2021年5月に読んだ本2021年06月02日 12時46分46秒

 相変わらず絵本成分多め。とはいえ、比較的新刊のケン・リュウ、リサ・タトルなども読めたのでまずまず?

5月の読書メーター
読んだ本の数:29
読んだページ数:2793
ナイス数:98

モリー・ゼロ(Molly Zero)<下>あかは、わるい◾️モリー・ゼロ(Molly Zero)<下>あかは、わるい感想
時間おいての再読(誤字チェック兼)。自分で訳していうのもなんだけど、モリーがロマニーの移動遊園地と旅する第4章は本作の白眉と思う。第5章以降は序盤の展開を手を変え品を変え変奏曲として描く、と解釈でき、ラストの種明かしも、『パヴァーヌ』のテーマの進化(深化)形とも思える。再読の成果として誤字の他、誤訳含めあちこち修正した第二刷を印刷所に発注した。あと、添野さんからもご指摘あったけど、アーサー・ランサムへのリスペクトもあちこち仕込んであるのね。
読了日:05月02日 著者:キース・ロバーツ


日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年◾️日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳この四十年感想
★★★☆
いやあ、もともと興味ある話だけど、素人翻訳とはいえ、難物(笑)の長編一冊訳した後で読むといろいろ赤くなったり青くなったり…(笑)。
読了日:05月07日 著者:田口俊樹


かわいいことりちゃん (くらやみ文庫)◾️かわいいことりちゃん (くらやみ文庫)感想
★★★☆
擬音たっぷりでことりの成長をのんびり追いかける絵本。そのままでもかわいいんだけど、敢えて英訳を付してあるのがまた味になっている。
読了日:05月08日 著者:コナツ マキコ


ウサギ◾️ウサギ感想
★★★★
とある島に突然船でやってきて我が物顔でもともと住んでいた生き物を虐げ、移民、開発を勝手に進めるウサギ。ある意味わかりやすいオーストラリア開発史? とはいえ、言葉も通じない相手になすすべなく蹂躙される不気味さはそんな背景を超えて普遍的に読める。
読了日:05月08日 著者:ジョン・マーズデン


昔日の客◾️昔日の客感想
★★★★☆
昭和の古本屋さんの交友録とも言える軽妙洒脱な随筆集。豪快なエピソードが古い文壇の雰囲気を今に伝える。これは図書館所蔵の復刻版だけど、元の版で手に取って(旧字で)通読してみたくなる。でも、復刻の経緯を見ても、入手困難なんだろうなあ…
読了日:05月11日 著者:関口 良雄


ふゆのくまさん (えほんライブラリー)◾️ふゆのくまさん (えほんライブラリー)感想
★★★
冬、3人の子どもたちが、風邪をひかないようにしっかりと厚着して遊びに出る。ちょっとずつ歳の差もあって、いっしょに同じ遊びをするのでもない、でもお互い目を離さないくらいの距離感でめいめい好きなことをしてるのがリアル。と、末の弟が何か見つけたようだけど…。ほっこり読み終えて表紙を見直すと、ああなるほど、でも、なんでそんなところに?
読了日:05月13日 著者:ルース・クラフト


わたしのおふねマギーB (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)◾️わたしのおふねマギーB (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)感想
★★★
淡い水彩のにじむ感じとか、子どもの表情がリアルで憂いがあるあたりに、ちょっと、いわさきちひろを思い出すけど、細密でありながらデフォルメも効いた画風がなんともいい。幼い姉弟が目を覚ますと専用のお船に。そこで過ごす一日。夢か現か? 出てくる果物やお料理も美味しそう。
読了日:05月13日 著者:アイリーン ハース


カーリーおばさんのふしぎなにわ (あかねせかいの本 6)◾️カーリーおばさんのふしぎなにわ (あかねせかいの本 6)感想
★★★
ひとつ前に読んだ『マギーB』は、絵も文章も手がけた初めての作品、と著者紹介にあったけど、こちらは同じイラストレーターさんの数多いという絵の方を担当した絵品のひとつ。子どもの頃にありがちな近所の謎のおうち、大人の視点で読んでみれば「そりゃそうだよね」という話ではあるんだけど、近所の謎のおばあさんのおうちに飛びこんだボールを取りに行こうとお庭に忍びこんだ3人組のちょっとした冒険。
読了日:05月13日 著者:ルース・クラフト


