2021年6月に読んだ本2021年07月04日 16時13分06秒

 引き続き絵本比率高めながら、『三体III』は読んだ。その後で『ヤマトという時代』を映画館で観たら、ビジュアルイメージとか、異星文明とのコンタクトとか、物理法則の無茶な取り扱いとか、実はリメイクシリーズの『ヤマト』って、共通項ありそうに思った。一種の収斂進化か? そう考えると、日本人が作るものが大戦時代の遺物から宇宙につながる物語なら、中国における物語が文革から始まるのも、実は近いところあるのかな、とか思ってみたり。

6月の読書メーター
読んだ本の数:23
読んだページ数:2842
ナイス数:111

おたんじょうびのおくりもの◾️おたんじょうびのおくりもの感想
★★★
取っておいたおいしいりんごを、お誕生日のプレゼントにしよう、あれ、でも、ここにおいたはずなのに…。わすれんぼのわらしべ長者、みたいなお話。初版が1984年とのことなので、かくれたロングセラー?
読了日:06月02日 著者:村山桂子


こぐまのカブ おつかいへ◾️こぐまのカブ おつかいへ感想
★★★
家族にお買い物を頼まれたこぐまのカブ。お買い物を復唱しながら歩く…って、普通『やかまし村』のお買い物のエピソード思い出すじゃないですか。で、絵本にありがちな忘れものジャンルと思って読み進めると、あら不思議、すごく順調にお買い物が進んでいく…。ごめん、こちらの心が汚れていたよ…。ちなみに、「こぐま」で「カブ」なので、今検索すると検索結果の画面に『スーパーカブ』が並びます(笑)。
読了日:06月02日 著者:牛窪 良太


岩泉舞作品集 MY LITTLE PLANET(マイリトルプラネット) (小学館クリエイティブ単行本)◾️岩泉舞作品集 MY LITTLE PLANET(マイリトルプラネット) (小学館クリエイティブ単行本)感想
★★★★★
まさか今頃になって岩泉舞をコミックスで読めるとは。しかも、以前1巻限りに終わってしまった短編集には未収録だった短編の再録から新作描き下ろし表題作までを修正した完璧版。未収録作はおそらく雑誌印刷からの収録らしいのは残念だけど、切り抜きで持ってなかった作品も読めてよかった。しかも最新作、タッチがクリアに洗練されつつ、一級のアイデアストーリー。これを機会に細々とでも新作を描き継いでもらえるとすごくうれしい。なので、昔読んでた人も、初めての人も、どんどん買って欲しい。
読了日:06月04日 著者:岩泉舞


ちいさなライオン◾️ちいさなライオン感想
★★★
こどもライオンの写真にジャック・プレヴェールが文章をつけた異色の絵本。動物園を逃げ出したこどもライオンのちょっとした冒険? 解説によると、同じ写真の絵本がもともと別にあったらしく、そちらも気になる。
読了日:06月04日 著者:ジャック・プレヴェール


本屋のラク〜9回生きたねこのはなし〜◾️本屋のラク〜9回生きたねこのはなし〜感想
★★★
100万回ならぬ、9回生きたねこのお話。本屋ならぬ図書館ネタで、猫には九つの命がある、という小説もあったけど、こちらはあんなコワイお話じゃないので大丈夫。
読了日:06月04日 著者:くどう かずし


海のアトリエ◾️海のアトリエ感想
★★★★
子どもを子ども扱いしない、対等に扱う相手との交流というのは、なかなか得難い体験。かつて、そういう体験をしたことを、孫娘に語り聞かせる…と、いっても、このおばあちゃんの子ども時代って、今50代の自分たちよりちょっと上くらいだよね。まあ、むしろその年代だけに、そういう年長者は少なかっただろう。いろいろ考えさせられ、心に残る一冊。
読了日:06月06日 著者:堀川理万子


クララとお日さま◾️クララとお日さま感想
★★★
世間的にはAIテーマとか、新しめのことをいろいろ言われそうな作品だが、読んでいる間感じたのは懐かしさ。これは手塚治虫ではないのか。とりわけ、『火の鳥』復活編を思い出した(『鉄腕アトム』要素もあり)。AIの視点で学習が進む効果を描くあたりも、ニトロプラスのゲーム『HELLO WORLD』あたりのねちっこさを知っているとやや淡白にも感じる。とはいえ、読後感含め、良作。再読に耐えると思う。
読了日:06月06日 著者:カズオ イシグロ,土屋 政雄


