2020年11月に読んだ本2020年12月01日 20時46分09秒

 キース・ロバーツ『モリー・ゼロ』の通販の初動の発送が落ち着いて、ほっと一息。SFファン交流会後の雑談(例会?)タイムでの紹介と、同日のSFおじさんズでイギリスSF映画にからめて取り上げてもらったりしたおかげさまで、今月もコンスタントに頒布中。ファンジンの頒布(上下巻セット)はリンク先にて。

11月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:3394
ナイス数:90

薬屋のひとりごと 9 (ヒーロー文庫)◾️薬屋のひとりごと 9 (ヒーロー文庫)感想
★★★
今回は旅の片道。いつも通り、ちょっとした謎解きはあるものの、シリーズ全体としての本筋を左右するような大ネタはなし。とはいえ、この世界の医学のあり方がかなりエグく描かれ、その他の設定も含め、今後のストーリーが大河ドラマ的に長く続きそうな感じになってきた。しかし今後は、次巻の出版までに設定や過去のいきさつを全部覚えていられるか、という懸念もあるかも?
読了日:11月04日 著者:日向夏


ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)◾️ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)感想
★★★
情けない男が、庭にいつのまにか現れたコレジャナイっぽいデザインのロボットを直すためにイギリスからアメリカへ、日本へ、さらにはパラオにまで旅しちゃうロードムービー的教養小説。演劇化されるというニュースをテレビで観て、読み始めて、なるほどこれは舞台の上で演じられるのにいい感じだなあ、と思った。
読了日:11月06日 著者:デボラ インストール


ユーカリの木の蔭で◾️ユーカリの木の蔭で感想
★★★★
月をまたいだけど、前に読んだ『雪月花ー謎解き私小説』の短ページエッセイ版!? 一応「小説」的なつながりがあった『雪月花』よりもさらに小ネタなのだが、それでもたった3ページにどんだけネタぶっ込んでるの、という印象。特に、雑誌掲載などの広く読まれた対談など、全集や文庫で読めるものではわからない話を、種々の全集の月報や、時には現物が活字になっていない伝聞の原典を芋づるのように手繰っていく過程を生で読めるのが楽しい。とはいえこの読書量と記憶力にはあらためて感嘆。これでは真似しようという気にもならずいっそ清々しい。
読了日:11月07日 著者:北村 薫


赤毛のアン◾️赤毛のアン感想
★★★★★
本書のために作品を選定し、魅力的な絵をつけた安野光雅氏も、この岸田衿子訳の存在を知らなかったという。1969年に学研の少年少女世界文学全集のために訳されたもの。アニメ『赤毛のアン』の主題歌等の作詞が岸田衿子氏なのは、こういう背景もあったのか、と、感じ入った。この歳で読むと、子育てをしていない人間でも、マリラやマシュウの気持ちで読んでしまい、なんでもないところで落涙することもしばしば。この後は、松本侑子氏の完訳・注釈版を読む予定。
読了日:11月08日 著者:ルーシイ=モード=モンゴメリ


この本を盗む者は◾️この本を盗む者は感想
★★★
パブリックイメージと言える『戦場のコックたち』あたりのリアルで重めのテーマをあつかう作品の読者が読むとびっくりするかもしれないが、これはまた『分かれ道ノストラダムス』の方向性に近いジュブナイル路線。文字なら本だけでなくチラシや何やらも読まずにいられなかった書痴の曽祖父の末裔だけど、ある理由で本嫌いになっていた少女が、本を読む気持ちを取り戻していくまでの、ほんの数日の冒険の物語。
読了日:11月14日 著者:深緑 野分


アフター・ロンドン 上◾️アフター・ロンドン 上感想
★★★
人の手による管理がなくなることで国土も生態系も変貌し、残された人々は文字も喪い、飛び地のような領土で知識を有する一部の貴族が奴隷を支配する英国。貴族社会に居場所のない若者が領地を離れ未知の探求に向かう。19世紀の小説らしい堅苦しさもあるが、続きが気になる。キース・ロバーツが愛した英国作家の代表作の邦訳がこのタイミングで読めるとは、一種のシンクロニシティ!? 後の展開ではジプシー(ロマニ)も出てくるらしく、『モリー・ゼロ』の設定や展開の一部は本作へのオマージュなのかもしれない。続刊にも期待。
読了日:11月15日 著者:リチャード・ジェフリーズ


真鍋博の世界◾️真鍋博の世界感想
★★★★
展覧会そのものにはいけないものの、図録は入手可能。絵描きからスタートしつつ、イラストレーター、デザイナーとしての活動を広範に行なった、というキャリアの点では日本のシド・ミード、的な見方もできるのかも、と、ちょっと思った(作風は全然違うし、活動分野もだいぶ違うけど)。
読了日:11月15日 著者:


