2023年11月に読んだ本2023年12月24日 05時57分30秒

 徐々に電子書籍読書が自分の中で定着しつつある。特に買って読むと本棚を圧迫するので躊躇していたマンガにその傾向が顕著だが、できれば紙で手元に置きたい『ドードー鳥と孤独鳥』のような新刊も読みたい時期にタイミングが合えば電子書籍で買うようになった。
 とはいえ、そうなると始めた頃はなかった「デジタル積読」が発生し始めるのはお約束か(笑)?

11月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:2184
ナイス数:101

ドードー鳥と孤独鳥◾️ドードー鳥と孤独鳥感想
★★★★
子どもの頃、母の実家にいた折、山形市内で背の高い緑色の植物を見て「あれはホップだよ」と教えてもらったというおぼろげな記憶がある。そんな自分が気がつけばホップの香りの論文をたくさん書いたホップ研究者になっている。そんなこともあり、子どもの頃にドードー鳥と孤独鳥に魅せられた二人の少女が長じてその研究や科学記事を書きつつ、新しい発見をしていくこの物語は人ごとと思えずドキドキハラハラしながら読了。このテーマについては著者のノンフィクション版もあるがフィクションを楽しむ上ではこちらを先に読んで正解だったろう。
読了日:11月02日 著者:川端裕人


ハロウィーン (リブロの絵本)◾️ハロウィーン (リブロの絵本)感想
★★★☆
ハロウィンの由来、成り立ちを主人公の男の子が体験して、今のハロウィンにつながる、手のひらサイズのキュートな絵本。カボチャからジャック・オ・ランタンを作るやり方までおまけについている親切設計。
読了日:11月04日 著者:みうら ますこ


日本のブロードウェイ・ミュージカル60年: プロデューサーたちはいかにしてミュージカルを輸入したのか◾️日本のブロードウェイ・ミュージカル60年: プロデューサーたちはいかにしてミュージカルを輸入したのか感想
★★★★
海外のミュージカルの日本における受容のために、初期には舞台まで日本にする翻案から、日本人観客向けのアレンジを施すノンレプリカ、言語以外忠実なレプリカの形式が、輸入しようとするプロデューサーの流儀によってどう変遷してきたのか、膨大な引用と参考文献で解き明かす。明治大学の博士論文が元になっていると言うが、著者独自の検証、考察のプロセスにそれも納得。ノンレプリカで始まりレプリカを指向したはずの劇団四季が『ライオン・キング』のオリジナルの持つ人種的表象のために結果的にレプリカを逸脱している、という指摘が鋭い。
読了日:11月05日 著者:武田寿恵


クリスマスマーケット ちいさなクロのおはなし (日本傑作絵本シリーズ)◾️クリスマスマーケット ちいさなクロのおはなし (日本傑作絵本シリーズ)感想
★★★☆
今年の新作クリスマス絵本。クリスマスマーケットに拾われて、飼い主募集中だった仔犬のクロと、おかあさんと買い物に来た女の子の出会いから、微笑ましいラストまで、ほっこり読める。
読了日:11月11日 著者:降矢 なな


墨のゆらめき◾️墨のゆらめき感想
★★★
なんというか、近年のエッセイ活動と趣味活動が何かに結実したかのような奇想天外な一作。タイトルにある通り書家の物語ではあるのだが、展開のひとつひとつがどこかずれている。けだし怪作?
読了日:11月14日 著者:三浦 しをん


あの頃の青い星1◾️あの頃の青い星1感想
★★★★
海のそばにある高校の寮生活と学校での日常。主人公構本海が偶然の出会いから一目惚れした相手、瀬川晶が、同室の生徒とのトラブルからの部屋替えで海の部屋に越してきたところから始まるソフト百合物語。正確に違う女生徒たちの諍いとかありつつも普通に共同生活をしている関係性の描き方が好感持てる。Kindleの1巻目は54ページと短め。
読了日:11月17日 著者:


