2016年9月に読んだ本2016年10月01日 02時50分57秒

 9月は冊数多し。とはいえ、100ページくらいの本が多いのはご愛嬌。本棚の北野勇作作品の棚卸し的な月。あと、西尾維新読むのは実は初めてだったりする。
(使ってなかったソーシャルライブラリーの日記書き出し機能を使ってみたらけっこうこの日記の作業が楽になった(笑)。ついでに転記してなかった評価点も今月から入れることにしてみた。☆五つで満点)

■北野 勇作『きつねのつき (河出文庫)』 河出書房新社
 読了(2016-09-03) ☆☆☆★

 出版時期的には大震災後でタイムリー感があった、とのことだが、なんだかわからないけど世界がいったん滅んでしまった後の市井?の生活感を描くというモチーフは北野勇作的には普遍的なテーマといえるだろう。
 本作は起こった「災害」の内容はなんとなくナウシカとかエヴァとか連想させるが、赤ん坊が子供になっていく過程を見守る父親、というあたりにはご本人の体験、心象もモチーフになっているのかもしれない。

■アルフレッド・エドガー・コッパード『天来の美酒/消えちゃった (光文社古典新訳文庫)』 光文社
 読了(2016-09-04) ☆☆☆★

 文庫で読めるコッパード。定型の枠には収まらないアイデア、展開でまさに「奇妙な味」としか呼びようがない。

■西尾 維新『掟上今日子の備忘録』 講談社
 読了(2016-09-10) ☆☆☆

 寝るごとに記憶がリセットされる忘却探偵のシリーズ第一作。短編それぞれに工夫がありつつ、ラストの謎解きにはちょっとうるっとくる仕掛けもあり、なかなか楽しめた。
(しかし、初めて読む西尾維新がこのシリーズでよいのか?)

■北野 勇作『北野勇作どうぶつ図鑑〈その1〉かめ (ハヤカワ文庫JA)』 早川書房
 読了(2016-09-11) ☆☆☆★
■北野 勇作『北野勇作どうぶつ図鑑〈その2〉とんぼ (ハヤカワ文庫JA)』 早川書房
 読了(2016-09-14) ☆☆☆★
■北野 勇作『北野勇作どうぶつ図鑑〈その3〉かえる (ハヤカワ文庫JA)』 早川書房
 読了(2016-09-17) ☆☆☆★
■北野 勇作『北野勇作どうぶつ図鑑〈その4〉ねこ (ハヤカワ文庫JA)』 早川書房
 読了(2016-09-18) ☆☆☆☆
■北野 勇作『北野勇作どうぶつ図鑑〈その5〉ざりがに (ハヤカワ文庫JA)』 早川書房
 読了(2016-09-18) ☆☆☆★
■北野 勇作『北野勇作どうぶつ図鑑〈その6〉いもり (ハヤカワ文庫JA)』 早川書房
 読了(2016-09-19) ☆☆☆★

 本棚を整理していて発掘したので一気読み。北野勇作の短編を巻ごとにテーマ(どうぶつ)を決めて全6巻で出版する。各巻の作品セレクト、装丁、付録折紙、カバー裏のジオラマまで、何という贅沢な企画だったことか。いや、楽しい楽しい。
 トピック的には、定番の「かめ」の巻は記念すべき『カメリ』デビューの巻でもある。「かえる」の巻はホラー風味(+演劇モチーフ)の短編を集めた1冊。これは著者がやっているという朗読で聴くとけっこう怖くてよいのではないかと思った。「ねこ」の巻は、昭和の映画、流行、マンガをモチーフにした切ない喪失感を描く短編3編。

■吾妻 ひでお『吾妻ひでお ベストワークス 悶々亭奇譚』 復刊ドットコム
 読了(2016-09-14) ☆☆☆★

 表題作の他、『パラレル狂室』や『みだれモコ』などを収録。読んでみると、画風的にも作風的にも統一感があって、このセレクトの手があったか、と思わせる好アンソロジー。わかりやすい例でいうと『やけくそ天使』の初期くらいの感じで、多少雑に描き飛ばしているくらいの画風が、リアルタイムで読んでいた頃には多少物足りなく感じたこともあったのだが、今読むとちょうど作風にもマッチしていたんだな、と思える。アナーキーなキャラとアナーキーなギャグの連発が今読むとかえって新鮮。

■西尾 維新『掟上今日子の推薦文』 講談社
 読了(2016-09-17) ☆☆★

 忘却探偵という設定上、その行動を記録する語り手が必要な訳だが、1冊目とは別の人物だったのが本作最大のびっくりだったかも。若手画家のパトロンの老人への殺人未遂をめぐる謎解きはミステリ的にはちょっと物足りない感じ。

■西尾 維新『掟上今日子の挑戦状』 講談社
 読了(2016-09-21) ☆☆☆★

 今回は「アリバイ」「密室」「ダイイングメッセージ」という本格ネタをちょっとメタ視点で眺めつつ、ちゃんとそれぞれのアイデアでの謎解きを入れこみ、忘却探偵の特性も生かした小味の効いた短編集。たまたま今日子さんとタッグを組んでしまった警察サイドからの視点、という点も一貫しており、テーマ、構成とも統一感のある短編集。ここまでのシリーズ中いちばん楽しめたかも。

■岸本佐知子編訳『コドモノセカイ』 河出書房新社
 読了(2016-09-25) ☆☆☆☆

 子供の世界を「無垢で無知ゆえに、残酷で理不尽で支離滅裂なもの」ととらえたコンセプトのアンソロジー、奇妙な味わいで微妙に居心地の悪い短編で一貫するの中、ラストの「七人の司書の館」でほのかな未来と希望をほのめかして〆るセレクト&構成がお見事技あり。

■西尾 維新『掟上今日子の遺言書』 講談社
 読了(2016-09-26) ☆☆☆

 1冊目の語り手厄介くん再登場。女子中学生の自殺未遂をめぐる謎解きは、本当の正解はわからない感じの描かれ方なので、ミステリ的にはちょっともやもや感が残るかなあ。このあたりは今の若者の皮膚感覚にはむしろマッチしていたりするのだろうか。
 まあ、今巻の最大のポイントは表紙イラストにもなった今日子さんのセーラー服かと(笑)。

■星 一『三十年後 (ホシヅル文庫)』 新潮社
 読了(2016-09-28) ☆☆☆

 かの有名な星一の未来予測小説。オリジナルのままだとおそらく冗長に感じられるであろうところは星新一ががんがんダイジェストしまくっているのでさくさく読める。
 まずは、ガーンズバックばりの楽天的未来予測SFとして、その発想力の豊かさが予想以上に楽しめる。楽天的すぎて、今の視点ではディストピア的に感じる要素もあるが(レム『泰平ヨンの未来学会議』あたりも連想した)、そのあたりは、むしろ今の視点で読んだ方が重層的に楽しめるかも。それにしても人を食ったラストだ(笑)。