2015年9月に読んだ本2015年10月03日 07時25分48秒

 わりあい、新しく買う本が少なめで、積ん読の消化が多少進んだかも。萩尾望都関連の本をまとめ読みして、個人的萩尾望都祭りに。あと、河出比率高いな(笑)。

■クリストファー・プリースト『双生児』上・下 ハヤカワ文庫FT
 一つ前のエントリにまとめた通り。傑作。

■萩尾望都『銀の船と青い海』 河出文庫
 さまざまな雑誌に発表された萩尾望都のイラストストーリー、詩等を集めた作品集の文庫版。萩尾望都の言語感覚と詩力を堪能できる作品集。文庫刊行記念の原画展で見た原画の美しさも想い出しながら楽しく読めた。

■アンナ・カヴァン『われはラザロ』 文遊社
 この短編集と、『氷』のプリーストの序文などを読んでいくと、カヴァンへのイメージがかなり変わってくる。サンリオSF文庫での紹介当時から最近まで、どうしても自殺未遂を繰り返した「ヘロイン常用者」という切り口が一人歩きしていたと思われるが、一方で、60代までかなりアクティブな私生活もおくっていたという側面もあり、ヘロイン経験自体は作品にも影響しているのは間違いないし、好んで選んだ「幻覚」や「破滅」のような題材が上記のイメージを助長した面もあったのだろうが、実は「作家」としては非常にクレバーな人だったんだろうな、というイメージに。
 本作品集では全体に不条理小説寄りの作品が多く、主観視点より客観視点に重きが置かれている感じ(『アサイラム・ピース』では短編ごとのその視点の切り替わりが効果的だったが)。あと、ロンドン空襲被害等の戦争の影が、色濃い。
 あと、短編「弟」はちょっと萩尾望都「半神」を連想させた。

■山本幸久『幸福トラベラー』 ポプラ文庫
 読書好きの中学生男子が、ひょんなことから修学旅行で上野に来ていた女子中学生と行動をともにするうちに、お互いの読んでいる本の話で意気投合するが、お互いの連絡先も知らない二人が過ごせる時間は彼女の自由行動時間だけ…。
 ポプラ社のPR誌アスタに載っていた西田藍さんのレビュウにキュンときて衝動買い、一気読みしてキュンキュンした。ポイントはダールと半村良!? しかし、こんなもの中学時代の自分に読ませたら憤死しそうだ(笑)。
 しかし、こういうあらすじの話を、自分のような元読書男子が褒めちぎるだけだと自己満足っぽい感じになってしまうんだけど、元読書女子で書評系アイドルとして著名な西田藍さんがヒロイン側に自分を重ねた視点でレビュウしてくれていると、安心して手を出せるのでありがたい(笑)。(まあ、そのレビュウ読んでない人はどうするんだ、という突っ込みはあるだろうけど(笑))
 ということで、男女問わず、中学時代本ばかり読んでた向き(特にSFファン)は騙されたと思ってこの『幸福トラベラー』を読むといいと思う。文庫限定の後日談には『泰平ヨンの未来学会議』の小ネタも仕込んであるし、これは一種の読書会小説で、趣味の狭い読書家が仲間をみつける、という点では和製『図書室の魔法』としても楽しめると思う。

■萩尾望都『想い出を切りぬくとき』 河出文庫
 こちらはやはり河出文庫の萩尾望都エッセイ集。雑誌グレープフルーツは豪華雑誌で発行当時買ったことがなかったので、マンガはともかくエッセイまでは読んでいなかったけど、こんな面白いエッセイがたくさん載っていたのか。

■萩尾望都対談集『愛するあなた 恋するわたし』 河出書房新社
 萩尾望都対談集の第4弾。吾妻ひでおのような同世代から若手までの主にマンガ家対談。先のエッセイ集とあわせると少女マンガの黎明期から今にいたるパースペクティブを把握できる感じで○。

■ホルヘ・ルイス・ボルヘス『幻獣辞典』 河出文庫
 蒐集した情報を咀嚼、消化した上で、ミックス、凝縮してアウトプットしている感じがいい。なるほどこれは著者一流の百科事典ごっこだ。

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