2016年1月に読んだ本2016年02月14日 13時31分19秒

 年末年始もあったので、ちょっと読書が進んだ感じ?

■『書き下ろし日本SFコレクション NOVA+ 屍者たちの帝国』 河出文庫
 いわずとしれた『屍者の帝国』トリビュートの書き下ろしアンソロジー。年末に読むつもりで仙台の書店で大晦日に購入。ほぼ一気読み。
 SFリテラシーだけでなく文学リテラシーとか映画リテラシーとかを、様々なレベル感、階層で複合的に要求されるちょっと知的なシェアードワールド、みたいな感じ?
 …と思って読んでいくと、予想の斜め上を行く、単なる同じ世界設定のシェアードワールドを超えた、各著者の持てる技巧と思考実験の粋を凝らした贅沢な一冊。世界の枠組みによる影響もあろうが、作品間で一部共通するモチーフやアイデアにより本編より世界観がヴァージョンアップされている感じもいい。

■クリストファー・プリースト『伝授者』 サンリオSF文庫
 今年の実家本棚発掘。このところ脳みそをプリーストがぐるぐるしてるので、こちらをチョイス。
 大学時代に読んで四半世紀以上、完璧に内容を忘れ切っていたけど、ニューウェーブっぽい収容所描写から終末テーマの時間SFに展開する飛躍ぶりで、読み応えあり。(訳文は大学時代の印象ほど悪くもなかったけど、校正ミスじゃないと思われる気になる箇所は多数)
 プリースト的には珍しく辻褄の合ったSFだが(まあ、初の長編だしね(笑))、ニューウェーブ短編二つを下敷きにしていて、解説によると実は本人は「全ての謎を解きたくはなかった」とか(笑)。

■桜庭一樹『GOSICK PINK』 角川書店
 桜庭一樹ライトノベル時代の人気シリーズの新大陸編3冊目。
 前2作、REDとBLUEは旧シリーズを知らずに読んでもそこそこ読める感じになっていたと思うが、今回は旧シリーズを読んでいないとわからない設定がてんこもりで、そのあたりを知らないと、いろいろと話に入っていけない感じがする。
 あと、オカルト要素はあってもいいんだけど、今回は謎解きがすっかりオカルト寄りでミステリの文法じゃないあたりもちょっと気になった。

■桑田乃梨子『スキップ倶楽部』1巻 新書館ウィングスコミックス
 桑田乃梨子には「放課後にねこ(やどうぶついろいろ)とじゃれあう」という設定のマンガがいろいろあるが、またしてもそのバリエーション。とはいえ、1回ごとのページ数が短くて(WEB連載のため?)テンポよく読める。
 近所の女子高の名前が見覚えあるなあ、と思ったらその女子校の生徒として『箱庭コスモス』のキャラもちょこっとゲスト出演。

■吉田秋生『海街Diary 7 あの日の青空』 小学館flowersコミックス
 4姉妹それぞれの恋愛がまとめてうごく第7巻。しかし、LINEらしきものとかスカイプらしきものが普通に使われているが、今では姉妹編の位置づけになった『ラヴァーズキス』と時代設定がずれてきているのでは…(まあ、シリーズ序盤とも時代がずれてきているともいえるので、あまり気にしなくてもいいんだろうけど(笑))
 あと、描線が繊細な方向にシフトしてきていて、もしかして、吉田秋生史上、いちばん乙女チックな画風になってきているのではないか。

■ロード・ダンセイニ『ウィスキー&ジョーキンズ』 国書刊行会
 ウィスキー・ソーダを飲みながらほら話を披露するジョーキンズのシリーズ短編を選りすぐった一冊。収録短編のセレクトと配置が絶妙。
 ベスト一つ、というと悩ましいところだが、今の気分では「ライアンは如何にしてロシアから脱出したか」を選びたいところ。「アフリカの魔術」の脱力感とか、「ジョーキンズ、馬を走らせる」の大法螺と儚さの両立も捨てがたい。
 …ということで、恒例のtwitterキャンペーンに申し込んだら、初めて当選! 豆本ジョーキンズいただきました!

■鈴木明子『プロのフィギュア観戦術』 PHP新書
 いわずとしれた情熱のスケーター鈴木明子が語るフィギュア観戦ガイド。なんというかスケーティングと同様、パッションがあふれまくっている。読んでいて、ところどころ目頭が熱くなったり。
 以前出た荒川静香の同様の新書のタイトルが『誰も知らなかった 知って感じるフィギュアスケート』だったのだが、内容と語りのトーンからは、この2冊のタイトルは逆の方がふさわしいように思う。
フィギュア選手の舞台裏を主に読みたい人は本書を、フィギュアのテクニックについての解説をしっかり読みたい人には荒川静香の新書の方をオススメしたい。

■池波正太郎『江戸の味を食べたくなって』 新潮文庫
 池波正太郎が愛した江戸の味をテーマとして、季節にまつわる食エッセイに加え、後年、東京より江戸の雰囲気を残している、として愛したというフランスの旅行エッセイや、その旅行から派生した短編小説などを落ち穂拾い的に集めたエッセイ・作品集。
 編者の意図の通り、第一部の味の歳時記から第三部のフランス旅行記まで一貫した主張は感じられるものの、同じエピソードを複数のエッセイと小説で何度も繰り返される第三部の構成はちょっと冗長に感じる。