2017年9月に読んだ本2017年10月09日 07時53分34秒

 9月は実家との移動で始まり実家との移動で終わるというスケジュール面と、仕事がだいぶ立て込んできたりして、ちょっと少なめ。

■おーなり 由子『ことばのかたち』 講談社
読了(2017-09-02) ☆☆☆☆

 自分の読書歴の中では、まずはりぼんの(ちょっとふしぎな作品を描く)マンガ家として、その後は北村薫作品の装丁で再会したけど、絵本作品をほとんど読んでいなかったおーなり由子さんの絵本を試しに読んでみた。
 この本は、一人の女の子が「ことばに目に見える形があればいいのに」と、いろいろと夢想するシチュエーションを淡々と目に見える絵として提示していく。
 人が発する言葉には裏がある、表向きの言葉だけではわからない、時には、騙す/騙されることも、傷つける/傷つけられることもある。そんな言葉に隠されたもの、発した人の本心がわかりやすく目に見えたら、傷つくこともなくなるのに。女の子がそんなことを考えてしまうのは、まさにこれから「言葉」で心をやりとりすることが待っていたから…
 おーなり由子さんのやさしい視点が感じられる一冊。
 因みに、北村薫作品の装丁では『水に眠る』『月の砂漠をさばさばと』が好き。

■ミロコ マチコ『まっくらやみのまっくろ』 小学館
読了(2017-09-02) ☆☆☆

 初めて読むミロコマチコ。へたうま?的だけど、荒々しいタッチと目を射る色彩の変化がふしぎな不穏さを漂わせる。
 まっくらやみの中で、自分が何者か知らぬまま、身体の変化に、「自分はもしかして……だったのか?」と思うまっくろ。そんな予想をつぎつぎと裏切りつつ変化し続けたまっくろはついには…
 単独で読んでもいいけど、『けもののにおいがしてきたぞ』(このあと、図書館で読んだ)から続けて読むと、最後に明らかになるまっくろの正体についての味わいが増すように思う。

■ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福』 河出書房新社
読了(2017-09-05) ☆☆☆☆

 上巻でも紹介した通り、ホモ・サピエンスがどうやって地球に君臨するに到ったか、可能な限り特定の価値観、宗教観、政治観に左右されずにロジカルに描くノンフィクション。
 既存の「定説」「固定観念」的なものを次々とひっくり返していく価値観の相対化が本書の最大の魅力ではあるが、上巻から下巻に入るくらいになると、やや一本調子に感じてくる側面もある。
 最後にはシンギュラリティに行き着くあたりがSFっぽくもあるが、もしかすると現代のガーンズバック的にも読める作品だったりするのかもしれない。

■成田美名子『花よりも花の如く』 17巻白泉社 白泉社花とゆめCOMICS
読了(2017-09-10) ☆☆☆★

 静かな恋愛が落ち着いた時期に入ってくると、今度は一度「わかりあった」「うちとけた」フェイズから、「わかってもらえている」ことからの行き違いのフェイズに。
 本気で取り組む仕事と私生活をいかに両立させつつ、どちらもスパイラルアップしていく、というライフワークバランスについての物語になりつつあるのかも。

■ジーン・ウルフ『書架の探偵』 早川書房 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ
読了(2017-09-17) ☆☆☆★

 ジーン・ウルフ最新作は、生前の作家の人格、記憶を移植された複製体(リクローン)が、本と同列に(モノとして)図書館に所蔵されている、という未来世界で、ある女性に借り出されたミステリ作家の複製体が、その女性の周辺で起こる殺人事件の謎を巻き込まれるままに解決していくと言うハードボイルド風SFミステリ。
 この複製体(叢書ならぬ蔵者)の設定以外は、SFとしてもミステリとしてもちょっと懐かしい雰囲気で、伏線がきちんきちんと回収されてするっと読めてしまうんだけど、ええと、これ、ジーン・ウルフだよね!?
 すんなり読め過ぎてしまって逆に不安になる(笑)。気がついてないこと、どこかに何かあるんじゃないか!?

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