古くてあたらしい仕事◾️古くてあたらしい仕事感想
★★☆
『昔日の客』を復刊したのは「ひとり出版社」だったのか! 巻末に既刊リストがあるので、普通に読み終えて奥付を見たら、あれ? この本は新潮社の本なのか!? 実は著者の作品紹介だったのか? まあ確かに、この著者はこういう本を自社から出すタイプの人ではないだろうな、とちょっと納得もした。「ひとり出版社」を作ろうとした経緯、運営方針についての熱い想いは、熱すぎてやや胸焼けするかも(その点は新宿のベルク店主の本と近い印象)。とはいえ、先日読んで感じいった『冬の本』もこちらの作品であったと知ってその点も感じ入った。
読了日:05月14日 著者:島田 潤一郎


ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる 紙ものづくりの現場から◾️ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる 紙ものづくりの現場から感想
★★★★
気がつくと見直されていた活版印刷、美術品の分野で地味に大活躍の版画手法などから始まって、製紙工場、伝統の和紙作り、さらに製本、古紙の再生、回収など、本を作るための紙をめぐる現場を、デザイナーの名久井直子さんが興味あるしんしんに、めぐる、めぐる。写真も多くて、読者もその現場のさわりを体験した気持ちになれる。
読了日:05月14日 著者:


宇宙の春 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)◾️宇宙の春 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)感想
★★★★
とうとう4冊目のケン・リュウ短編集。本巻の構成は太平洋戦争時の史実をベースにした収録作の印象、そこに「ドキュメンタリー」形式で物語を語る(テッド・チャンにインスパイアされたとのこと)手法の効果、いつもよりコンパクトなページ数も相まって、統一感のあるアンソロジーになっていると感じる。その「統一感」がポリティカル・フィクション寄りでもあり、なるほど、日本での評価が確立した今の方がふさわしい短編集ではある。
読了日:05月15日 著者:ケン リュウ


くもとそらのえほん (PHPにこにこえほん)◾️くもとそらのえほん (PHPにこにこえほん)感想
★★★
雲の形とその名前がどんどん紹介される。小学生の頃、夏休み自由研究のテーマを雲にして、スケッチに図鑑で調べた雲の名前を描いて提出したのを思い出した。うちにあったのは小学生向けの百科図鑑で、よそのおうちにある大人向けの百科事典がうらやましかった覚えもあるのだが、パラパラめくっていろいろ興味を持つ役は果たしていたっけ。後年、ティプトリーの「最後の午後に」の挿絵イラストの巨大甲殻類モンスターをデザインする参考にも使ったので、その子供心に物足りなかった百科事典、使い倒したとは言える(笑)。
読了日:05月17日 著者:五十嵐美和子


花の神殿―恋人たちの時間 (とびだししかけえほん)◾️花の神殿―恋人たちの時間 (とびだししかけえほん)感想
★★★
タイトルはちょっと恥ずかしいけど(笑)、ページをめくると花開く仕掛けがすごい。
読了日:05月18日 著者:キース・モーズレー


愛蔵完全版 紅い牙 -狼少女ラン- 1◾️愛蔵完全版 紅い牙 -狼少女ラン- 1感想
★★★
『紅い牙』シリーズ、Kindle版大盤振る舞いでまとめてダウンロード。この「愛蔵版」は短編ひとつで巻数ひとつ。久しぶりに読んだけど、時代を感じるとともに、あの時代でなければ描けない熱量も感じる。
読了日:05月18日 著者:柴田昌弘


愛蔵完全版 紅い牙 -鳥たちの午後- 2◾️愛蔵完全版 紅い牙 -鳥たちの午後- 2感想
★★★
『紅い牙』2作目。生活のため校内食堂で学生と同じ年代の少女が働く、というのは、『ガラスの仮面』の序盤の親娘住み込みで働く描写同様、今なら描けない設定(といっても、現代がその描写より貧しい時代になるとは…)かな。重要キャラ、バードとワタル登場。あと、地味に衝撃を受けたのは冒頭で明かされるランの生年月日。1961年生まれ…。還暦古代超人類…?
読了日:05月18日 著者:柴田昌弘