森のノート (単行本)◾️森のノート (単行本)感想
★★★★
まずサブタイトル、次に子どもや動物のイラストが見開きで配置。ページをめくると、見開きでエッセイらしき文章。その繰り返し。サブタイトル、文章とイラストには一見関連なさそうだけど、なぜこの文章に付されるのがこの絵なのか、と考えることで想像が広がる感じ。東京の自宅と森の家を行ったり来たりする生活の中で、ふと観察したことが語られるが、時に「生」や「死」を身も蓋もなく素描するような一文もあってみたり、時に、現実と空想の境が曖昧になる瞬間があってみたり、イラスト集でもエッセイ集でも詩集でもあるとおもえる不思議な一冊。
読了日:11月17日 著者:酒井 駒子


100文字SF (ハヤカワ文庫JA)◾️100文字SF (ハヤカワ文庫JA)感想
★★★☆
Twitteでコツコツ投稿されたほぼ100文字の超短編。これまでも独自のほぼ正方形の装丁で出たりもしていたけど、中身も表紙もあらすじも(帯の推薦文も(笑))みんな同じ形式で、潔くイラストもなし。それでいて、ミニマムだからこそ提示された100文字から広がる世界観を空想できる。一気読みするより、見開き読んでは空想する、を繰り返して、時間かけて読んだ。たまに日常エッセイやあとがき、解説っぽい作品も挟まるけど、それすらも想像の余地でSFに。続刊希望。
読了日:11月23日 著者:北野 勇作


ベスト・エッセイ2016◾️ベスト・エッセイ2016感想
★★★★
一編一編の面白さとアンソロジーとしての構成の妙が堪能できるシリーズ。どなたかが亡くなった追悼文もあり、その後物故された方の文章もあり、そういった感慨もあるが、今回は百人一首関連の一文が三つほど要所要所に配置。清原元輔、紫式部、藤原定家がそれぞれの切口で語られているが、一首だけ採られた歌の背後にあるものが浮かび上がることで別のものが見えてくる。このシリーズのような短いエッセイも、後年の視点からすると、そういった背後を探るよすがになるのかもしれない…とかちょっと思った。
読了日:11月23日 著者:


サンタさんのトナカイ (児童書)◾️サンタさんのトナカイ (児童書)感想
★★★☆
サンタさんのお手伝いはエルフがしている。主人公は初めてトナカイのお世話をまかされるけど、やる気が先行して空回り…クリスマスまでに8頭足並みそろえてソリを引くことができるのか、ということで、主人公のトナカイたちとの悪戦苦闘が見開きで描かれ、両サイドには、同時進行の(日付入り)プレゼントの準備作業が描かれ、大勢のエルフたちがおもちゃやお菓子を作って梱包するまでの様子も楽しい。これからの時期にオススメ。
読了日:11月23日 著者:ジャン ブレット


キッチハイク! 突撃! 世界の晩ごはん ~アンドレアは素手でパリージャを焼く編~ (集英社文庫)◾️キッチハイク! 突撃! 世界の晩ごはん ~アンドレアは素手でパリージャを焼く編~ (集英社文庫)感想
★★★
世界中で、ひとんちにご飯を食べさせてもらいに行く「キッチハイク」を実践した著者のセキララレポート。もちろん、いきなり飛び込みではこんなことは出来ないので、受け入れてくれるおうちは毎回ネットで募るか、それからのつながりで見つけて行ったらしいが、初対面の相手、文化、そして料理のレポートが楽しい。コロナの今読むと、また別の感想も浮かんでくるかも?
読了日:11月26日 著者:山本 雅也


ノービットの冒険―ゆきて帰りし物語 (ハヤカワ文庫SF)◾️ノービットの冒険―ゆきて帰りし物語 (ハヤカワ文庫SF)感想
★★★★
パット・マーフィーが変名で書いたSF版『ホビットの冒険』。ルイス・キャロル『スナーク狩り』をもうひとつのモチーフにして、物語の展開は『ホビット』に沿って、いろいろな要素をハードSF的宇宙に置き換えて、楽しさも損なわずに成立させている職人芸。訳者の浅倉先生お墨付きで『ホビット』を知らなくてもちゃんと楽しめる(知っていればさらに楽しめる)極上の児童文学SF。
読了日:11月29日 著者:パット マーフィー


レミーさんのひきだし◾️レミーさんのひきだし感想
★★★☆
老婦人レミーさんは、使い終わった入れ物やリボン、毛糸、端切れなどを引き出しに大事にとっておく。そんな細々した小物たちと……の、ある意味「第二の人生」を描いたささやかな物語。
読了日:11月30日 著者:斉藤 倫,うきまる

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