ねむいねむいちいさなライオン◾️ねむいねむいちいさなライオン感想
★★★
なるほどこれが『ちいさなライオン』のもうひとつのバージョンか。文章が少なくシンプルで、こちらの方がより絵本らしい仕上がり。写真は同じものもあるけど、順番が違っていたり、どちらかのバージョンにしかない写真もあるようなので、比べて読むと何倍にも楽しめる。
読了日:06月06日 著者:マーガレット・ワイズ ブラウン


三体III 死神永生 上◾️三体III 死神永生 上感想
★★★★
前に智子ファンアートというのを見せてもらったことがあったけど、智子が本当に智子だったのでひっくり返った(笑)。それにしても、時代は面壁計画の頃まで遡るところから始まって、あとはジェットコースターのように二転三転…。第二部まで終わったところで、第二部まで「だけ」で「これ」ですか、と、思わず呟いた。しかし、植物の種は…さよならすべての???
読了日:06月09日 著者:劉 慈欣


パンダのパンだ◾️パンダのパンだ感想
★★★
パンダのパン屋、というある意味ベタなネタだけど、日替わりのパンとそれに合った?動物のリアクションが楽しい。あと、背景かと思っていたカレンダーや掲示板がちょっとしたストーリーに発展していくのもまた楽しい。
読了日:06月15日 著者:牛窪 良太


死ぬまでに行きたい海◾️死ぬまでに行きたい海感想
★★★★
著者本人が撮影した写真を添えて語られる小さな旅の数々。時には、気になっていたけど降りたことのなかった駅、時には昔住んでいた土地、町。いつものエッセイのように、淡々と起こっていることを書いている中に、偽りの記憶や虚構が渾然と入り組み始め……と、思ったけど、もしかして著者の視点になってみれば、語られていることはすべてリアルなのかも。天然の語り/騙り手、ナチュラル・ボーン・クリストファー・プリースト!? 文章だけでも現実遊離感半端ないが、写真というリアルが添えられることで現実の境界がさらに揺らぐ。最高傑作かも?
読了日:06月15日 著者:岸本 佐知子


神様のいる街◾️神様のいる街感想
★★★☆
著者の自伝的なエピソードが散文的に語られる。加えて、架空のホテルメモ帳(父親に頼んで作ってもらったとか)に書きためてあった散文を本にしたものの、原本が失われていたという幻の処女作をメモの体裁を再現して収録する趣向が楽しい。なるほど、こういう不思議な、レイアウト、装丁に凝りまくった本は、ここから出るのがふさわしいのか。
読了日:06月17日 著者:吉田 篤弘


チョコレートのおみやげ◾️チョコレートのおみやげ感想
★★★☆
お母さんの妹にあたるおばさんに神戸を案内してもらった小学5年生の女の子。帰途、お土産に買ったチョコレートを食べながら、おばさんは風船売りとにわとりの不思議な話を語り始める。言葉のキャッチボールから、やがて物語のキャッチボールに広がっていくのがほっこりする一冊。
読了日:06月18日 著者:岡田 淳
ヴォドニークの水の館◾️ヴォドニークの水の館感想
★★★
チェコに伝わる水妖ヴォドニークをめぐる物語。19世紀にドイツ語で出版されたチェコ民話集が150年近い時を経てチェコに戻ってきた、その中から選んだ一編とか。貧しい少女が水妖の気まぐれで命を救われ、水底の屋敷で掃除の仕事をすることになるが…。全身みどりのヴォドニークはチェコ版カッパ!? 前に読んだイタロ・カルヴィーノ『梨の子ペリーナ』と同じ、世界のむかしばなし絵本のシリーズとのこと。他のシリーズも読んでみたくなる。
読了日:06月18日 著者:まきあつこ


