもろの作品と比べてみた時、封印されたロストテクノロジーを巡るヒロインの物語、という点では、マンガであり、本作とは異なり「魔法」が全面に出た作品となるが、堤抄子『聖戦記エルナサーガ』あたりとも近しいジャンルとは言えるかもしれない。

■レオ・ペルッツ『聖ペテロの雪』 国書刊行会
 病院で目覚めた主人公の記憶の中で繰り広げられる、神聖ローマ帝国再興を夢見る謎の男爵の企みとその顛末記。一方、その記憶は現実だったのか、夢想だったのか?
 ミステリとしてもSFとしても読め、夢と現実が錯綜する重層構造の物語の面白さと、解釈の多様性からくる余韻もさることながら、1930年代執筆のアイデアが古びていないどころか予見性まで備えていた点にも驚き。

■上橋菜穂子『獣の奏者 外伝 刹那』 講談社
 最初の二部作と後半二部作の間をつなぐ外伝2編+α。『守り人』の外伝で語られたレベルまでの重いテーマ性はなく、本編をキャラクター小説として読んでいた読者へのサービス的な側面の方が強いのかな、という印象。

■あずまきよひこ『よつばと!』13巻 KADOKAWA電撃コミックス
 もう出ないかも、と思っていたけど、待っててよかった(笑)。今回は謎の存在だったばーちゃん、とーとつに登場。そしてさりげなくとーちゃんの名前も明らかに(笑)。ばーちゃんがよつばを自然体であしらいつつほどよく教育しているのが楽しい。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://k-takoi.asablo.jp/blog/2015/12/05/7936947/tb