あの頃の青い星2◾️あの頃の青い星2感想
★★★★
瀬川晶の近寄りがたい雰囲気の背景、海で人魚に会ったという子どもの頃の記憶から始まり、海で人魚ならぬ海と(子どもの頃と裏返しのように)会い、二人の関係がちょっと深まる。今回も64ページと控えめなページ数だけど、これはこの構成の効果を最大限出すにはいいのでは。
読了日:11月18日 著者:


あの頃の青い星3◾️あの頃の青い星3感想
★★★★
水族館デートの雰囲気がすごくいい。人物も背景もクルマとかも魚たちもシンプルな線だけどマンガで、でもリアルといういいバランスの画風。コマ割りなど演出もいい。水族館で仲を深めてちょっと前進、と思ったら、なんとハプニングからいきなりの告白劇に! 今回はややボリュームアップして98ページだけど、2巻までは2019年でこの巻が2021年なのは、時節柄コロナ禍の影響が何かあったりしたのだろうか?
読了日:11月17日 著者:


あの頃の青い星4◾️あの頃の青い星4感想
★★★★
夏休み、スマホのやり取りに飽き足らなくなって晶のバイト先に行った勢いでお家にもお邪魔するイベントから、逆に晶が海の方を訪ねて夏祭りイベントまで。お互い下の名前呼びになってよきかな。この巻も94ページほど。刊行年の件は、電子書籍化のタイミングが固まってるだけで、コツコツ描き続けていたのかな。3-4あたりは固め打ちで出てる。あと、この巻からの「これまでのあらすじ」がいい味出してる。
読了日:11月18日 著者:


あの頃の青い星5◾️あの頃の青い星5感想
★★★★
季節は秋、文化祭。我が身を振り返ると、自分たちのやることに精一杯で他の人の展示をちゃんと見れなかったり、突然の忌引を知らない先輩に批判されたり、同級生の意外な特技を見て感銘を受けたこととか懐かしく思い出す。友人に押し切られたり、下級生のフォローで晶と約束した海洋研の展示を見に行けなかった海の姿にそんなことを想った。晶は小学生時代のいじめっ子連から隠れたり、上級生の送別会を企画して一人一人の想いは理解しつつも空回りで落ち込んだり、頑張っても報われないあたりがいろいろ「あるある」感。そしてふたりはついに…
読了日:11月18日 著者:


あの頃の青い星6◾️あの頃の青い星6感想
★★★★
表紙の通りの沖縄。今なら修学旅行としてはむしろ定番か。孤立している晶とグループの同級生の温度差とか、この学年のちょっとした諍いありつつも共同生活している不思議な行儀の良さのバランスの理由がさらっと語られてるけど、同じ学校でも海洋研の上級生たちのように関係が決定的に壊れるケースも描かれているので、今の作中のこの学年の空気感も微妙なバランスの上にいるのかな、と思ったり。二人の関係はまたちょっと深まって、晶もいろいろ意識し始めたり…。ここ数巻は年一冊ペースみたいなので、続きは来年くらいには読めるんだろうか。
読了日:11月18日 著者:


薬屋のひとりごと 14 (ヒーロー文庫)◾️薬屋のひとりごと 14 (ヒーロー文庫)感想
★★★☆
ちょっとした謎解きがいくつか。それが前巻のちょっとした謎解きと意外なところでつながって、宮廷内の勢力図にも影響する。蝗害のような長編エピソードのような派手さはないが、後に火種を残して物語が続いていく。妓楼をめぐるエピソードに世代交代を感じてちょっとしんみり。
読了日:11月24日 著者:日向夏


きょうはマラカスのひ (日本傑作絵本シリーズ)◾️きょうはマラカスのひ (日本傑作絵本シリーズ)感想
★★★☆
クネクネさんとおともだちのパーマさん、フワフワさん、というネーミングと絵面がなんとも言えないが、みんなでマラカスを披露しあうという友人関係、その集まりの顛末がまたなんとも言えない(笑)。なんとも言えない味わいの絵本だ(笑)。
読了日:11月24日 著者:樋勝 朋巳