薬屋のひとりごと 11 (ヒーロー文庫)◾️薬屋のひとりごと 11 (ヒーロー文庫)感想
★★★☆
元々の展開、シチュエーションが平時でない中、波乱の展開はある程度予想されたとはいえ、そのさらに上をいく政変展開。なるほどといえばなるほどだが、まさかあのキャラが…。農学系としては、小麦の栽培化の過程の自然変異の桿長、穂からの種子の脱落の度合いなどを経験的に選抜する(品種改良の萌芽)とか、連作障害の有無とか、そういう蘊蓄の滑りこませ方が相変わらずうまいと思う。
読了日:06月22日 著者:日向夏
小惑星ハイジャック (創元SF文庫)◾️小惑星ハイジャック (創元SF文庫)感想
★★★☆
いわゆるオールド・シルヴァーバーグの時期に変名でエースダブルに書いた小品が今頃新訳! 訳者の思い入れたっぷりのこういう翻訳もたまにはいいじゃない? シンプルかつ短いながら、スピード感、エスカレーション感がなかなか。これ、ボリュームアップさせたらワイドスクリーンバロックになりそうなネタを無造作にエースダブルに使い潰してる感じ? オールドだっていいじゃない(笑)。
読了日:06月23日 著者:ロバート・シルヴァーバーグ


三体III 死神永生 下◾️三体III 死神永生 下感想
★★★★
なるほど、三体艦隊に人類を送り込もうという「階梯計画」から始まって、別の意味の(壮大な)「階梯」に至る。第一作で描かれた智子による干渉すら、この展開に至る伏線にもなっている。とにかく、次から次に繰り出されるアイデア、その喚起するイメージの奔流。流された先では滝になっていたり…(笑)? なるほど、SFは技術ではなく世界そのものをモチーフにするものなのだ、という作者のポリシーが実感できる。解説で予告されているスピンアウト?も楽しみだ。
読了日:06月26日 著者:劉 慈欣


ねんね◾️ねんね感想
★★★
いろんな動物のねんねの写真の絵本。かあいい。
読了日:06月26日 著者:さえぐさ ひろこ

空からのぞいた桃太郎◾️空からのぞいた桃太郎感想
★★★☆
上から俯瞰した桃太郎。とにかく、俯瞰した全景が緻密で細部に遊びがある。とはいえ、鬼退治の理由も説明がなく、俯瞰で見ると穏やかな日常を過ごしていた鬼たちが一人残らず地に伏した有様を見ると、ただの大虐殺、お宝強奪に見えなくもない描き方が、淡々と恐ろしい?
読了日:06月26日 著者:影山 徹


タンタンタンゴはパパふたり◾️タンタンタンゴはパパふたり感想
★★★☆
ペンギンのオスとオスのカップル、飼育員さんの心遣いで、他のカップルが産んだ卵を温めて、やがて娘が生まれる。実話ベース、ってのにはびっくり。
読了日:06月26日 著者:ジャスティン リチャードソン,ピーター パーネル


ちいさな島◾️ちいさな島感想
★★★★
ちいさな島の四季のうつろいをめぐり、来ては去る鳥、動物、魚、昆虫たち。時には人や飼い猫が立ち寄ることも。ざっくりしたタッチだけど動物の特徴がよく出た絵とともに、ちょっとした図鑑的にも読める一冊。1940年代に描かれたとのことだけど、エバーグリーンな絵本と言えそう。
読了日:06月27日 著者:ゴールデン マクドナルド


ブックデザイナー・名久井直子が行く 印刷・紙もの、工場見学記◾️ブックデザイナー・名久井直子が行く 印刷・紙もの、工場見学記感想
★★★
印刷、紙に関する見学記の最新刊。今回も紙作りから始まり、製本、物流(取次)まで、上流から下流までの構成になっているが、顔料、インキの現場が加わることで化学工場の要素が強く出た内容になり、個人的には親近感。ご年配の職人さんの話がやはりウェイト高いものの、意外な分野がしっかり後進育成していたり、分野によっては本以外の製品できちんと産業として自立していたりするのが興味深い。あと、神保町の和綴屋さんは、狭い路地にあるあそこですね。
読了日:06月29日 著者:


わかつきめぐみ迷宮探訪 (Treasure Album)◾️わかつきめぐみ迷宮探訪 (Treasure Album)感想
★★★☆
なんと、わかつきめぐみ40周年記念本とな。何もかもみな懐かしい。大学時代は手書きファンジンやイラスト、カットに多大な影響を受けた。その最たるものがほとんど一人で手書き、手描きで2年かけて作ったコンベンションアフターレポート。自分はその後、手仕事からDTPになって久しいが、40年アナログ画業を続けられていることに心からの敬意を。描き下ろし新作番外編は二つともキャラの画風はともあれ、当時の雰囲気を感じさせて懐かしい。新作もいつも通り。このまま50年、60年を目指してほしい。
読了日:06月30日 著者:わかつき めぐみ

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