愛蔵完全版 紅い牙 -さよなら雪うさぎ-3◾️愛蔵完全版 紅い牙 -さよなら雪うさぎ-3感想
★★★
短編ひとつずつの愛蔵版、3編目。もう一人のエスパー、イワンの悲恋。これも、日本の閉鎖的な田舎、という設定では、今は描けないだろう。物語もある意味紋切り型だが、日本人のムラ社会の気質は意外とこんなもんだな、と思うと軽く絶望感も感じる?
読了日:05月18日 著者:柴田昌弘


愛蔵完全版 紅い牙 -タロン・闇に舞うタカ-4◾️愛蔵完全版 紅い牙 -タロン・闇に舞うタカ-4感想
★★★
シリーズ4編目にして、ついに本領発揮の死の商人タロン。やや技術の遅れた黒い幽霊団? という印象だが、当時の感覚なら、いかにもマンガっぽい『009』より、ちょっとリアルに感じる効果はあったと思う。それでも、表紙のボスのキャラはシリーズ中最もマンガっぽくて、『ブルー・ソネット』にそのまま登場した時はやや微妙に感じた覚えが…。因みに、ここまでの4編をまとめて初めて出したのは東京三世社で、ハードカバー本。これで人気に火がついて、白泉社でのシリーズ再開、そのあとでマーガレットコミックスが最後まで出たのだ。
読了日:05月18日 著者:柴田昌弘


まじょのデイジー◾️まじょのデイジー感想
★★★☆
森の中にある幼い魔女向けの学校。その生徒の中でもとりわけちびっ子のデイジーが、ほうきで飛ぶ練習をしていて、森の木に落ちてしまう。そこで、なんだかいじわるっぽい声をかけてきたのは…。なんともかあいらしい絵柄と物語。…え? 江國香織『号泣する準備はできていた』の表紙もこの人でしたか!?
読了日:05月19日 著者:植田 真


夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件 上 (探偵ジェスパーソン&レーン)◾️夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件 上 (探偵ジェスパーソン&レーン)感想
★★★
まさかリサ・タトルの長編が今頃翻訳で出るとは! まあ、ビクトリア朝時代を背景にした諮問探偵ものだから、ということではあろうが、かつて出身のSF研がファンジンでリサ・タトル作品を草の根的に翻訳していたこともあり、なんとも感慨深い。上巻の内容はまさにタイトルそのまんま。ロンドンの路頭に迷ってたまたま探偵助手の募集を見つけたヒロインが、巷間噂の霊能者の降霊会や依頼された夢遊病者の入り組んだ事件に巻き込まれていく。
読了日:05月22日 著者:リサ・タトル


大根はエライ (たくさんのふしぎ傑作集)◾️大根はエライ (たくさんのふしぎ傑作集)感想
★★★
こんな絵本あったのか、という教育?絵本。大根の特徴、おいしい食べ方、使われ方をちょっとユーモラスに描く。そういえばこないだの冬はあまりおでん、ぶり大根などの機会が少なかったか。もっと大根食べよう。
読了日:05月22日 著者:久住 昌之


少年探偵団・超人ニコラ (岩波文庫)◾️少年探偵団・超人ニコラ (岩波文庫)感想
★★★☆
シリーズ初期の『少年探偵団』と末期の『超人ニコラ』を、仮名遣い以外は極力オリジナルに近い形で合本にした一冊。年少の読者に語りかける文体が読み進むほどになじみ、思いの外楽しめた。間に、戦中ごろに変名で書いたという乱歩には珍しい科学読み物「知恵の一太郎」からも四篇を収録。ある意味、乱歩の執筆時期を総括するような構成。ラストの種明かしが「なあんだ」的なのは安定?の品質として、序盤からラストギリギリまでシチュエーションの不気味さを維持した『超人ニコラ』は、現代の大人が読んでも十分怖い気がする。
読了日:05月24日 著者:江戸川 乱歩 作


児童文学の中の家◾️児童文学の中の家感想
★★★☆
『ナルニア』や『アリス』のような異世界ものに始まり、リンドグレーン作品の北欧、『赤毛のアン』『若草物語』などの名作劇場的な諸作、アンデルセンなどの童話、ホームズ、ポアロなどのミステリ作品まで、章ごとにテーマを決めて作中に建物や風俗を絵で見せてくれる一冊。ここ数年で読んだ本も多く、楽しめた。
読了日:05月29日 著者:深井せつ子


