2020年10月に読んだ本 ― 2020年11月01日 10時00分29秒
一方で、(まだ校正もれいくつか見つけちゃったりはしてるんだけど(笑))ファンジン関連の「読む」作業は終わったので、読書はやや進み気味。
で、北村薫の比較的新刊を読んでいたら、リミッター解除? の文芸小ネタの嵐に頭くらくら…。とはいえ、『モリー・ゼロ』の翻訳で調べものの沼にハマった身としては、達人には遠く及ばぬものの、じっと手を見る(笑)。
10月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:2707
ナイス数:107
◾️大家さんと僕 これからの感想
★★★
大家さんとの日々が静かに語られて、幕をおろす。大家さんのお話の中に、疎開や空襲などの戦中や、戦後にかけての都内の生活がほの見え、そのあたりは「もうひとりのすずさん」的にも読める。マンガとしての演出も1作目より詩情を感じさせる。
読了日:10月04日 著者:矢部太郎
◾️薬屋のひとりごと 6 (ヒーロー文庫)の感想
★★★
干し芋が美味しそう(笑)。久しぶりに食べたくなった。一方、今回の主筋は本シリーズには珍しい?「ごちそうさま」的フツーのロマンス。あと、精神的にも肉体的にも不感症?かと思われたヒロインの意外な弱点(笑)。
読了日:10月09日 著者:日向 夏
◾️薬屋のひとりごと 7 (ヒーロー文庫)の感想
★★★☆
主人公がちゃんと受験勉強させられて医官付き女官として勤務することになって新展開。新登場の同僚女官コンビがいい味出している。一応、これまでの続きでアルピノの巫女をめぐるミステリだが、久しぶりに一冊ものとしてのミステリとしてよく練り込まれていた印象。異世界ではあるものの、超常現象やオーバーテクノロジーはないので、あくまでもミステリ、という立ち位置が改めて潔いかな、と思った。
読了日:10月11日 著者:日向 夏
◾️そこに山があったとしても (楽園コミックス)の感想
★★★★
そうなんですよ。桑田乃梨子の、不思議なことが何も起こらない学園ものがすごい好きなんですよ。これですよ、これ。
読了日:10月11日 著者:桑田乃梨子
◾️モリー・ゼロ(Molly Zero)<上>みどりは、よいの感想
キース・ロバーツの長編、苦節?一年半ほど格闘して、なんとか訳しました。全6章を二分割した上下巻には、作中〈幼稚舎〉時代にモリーの受けた二択テストの回答をもとに巻タイトルを付してみましたが、内容にハマっているので、作者が物語とこの設問、回答に込めた意味、意図がちょっとわかった気がします。
ファンジン版限定版権を取得したファンジンの頒布はリンクにて。
読了日:10月16日 著者:キース・ロバーツ
◾️モリー・ゼロ(Molly Zero)<下>あかは、わるいの感想
まさか自分が訳したファンジンの感想を読書メーターで読めることになるとは…読んでいただいた方々に感謝。さて、下巻に入ると、物語は第1章の授業で〈シミュレーション〉としてモリーが見せられていた内容に近い現実を、自身で体験していくような展開。全体を通してみると、物語が対称構造を意図しているようにも思われてくる。また、本作の最大の特徴である二人称の効果を確認すべく、巻末にちょっと実験の補章を付しています。版権ありファンジンの頒布(上下巻セット)はリンク先にて。
https://itonatto.booth.pm/
読了日:10月16日 著者:キース・ロバーツ
◾️ドリトル先生アフリカへ行くの感想
★★★★
子供の頃縁がなく、初めて読んでみたドリトル先生。こういう物語だったのか! 動物とお話しできる、というけど、通訳役のオウムを介して、それぞれの動物の言葉をちゃんと学習で身につける、タイトルのアフリカ行きの理由はサルに蔓延した感染症への対策。その対策も予防薬と患者の隔離と地に足がついてる。犬がにおいでもの探しする時、風が湿っていた方がいい、って、人間が検出器になる匂い嗅ぎGCのノウハウと一致するし、そう思うと犬の人探しも意外と科学的な捜査っぽい。こういう考え方とかに子供の頃から触れておくのは重要かもしれない。
読了日:10月16日 著者:ヒュー ロフティング
◾️佐野洋子 あっちのヨーコ こっちの洋子 (コロナ・ブックス)の感想
★★★★
知らなかったことたくさん。駿府城の城内の小学校に通ったのか! それに清水西高出身! あと、出産で自動的に母性本能が身体で発現する様を客観的に言葉にしているのがすごい。未発表の絵や、いろいろな人から見た佐野洋子像が興味深い。
読了日:10月18日 著者:
◾️サキの忘れ物の感想
★★★★
エッセイや書評が味があって面白いので気にはなっていた津村記久子、初めて読んだ短編集は、日常、ちょっと気になるあんなことやこんなことをモチーフに、それを細部に細部に入り込んでいき、世界の全体はむしろあえて描かないような作風かな、と感じた。その中でも、表題作は細部=狭い世界だけを視界に入れていたヒロインの閉塞感が「本」を知ることで広がるのが暖かい読み味。とはいえ、基本的には細部だけに突っ込んでいくことで奇妙な味の短編になっているものが多くて、エッセイで予感した通り好みの作風。アドベンチャーゲーム短編も楽しい。
読了日:10月21日 著者:津村 記久子
◾️薬屋のひとりごと 8 (ヒーロー文庫)の感想
★★★
いきなり囲碁大流行、ってなんですか、一方、ちゃんと序盤から伏線を張ったミステリ展開はいつもの構成…と、思わせておいて、ラストの怒涛の?展開。それにしてもまあ、この設定の想定文明レベルで納得感のある科学、化学、薬学ネタはやっぱりお見事。そのあたりの馴染み方は、実は(一部にオーバーテクノロジーを感じさせる)『鹿の王』あたりより違和感ないかも。
読了日:10月26日 著者:日向 夏
◾️ベスト・エッセイ2020の感想
★★★★
前にテーマ別に編集されたエッセイ集『ビール』を読んだ時にも思ったが、全部別の著者のほんの数ページのエッセイが、この目次の順番で読むことで、何かが緩やかにつながったり、全体として何かを感じさせたりする。個々のエッセイもそれぞれに意外な発見や、著者ごとの技、味が感じられてよいのだが、トータルとしては、優れたアンソロジーの仕事を体感した。
読了日:10月31日 著者:日本文藝家協会
◾️雪月花: 謎解き私小説の感想
★★★★
とうとう「わたし」にも「中野のお父さん」にも仮託しない私小説に行き着いた。その分、取り留めなくも、投入された文芸ネタの情報量、密度、広範さに頭くらくら(笑)。あと、ちょうどザッピングで読んでいた『ベストエッセイ』に、近いネタがあってシンクロニシティを感じたりもした。考えてみると、こういう作家のエッセイとかは北村薫の文芸ネタの一次資料に将来なるのかもなあ。
読了日:10月31日 著者:北村 薫
読書メーター
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