2016年3月に読んだ本2016年04月07日 07時39分33秒

 なんかマンガとSFの新訳版、新編集版のラッシュでうれしい悲鳴。ヴァーリィもコードウェイナー・スミスも買ってはいるけど、読むのが追いつかない感じ。あと、3月はフォローしているマンガの新刊も多くてこちらもうれしい悲鳴。

■成田美名子『花よりも花の如く』13巻 白泉社花とゆめコミックス
 「おつきあい」が始まるまでの緊張感がなくなったためか、ちょっとした行き違いで気まずくなったりする二人を淡々と描く。なんというか、さほどドラマチックでもない「普通の恋愛」を丹念に追跡するという点ではなかなかこういうマンガはないように思う。

■ジーン・ウルフ『ウィザードⅡ』 国書刊行会
 月をまたいで読了。
 シリーズ全体として非常にリーダビリティは高く、怒涛の展開の連続するファンタジーとして読めつつも、説明つきそうでつかない謎の散りばめ方は流石のウルフ品質。
 とはいえ、そこを気にしなければ(?)、ちょっとダークなナルニア風ファンタジーとしても普通に楽しめるのではないか。さらっと軽く読む人から、徹底的に解読したい人まで、読者への門戸は意外と広く開かれている作りかもしれない。

■北村薫『野球の国のアリス』 講談社文庫
 こちらの世界ではもうすぐ野球が出来なくなってしまうヒロインが、鏡の向こうの世界で思う存分野球をする、というプロットもストーリーもシンプルながら、じんわりと心があたたかくなる物語。
 少年野球にうちこむ女子をめぐる物語、という点では北村薫版『天使とダイヤモンド』、というといささか語弊はあるかもしれないけど、野球がしたくてもできない/できなくなってしまう女の子の物語、という点では好対照のように思う。

■吾妻ひでお『ワンダー・AZUMA HIDEO・ランド』 復刊ドットコム
 発売当時買ったまま積んでしまっていたので、続刊が出た機会にまとめ読み。
 単なるコミックス未収録作品集ではなく、分類と収録順に明確な「編集」意図が反映されていて、『編者である「漫画の手帖」の佐野氏の手による「吾妻ひでお」という作品』として成立していると思う。未収録作そのものの価値も含め、1冊で二度美味しいアンソロジー。
 あと、これを買った時、復刊ドットコムの抽選に当たってしまい、手元にあるのは直筆サイン本!

■吾妻ひでお『ワンダー・AZUMA HIDEO・ランド2』 復刊ドットコム
 流石に前巻ほどのコンセプトアンソロジーとしての完成度はないものの、今まで読んだことのなかった作品が多く、なかなかに興味深い。初期の作品でも、時折ペンタッチが冴えているものがあるのが才能の片鱗か。

■『長門有希ちゃんの消失アニメーションワークス』上巻・下巻 メディアバル
 ひっそり制作されていた感じのアニメ『長門有希ちゃんの消失』、伊藤郁子さんのジャケットのためだけに敢えてDVD版を購入したが、もどかしいラブコメとしてはそこそこの仕上がりだったかと思う。
 この原画集で見る限り、残念ながら質の高い原画がアニメ本編に生かし切れていなかった感じがちょっとする。逆に言うと、この原画集はまさに眼福もの。細かい表情や動きにかかわる原画マンの気配りがよく伝わってくる。

■七月鏡一・早瀬マサト『幻魔大戦Rebirth』3巻 小学館少年サンデーコミックススペシャル
 WEBで連載中の『幻魔大戦』正統続編の3巻。オリジナル幻魔大戦のラストで一緒に月を見ていた仲間をきちんと拾い、平井和正の小説版のキャラクターにも目配りを。特に本巻はスーパー石森大戦っぽい展開で盛り上がるが、個人的にはお時とベアトリスの簪に目頭が熱くなった。

■マイクル・コーニイ『ブロントメク!』 河出文庫
 サンリオ版を読んだのは大学1年の冬で、面白かった、という以上の記憶が残っていなかったので新鮮に楽しめた。
 物語そのものの面白さ、大森センセの新訳文の軽妙洒脱さも楽しめたが、個人的には河出版『ハローサマー〜』二部作を読んで思いついたコーニイ=手塚治虫説がさらに補強された感じ。脳内再生の絵柄は『火の鳥』未来編〜復活編あたりの画風で。

■那州雪絵『魔法使いの娘ニ非ズ』6巻 新書館ウィングスコミックス
 今回は今後の展開に向けての設定編?はほぼなく、和製ホラーアンソロジーの趣。そんな中、主人公カップルそれぞれの幼年期や若年期のエピソードもあり。

■梶尾真治『クロノス・ジョウンターの伝説』 徳間文庫
 もはやキャラメルボックスの定番シリーズとなった感のある『クロノス』シリーズ、以前『クロノス』再演版の際に出版された合本版のキャラメルボックスオリジナルカバー版(劇で使われたクロノス・ジョウンターの写真入り)を、今回、『きみがいた時間 ぼくのいく時間』+新作を観劇するついでに往復の車中で一気読み。
 合本版はこれまでに書かれた全作品を収録してあるのだが、この合本版にする過程で各短編の関連性を細かく加筆修正されており、ちょっとしたタペストリ的な味わいも付加されている。
 あと、今回の劇がクロノス・スパイラルを題材にした作品だったので、それに合わせて今度はクロノス・スパイラルの写真入りのオリジナルカバー版が出ていたので、内容は同じだけど買っちゃいました(笑)。