めだまとやぎ◾️めだまとやぎ感想
★★★
にしかなこ、って、あの西加奈子!? プロフィールからすると間違いない。え? 絵もご本人!? タイトルも謎だが、いっしょに住んでいたおじいさんの目がくしゃみした拍子にどこかに飛んでいって、それをくろやぎさんとしろやぎさんが世界中を探しにいくという謎の展開!? でも、このやぎさんたちはお手紙を食べずにちゃんとおじいさんに出すのだ(笑)。しろやぎさんは手紙食べたそうにしてるけど、代わりに別のもの食べちゃうけど(笑)。
読了日:05月29日 著者:西加奈子


しりとり (安野光雅の絵本)◾️しりとり (安野光雅の絵本)感想
★★★★
いろいろなものの絵が安野光雅タッチでページ狭しと描かれている、説明をきちんと読まず、まずは描かれたイラストの味わいを楽しんで、え? でも、何がしりとり? と思ったら、見開きの絵の中からひとつ選んで、次の見開きに描かれた絵でしりとりをしていく、という趣向、ラストページは「ん」で終わるもののイラストが6つだけ。この6つにしりとりが繋がらなかったら、最初からやり直してね、という趣向。なるほど、これは楽しい。巣ごもり向けかも。
読了日:05月29日 著者:安野 光雅


夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件 下 (探偵ジェスパーソン&レーン)◾️夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件 下 (探偵ジェスパーソン&レーン)感想
★★★☆
いかにも怪しそうな霊能者が本当に怪しいんだけど、その怪しさの正体が…。なるほどそうきたか! しかも、ラスト、次の事件に続く…。しかし、この上巻と下巻の間に読んだ少年探偵団シリーズと味わいが近い感じで、意図せず、違和感のない読書になった。
読了日:05月29日 著者:リサ・タトル


みんなのおすし◾️みんなのおすし感想
★★★
お寿司屋さんのカウンターを見開きの真ん中に、左にお寿司屋さん、右にお客さんのレイアウトは固定。お客さんの注文をきくごとに、準備してあったネタがその分減っていく。途中から、仕掛け絵本でやってきたお客さんの食べている姿を見せる趣向になるのだが、次々にやってくるお客さんがちょっとずつグレードアップ?していって…。ラストまで手に汗握る? お寿司屋さんの一日のお仕事。
読了日:05月29日 著者:はらぺこめがね


みなとまちから◾️みなとまちから感想
★★★☆
船で遠い町にたどり着く始まり方は、ちょっと安野光雅『旅の本』を連想する。表紙にある通り、全体に雲は灰色、今にも雨になりそうな…。雨宿りの喫茶店でちょっとうとうと…。そんな町での出来事を手紙に書いて友だちに…。
読了日:05月30日 著者:nakaban


とおいまちのこと◾️とおいまちのこと感想
★★★☆
二人の絵本作家がお互いに文章と絵の担当をバトンタッチするという珍しい趣向のペア。『みなとまちから』手紙が届くその先にいるのは…。相手のいるところのページだけ、出てくる絵でふたつの町がつながる瞬間が楽しい。もちろん、読む順番はどちらからでもいい。ペアの絵本を収める箱の装丁も楽しい。
読了日:05月30日 著者:植田真


百人一首 うたものがたり (講談社現代新書)◾️百人一首 うたものがたり (講談社現代新書)感想
★★★★☆
今はなき講談社の「本」で連載の中盤くらいから、「本」が本屋で入手できた時だけ読んで、本にまとまったら絶対買う、と思い詰めた一冊。連載時は一回に4首だったが、新書では一首を見開き2ページで解説する。ベテラン歌人の著者の博覧強記ぶりと、歌人としてのパッションがわずかなページに炸裂する。そのあたりは、想いを限られた文字数に凝縮する短歌に通じるところもあるのかも。ページ数はコンパクトながら、一気読みできる密度ではなく、出てすぐ買ったけど、やっと読了。何度でも読み返したい。
読了日:05月31日 著者:水原 紫苑

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