フワフワさんは けいとやさん (日本傑作絵本シリーズ)◾️フワフワさんは けいとやさん (日本傑作絵本シリーズ)感想
★★★☆
今度の主人公はフワフワさん、頭のフワフワの意外な正体?が明らかに!? フワフワさんは毛糸を売ったり、毛糸で編んだものを売ったり、編み物教室をしたり、大忙し。そんなある日…。ちょっとした失敗もあるけど、持つべきものは友だち? じんわりいいお話。
読了日:11月25日 著者:樋勝 朋巳


きょうはパーティーのひ (日本傑作絵本シリーズ)◾️きょうはパーティーのひ (日本傑作絵本シリーズ)感想
★★★☆
今度はクネクネさんに主人公を戻して、お仕事のお話。クネクネさんのパン屋は大繁盛。前巻にも出てきたブティックシマさんの7周年パーティに呼ばれたクネクネさんはとびきりのパンを作って会場に向かおうとするが、風の強い日は危険がいっぱい!? パーティに集まった面々の余興の見開きが楽しくもシュール(笑)。
読了日:11月25日 著者:樋勝 朋巳


超人ロック ガイアの牙 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ガイアの牙 1 (エムエフコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★★
冒頭は帝国時代。人類の発祥の地とされる辺境の星のD弾による処理をひっそり回避させるロック。本編の時代背景は『ホリーサークル』同様の年代不明ながらかなりの後代。危険な感覚キューブの製造者が潜むらしい同じ辺境の星で、その作者ドリームウィーバーとそれを追うロック、さらに帝国時代から鏡の中で時を止めていたエスパーのエピソードが交絡する。
読了日:11月25日 著者:聖 悠紀


超人ロック ガイアの牙 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ガイアの牙 2 (MFコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★★
物語の背後にあったのは帝国の時間庫から持ち出されたエスパー・コントローラーと闇でそれを売買する科学者。この年代のロックはとにかく帝国の傍迷惑な時間庫からたまに出てくる遺物の脅威を取り除くことに専念している。それでも、この地に降り立つのは特別な想いも…。タイトルの「ガイアの牙」は現在の住人たちの信仰の対象でもあるが、黎明期の物語に描かれたあるものの遺跡でもあることが明かされる(ただし,物語そのものには絡まない)。
読了日:11月25日 著者:聖 悠紀

超人ロック ガイアの牙 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ)◾️超人ロック ガイアの牙 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ)感想
★★★★☆
最終章は「ホリーサークル」とも同時並行なのだろう。ミラと活動した時代がおそらく表舞台にいた最後、その後は、普段は農家などに隠遁しつつ、これまでに身につけた能力と退役将校の身分を時折使って、自分の存在や帝国のオーバーテクノロジーの存在を消して、連邦全体の興亡になりそうな事態を回避して回っているのだろう。この巻の出版が2020年なので、最終章のラストがタイトルの「ガイアの牙」で終わるのは、長い長い年表を埋めてきたエピソードの実質的なおしまいといっていい、それにふさわしい光景かもしれない。
読了日:11月25日 著者:聖 悠紀


本の栞にぶら下がる◾️本の栞にぶら下がる感想
★★★★
『黄色い本』すなわち『チボー家の人々』を皮切りに、著者の読んできた本の話が語られるのだが、プロレタリアート文学から朝鮮戦争の前後を挟む朝鮮文学など、書いた人々の意外なつながりが一編ごとに反射しあって共鳴するような一種凄絶な読書録。また、朝鮮の言葉を発音やニュアンス込みで味わう言語と本に耽溺する姿勢は、奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』のロシア語への対峙の仕方にも通じるように思う。なんか、すごいものを読んでしまった。しかし憧れのマンガ家に装丁してもらう、っていいな。
読了日:11月30日 著者:斎藤 真理子

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